ラスト数百mで決した
金メダルの行方
パリオリンピック・トライアスロン競技、男子のレースは7月31日(水)、女子のレース後、現地時間午前10時45分にスタートした。
スイムコース(セーヌ川)水質悪化の影響で開催延期という五輪トライアスロン史上初のアクシデントに見舞われた大一番は、最後の最後に勝敗が決する大逆転劇に。
東京五輪の銀メダリストで、今回の優勝候補最右翼としてその名が挙がっていたアレックス・イー(イギリス)が、強烈なスパートで「逆転の金メダル」を勝ち取った。
30人超の大集団から
29分台のラン勝負へ
女子のレースとは打って変わって青空の下でのスタートとなった男子のレース、スイム序盤、優勝候補のひとりマシュー・ハウザー(オーストラリア)、ヘンリ・スクーマン(南アフリカ)らが先行する中、スイムをトップで上がったのはイタリアのアレッシオ・クロチアーニ。
日本期待のニナー賢治は26秒差16位と好位置でスイムアップ。優勝候補の一角で東京五輪の銀・銅メダリスト、アレックス・イー(イギリス)、ヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)まで約1分の中に有力選手がひしめき合う展開。小田倉真はやや出遅れてトップから1分43秒差でバイクへ。
バイク序盤に抜け出したのは6人。開催国フランスのドリアン・コナン、ピエール・ル コー、ハウザー、スクーマン、アルベルト・ゴンサレス ガルシア(スペイン)。
しかしニナー、イーらを含むチェイスパックがすぐにこれを吸収し、19人の第1集団を形成。さらにはワイルド、クリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)らの後続も合流し30人を超える大集団に。
大集団から、アレックス・イー、ワイルドら圧倒的な走力を誇る優勝候補たちとのラン勝負を嫌う選手らが細かく仕掛けを見せるが、そうしたアタックは早々につぶされる。
終盤、東京五輪の金メダリストで、アイアンマン世界王者でもあるブルンメンフェルトが先頭付近で集団のペースアップを図る中、メダルの行方は、ついにラン勝負へ。
ワイルド独走も
ラストに逆転劇が
ランに入り、抜け出したのは大本命のイー。
序盤からフルスロットルで一気に後方を引き離しにかかる。
唯一これを追うのは宿敵ワイルド。ラン勝負では抜きん出た実力をもつふたりが、サイドバイサイドの金メダル闘争に入る。
ニナーは、圧倒的に抜け出すふたりの後方さらに、30秒差前後からブルンメンフェルトらとともに先頭を追う展開。
イーとともにペースを上げていくかと思われたワイルドは、早々にイーを置き去りにして単独トップに立つと、その後も十数秒差のセーフティーリードを維持。
パリの金メダルはそのままワイルドが危なげなく獲っていくかに見えたが、波乱は最後の最後に待っていた。
ラストのブルーカーペット手前、イーが猛烈なスパートで追い上げ、先行していたワイルドをまたたく間にパス。まさかの逆転劇に沸く、大歓声の中、悲願の金メダルを奪取することに成功した。
ワイルドは、東京の銅に続きふたつめのメダルとなる銀メダルを獲得。
ラン最終盤、共闘するようにペースを高め合ったフランス勢は3位にレオ・ベルジェール(銅メダル)、4位にル コーが入り、自国開催のオリンピック・トライアスロンで意地を見せた。
期待の日本勢では、ニナーがトップと1分29秒差の15位。
小田倉は同6分42秒差の41位で、2度目のオリンピックを終えている。
【Result】
▼金メダル
アレックス・イー(イギリス) 1:43:33
▼銀メダル
ヘイデン・ワイルド(ニュージーランド) 1:43:39
▼銅メダル
レオ・ベルジェール(フランス) 1:43:43
15位 ニナー賢治 1:45:02
41位 小田倉 真 1:50:15