INDOOR TRAINING #04
「パフォーマンスを再び上げる」より、大切なのは「保つ」こと
アドバイス/安藤隼人(スマートコーチング代表)
取材/田中弾 写真/中島健一、小野口健太
人間の成長のピークは20代。以降は、加齢とともに成長ホルモンの分泌が減少し、身体の代謝が落ちていくと言われている。しかし、トライアスリートのなかでも「強豪エイジグルーパー」と呼ばれる人たちは40代、50代を超えてもエネルギッシュな人が多い。
その理由は、年齢によるパフォーマンスの低下を、継続的なトレーニングで補っているからだ。いつどの年齢からでも筋力や心肺能力は向上させることができる。
最も敬遠したいのは何もしないでサボることだ。身体を動かしていないと、脳が「生活するだけの能力があれば十分」と考えるので、筋力や心肺機能が自然と下がっていくという。
個人差はあるものの、筋肉は1カ月程度で落ちていき、部位は足腰から弱る傾向がある。これはスイム、バイク、ランの3種目すべてに関係するのでイタい……。心肺機能も、血液を吐出する心臓のポンプの役割は筋肉が担っているので同じように落ちる。
せっかくトレーニングで獲得した能力をキープするには、日ごろから運動習慣をつけることが大切。年間を通じて休養日は設けつつも、「休養続き」は避けたい。一度落ちたパフォーマンスを再び上げるには、「まだ振り出しに戻ってしまった・・・」という徒労感もあり、結構なモチベーションがいる。
「家ラン」なら手軽! 今ドキのトレッドミルはサイズもコンパクト
トレーニングになると多い話題が、「シーズン中は出場レースに向かって練習します。けれども、オフシーズンは目標がなくサボり気味……」というもの。特に秋の終わりから春先は、気温がグッと冷え込み身体を動かすのがおっくうになってくる。年末年始は忘年会&新年会シーズンで何かとあわただしい。
確かに近々に目標レースはないかもしれないが、人それぞれ来季のレースで狙いたい、スイム、バイク、ランの理想タイムはあるだろう。オフシーズンのうちに、それを達成できるレベルまでレベルアップするのが「目標」と考え方をシフトするべきだ。
そこで、オフシーズンにヤル気が起きにくい人は、練習環境の向上を考えたい。そのひとつがトレッドミルを使った「家ラン」だ。自分が生活している空間にトレーニング機器を持ち込むのである。新しい機材は間違いなくトレーニングのモチベーションを高めてくれるし、毎日、目の前にあれば「練習しなきゃ!」と発破がかかる。
現在のトレッドミルはよくできていて、例えば、テクノジムの「MYRUN」には、あなたの目標に向けて練習プログラムを組んでくれる専用のアプリがある。トレーニング頻度は自身で設定できるので、無理のない範囲で続けられる。
トレッドミルの大きさもコンパクトだ。走行スペースは広く取りつつ、ボディは省スペース化が図られている。
イタリアンブランドならではのデザインもお洒落で、インテリアとしてもイイ感じ。トレッドミルは大きくて、家に置くと邪魔になる――なんていうのはひと昔前のハナシ。今のホームユース向けのマシンは、華麗な進化を遂げているのだ。
【商品概要】
MYRUN
価格:500,000円(税抜) ※運搬設置費込(沖縄、離島を除く)
カラー:グレー、ブラック
本体サイズ:長さ1760mm×幅785mm×高さ1260mm
走行面:長さ1430mm×幅500mm
速度:0.8~20km/h
傾斜:0~12%
電源:100V/1500W
本体重量:92kg
耐荷重:140kg
組み立て所要時間:約5分
購入はこちら
問・テクノジム ジャパン TEL0120-576-876
http://www.technogym.co.jp/
上りに強くなり、平地でも前に進む。安藤さん直伝の「傾斜変化トレーニング」
家ランでできるトレーニングは大きく別けて3つある。どれもトレッドミルが得意とするものだ。
おススメ家RUNメニュー①
■一定走トレーニング
一定走トレーニングとは任意のペースを保って走り続けること。身体に負荷を一定時間与える有酸素運動によって筋力と心肺機能を鍛える。主に持続力の強化といえる。一般的にランは、負荷を一定にしながらペースの上げ下げを過度にしないことが好記録につながる(上げるのは最後の追い込みぐらい)。
練習を積むと、「いまキロ何分ペースなのか」、という時間感覚も磨ける。
また、一定走にはLSD(ロング・スロー・ディスタンス)もある。低い強度(最大心拍数の60~70%)の有酸素運動を長時間(60分以上)続けるメニューで、毛細血管の発達を促し、酸素供給能力を高める効果がある。
トレッドミルは設定速度に応じて走行ベルトが自動回転してくれるので、こうした一定走のような練習が非常に行いやすい。
おススメ家RUNメニュー②
■インターバルトレーニング
インターバルトレーニングとは、「速く走る」と「ゆっくり走る」を繰り返し行うこと(例:速く走る3分+ゆっくり走る1分を、5~10セット)。身体に強い刺激を入れ、筋力と心肺機能に大きな負荷をかけるとスピード力の強化につながる。
時間や本数はレベルに応じて変わるが、心肺機能を目安に考えると最大心拍数の90%以上まで上げるなら運動時間は3~5分程度。さらに追い込むなら時間はもっと短くなる。そして、多少の無理はしても、無理はしすぎない範囲で本数をこなす。「ゆっくり走る」のは呼吸を整えるのが目的。身体をリカバリーさせて再び「速く走る」練習に臨む。
インターバルトレーニングは、トレーニングプログラム付きのトレッドミルならほぼすべて対応している。強度、時間、本数の設定変更もカスタマイズできる。
おススメ家RUNメニュー③
■傾斜変化トレーニング
傾斜変化トレーニングとは、トレッドミルの走行面が傾斜する機能(登坂機能)を利用したトレーニングのこと。角度が変わることで疑似的に坂道の「上り」を作り出せる。たいていの人はトレッドミルを一定走かインターバルに使うので、あまり聞きなれないかもしれない。
傾斜変化トレーニングを教えていただいた、テクノジムのアンバサダー安藤隼人さんはこう話す。
「平地はスムーズに走れるランナーでも、『上りになると急に動きがチグハグになってしまう・・・』『思うように走れない・・・』そう感じている方に推奨するメニューです。走行面の傾斜を8%→4%→2%→0%と約5分間隔で段階的に下げていって、上りの身体の動かし方を学びます」
トライアスロンのランコースの多くは平坦基調がメイン。とはいえ、平坦オンリーというケースは少ない。途中にはやはりアップダウンが出てくる。そうしたポイントで、走りのリズムを崩さないためにも、このメニューは試すべき。
「上りは路面に傾斜がつくため、前に出した脚と路面との距離が近くなります。平地と比べて脚が前に出にくいと感じるので、みなさん上半身を倒して前に進もうとします。ただ、これは効率の良いフォームではありません。上りのランでは、軽くアゴを引いて、脚を真下に蹴る&真下に下ろす――そうした意識をもってください。
また、上半身を倒すと腕を背中(背筋)で引きづらくなるので注意しましょう。そうするとスムーズな体重移動ができてきます」
最初に8%の高い傾斜で行うのは、あえて大きく平地と環境を変えることで、走り方の違いをわかりやすくするため。スピードは自身が走りやすいペースで。
「約5分間、走って感覚をつかんできたら傾斜を4%に下げます。上りのフォームができてきた方は、傾斜が4%あっても、あまり上りを走っている感じがないと思います。トレッドミルは周囲の景色が流れず、余計な視覚情報が入らないことも手伝って、ほぼ平地のような感覚になるはずです」
再び約5分走ったら傾斜を2%に下げ、ここでペースを少し上げる。走り方はあくまでも丁寧に。
「ピッチはほとんど変わらないまま、ストライドが伸びてきます。これは傾斜が緩くなると前に出した脚と路面の距離が離れていくからです。さらに傾斜を0%にすると、身体が勝手に前に出ていって、下りのようにも感じるでしょう。
『ストライドを伸ばそう』と考えるとフォームは崩れやすくなるものですが、自然とストライドが伸びる体験ができる傾斜変化トレーニングなら、上りに強くなり、かつ平地でも進みやすくなる、そのふたつを叶えることができます。
『トレッドミルで前へ進むフォームを手に入れる』の回でも触れましたが、「MYRUN」は、“上下動の幅”、“走行ピッチ”、“一歩の幅(ストライド)”を画面で数値として確認できるので、よりわかりやすいと思います」
上手な体重移動がわかると身体のムダな動きが減り、ラン中の心拍も下げることができる=持久系に強くなる。家ランには、ぜひ取り入れたい。
トレッドミルは、長い間付き合える良きトレーニングパートナー
家ランは単調で飽きやすいというイメージがある。しかし、それは使い方次第。前述した傾斜変化トレーニングは、“前に進むフォームを探す”ことをゲーム感覚で行える。
「練習が変化に乏しいと感じるなら、バランスボードを併用してみてください。例えば、インターバルで上り坂を5分+リカバリーのときにバランスボードに乗って自分が不整地の上にいるような神経を使う状態にします。そうするとクロストレーニング的な要素も入って飽きにくくなります」
野外ではアスファルトに微妙な起伏があったり、傾斜があったりする。これを簡易的に体験するという意味もある。この他にも、走る姿をモニターで移すのも飽きない工夫のひとつ。トレーニング前と比べて、徐々に走れるようになった自分の成長を見るのは楽しい。
ちなみに、トレッドミルの走行面は身体(脚)に衝撃をかけすぎない程良い硬さのため、トレーニングを続けている人、これから再びトレーニングを始める人にとっても、身体へ負担が少なく、故障のリスクも少ない。
今回トレッドミルのひとつとして紹介した「MYRUN」は、「MYRUN」本体に基本的な機能(速度、距離、時間、傾斜の計測)が備わり、トレーニングのアプリケーションはiPad(タブレット端末)からダウンロードする仕様となっている。そのため、購入後から5年、10年経っても、その時の最新のトレーニング情報が手に入る。
天候に左右されず、時間が空いたときに家ランが行えるマイトレッドミルは、最も身近で、最も安全&快適なトレーニングを行うことのできる最良のマシン。トライアスロンを生涯スポーツと考えるなら、この先ずっと良いトレーニングパートナーになる。
安藤隼人●Hayato Ando
低酸素ルームや、動作解析のできる設備を備え、オリンピアンから一般のアスリートまで、プライベートでじっくり指導を受けられるトレーニングスタジオ「スマートコーチング」(東京・四谷)の代表。オリンピックディスタンスや70.3の豊富なレース経験を活かし、2017年12月には自身初のIRONMANディスタンスへ挑戦した。