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【パリ2024】レースをより楽しむためのオリンピック観戦ガイド

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ルミナ編集部

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パリ五輪プレビュー

©World Triathlon

より楽しむための
パリオリンピックレースプレビュー

いよいよ開幕するパリ2024オリンピック競技大会。トライアスロン競技は、7月30日、31日に個人、8月5日にミックスリレーが実施される。日本で行われた選考レースの1戦、5月のWTCS横浜後に自身オリンピアンでJTUコメンテーターの細田雄一さんにパリの見どころを訊いた。

『TriathlonLumina#93』(2024年6月発売)に掲載した内容を一部編集して転載。記事内の情報は5月17日時点のもの。

解説=細田雄一(日本トライアスロン連合公式コメンテーター)
写真=小野口健太

※文中の敬称略

【日本代表選手】
女子:高橋侑子(相互物産/東京)
男子;ニナー賢治(NTT東日本・NTT西日本/栃木)、小田倉真(三井住友海上/東京)
>>関連記事【日本代表候補選手記者会見】
▼会見動画はコチラ

本命はポッター&カサンドル
ダークホースは前回金のダフィ

国別の勢力図で言うと、イギリスとフランスの2カ国が強いですね。あとはアメリカ勢も強い選手が多い。この辺の国は選手層が厚いため、まず国の代表になること自体が非常に厳しいので自然と国内のレベルも高くなります。優勝候補はベス・ポッター(イギリス)。

2023 World Triathlon Sprint & Relay Championships Hamburg

ベス・ポッター(イギリス)。得意のラン以外の競技力も上がっている優勝候補本命 ©World Triathlon

リオ大会では、1万m でオリンピック代表になった選手で、その後トライアスロンに移行しました。スイム、バイクはできない状態から、この2年間で力をつけてきました。ランニング勝負になれば、間違いなく勝てる選手です。

ただ、これだけ強いとリスクもあって、他の選手はラン勝負に持ち込みたくないので、手を組みやすいんです。そう考えると、同じイギリスとフランス勢のスイム・バイクが強い選手たちがポッターを勝たせないために、スイム・バイクで先行する展開を作ろうとするでしょう。

2023 World Triathlon Sprint & Relay Championships Hamburg

自国開催で優勝をねらうカサンドル・ボーグラン(フランス)©World Triathlon

個人で言えば、フランスのカサンドル・ボーグラン、横浜で優勝したレオニー・ペリオーです。彼女らは、スイムもバイクも強いんです。

5月の横浜大会で優勝した レオニー・ペリオー(フランス

5月の横浜大会で優勝した レオニー・ペリオー(フランス)

ダークホースは、東京オリンピックの金メダリスト、フローラ・ダフィ(バミューダ)です。横浜は2年ぶりのレースでしたが強かった。バイクでしっかり存在感を示し、7位に入りました。

ただ、やはり2年間戦っていなかったのでそのブランクはあるでしょう。あと2カ月半(取材時点)で仕上げてくる可能性は十分にあります。

WTCS Bermuda 2022 by Wagner Araujo (@wags.photo)

前回大会(TOKYO2020)優勝のフローラ・ダフィ(バミューダ)©Wagner Araujo/World Triathlon

パリのバイクコースは、平坦基調ですが、石畳が含まれるレイアウトです。一見、難しそうに感じますがスピードコースで、バイクの強い選手ほど石畳で仕掛けてくると思います。ただ、パンクのリスクはあるのでコース取りはシビアになってくるでしょう。ランも同様に高速コースと言えます。

テイラー・ニブ

自転車ロードTTでもパリ代表のテイラー・ニブ(アメリカ)

バイクが強いと言えば、テイラー・ニブ(アメリカ)が怖い存在ですね。ご存じの方もいると思いますが、ロードバイクのレースで優勝するほどです(編集部注:自転車ロードTTでもパリ代表を決めた)。ただ、テクニック的にまだ未熟な部分もあって、コーナリングなどは改善の余地があります。

彼女が優勝するためには、ラン勝負にもちこまないこと。バイクでの脚力を生かすためには、スイムで5〜6番目までで上がり、4〜5人でバイクを逃げるプランを立てていると思います。

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

とはいえ、ポッターはスイムの実力も上がってきていて、昨年のグランドファイナルでもトップ集団で上がってきているんです。さらに、バイクも強くなってきて、集団でも先頭でレースしています。これには、各国コーチ陣も対策を考えているほどの力をつけてきています。

彼女は、高橋侑子と同じチームに所属していますが、個別のメニューを作って、スイム、バイクを強化しているようです。

王道で考えれば、2023年シーズンでも優勝争いをしていた、ランが強いポッターと、スイム・バイクが強いカサンドルが本命でしょう。

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

イー&ワイルドのラン無双
阻みたいフランス、アメリカ勢

男子は国として強いのはイギリス、アメリカ、フランスです。選手で言えば、イギリスのアレックス・イーは強いですね。5000m13分24秒という、日本陸上記録くらいの速さで走ります。2023年シーズンはそのランを生かして、勝ちまくっていました。

TOKYO2020個人・リレーメダリストで絶好調のアレックス・イー(イギリス)©World Triathlon

TOKYO2020個人・リレーメダリストで絶好調のアレックス・イー(イギリス)©World Triathlon

イーの他、ランを得意とするヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)は陸上の世界大会に出場して、13分23秒で7位に入りました。

優勝候補のひとり、ヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)©World Triathlon

優勝候補のひとり、ヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)©World Triathlon

また、横浜で優勝したモーガン・ピアソン(アメリカ)はレース(10㎞)で29分11秒という久々に29分前半の記録で走っていますし、1月の全米陸上(クロカン)で4位に入っています。

5月の横浜で優勝したモーガン・ピアソン(アメリカ)

5月の横浜で優勝したモーガン・ピアソン(アメリカ)

もともと大学チャンピオンで、陸上界からも声がかかっている選手ですが、陸上よりもトライアスロンのほうがメダルを狙えるため、こちらで勝負しているようです。

自国開催の強みを生かしてスイムから狙っていく©World Triathlon

自国開催の強みを生かしてスイムから狙っていくドリアン・コナン(フランス)©World Triathlon

こういったランで勝負を決める選手に対抗するのが、ドリアン・コナン、レオ・ベルジュール(ともにフランス)、バスコ・ビザラ(ポルトガル)、マシュー・ハウザー(オーストラリア)らです。

ドリアンとともに自国でのレースで優勝を狙うレオ・ベルジュール©World Triathlon

ドリアンとともに自国でのレースで優勝を狙うレオ・ベルジュール©World Triathlon

彼らはスイムから先行するレース展開にもっていきたいはずです。スイム会場のセーヌ川は非常に流れが強いコース。昨年のプレ大会でもスタート場所によって、流れが全く違っていました。

スイムから先行したいマシュー・ハウザー(オーストラリア)

スイムから先行したいマシュー・ハウザー(オーストラリア)

若手有望株で言えば、横浜では最終周に起きた落車に巻き込まれてしまいましたが、ミゲル・イダルゴ(ブラジル)。ランラップ2位でしたし、スイム・バイクも回せる実力があります。

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

トレーニングが実を結んだ
ニナー賢治の表彰台は!?

日本人選手の注目はやはりニナー賢治です。非常に調子がいいですよね。7位に入った横浜では、常に前で勝負していました。レベルアップしていると感じましたね。ランの最終周までにもう少し体力を温存できれば表彰台もあり得たと思います。彼は、九電工陸上部の選手と一緒に練習していて、10㎞28分で走るトレーニングをしています。

日本のエースとなったニナー賢治の表彰台に期待 

日本のエースとなったニナー賢治の表彰台に期待

タイムだけで考えれば、前出のワイルドと同じくらいの能力があるということです。また、彼の良いところは、スイムをしっかり上位で上がれること。スイム・バイクで第1集団に入って5〜6人でラン勝負となり、練習通りの実力が出せれば、表彰台を狙えるレベルまできていると言っていいでしょう。

イーら、ランが強い3人と勝負になったら厳しいですが、レース展開によっては手に汗握るレースを見せてくれると思います。

2大会連続で五輪代表を決めた小田倉真

2大会連続で五輪代表を決めた小田倉真

小田倉真は、横浜のレースでレースナンバー1~3の選手と同じ位置でレースしていました。落車のトラブルはありましたが、とても良い位置にいたましたし、実力はあります。

女子は、ヨーロッパのチームを拠点にしている高橋侑子が2大会連続で出場するので、体調を整えてベストパフォーマンスを出してほしいですね。

海外を拠点にしてる高橋侑子。多くのチームメイトもパリに出場する 

海外を拠点にしてる高橋侑子。多くのチームメイトもパリに出場する

オリンピックの場合、通常のシリーズ戦以上に、選手たちはなんとしても表彰台、金メダルを狙ってきます。メダルを必死にとってくるので、レースは緊張感があり、見るほうも非常に臨場感をもって楽しめると思います。

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

2023年パリオリンピックテストイベント ©World Triathlon

◎第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)

競技日程
2024年7月30日(火)
トライアスロン競技・個人男子スタート08:00(日本時間15:00)
>>男子スタートリスト
2024年7月31日(水)
トライアスロン競技・個人女子スタート08:00(日本時間15:00)
競技会場:フランス/パリ(アレクサンドル3世橋)
>>女子スタートリスト

▼国内ライブ配信スケジュール/観戦ガイド
《TVerライブ配信》

2024年7月30日(火)トライアスロン競技・個人男子
日本時間15:00~17:05

>>https://x.gd/BEWOk

2024年7月31日(水)トライアスロン競技・個人女子
日本時間15:00~17:05

>>https://x.gd/oFNzx

《オリンピックチャンネル パリ2024トライアスロン観戦ガイド!》
https://olympics.com/ja/news/triathlon-guide-paris-2024

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