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皆生やIRONMANより佐渡Aのハードルが高い理由

投稿日:2018年3月12日 更新日:


謝孝浩

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佐渡島の形をトレースするように一周する佐渡Aのバイクコースは国内最長の190㎞。獲得標高だけでなく本当に辛いのは・・・ ©Akihiko Harimoto

旅烏の「徒然グサッ!」〈12〉

Lumina誌面でおなじみの「旅烏」こと作家でトライアスリートの謝 孝浩さんが、日々のトライアスロンライフで心にグサッときたことを書き綴るショートエッセイ

※前回の【旅烏の「徒然グサッ!」〈11〉トライアスリートの年末行事 「煩悩スイム」】はこちら

エントリーするかしないか、それが問題だ!

旅烏、迷っている。

現在、日本一長いロングレース佐渡国際トライアスロン大会のエントリーがはじまっている。LUMINAの人気ランキングでも2年連続1位を獲得した人気大会。

しかも今年は30周年の記念大会だし、応募人数は募集定員を大幅に上回ること間違いなし。抽選なのでエントリーしたからといって当たるとは限らないのだが、なぜか気軽にエントリーボタンを押せないのである。

出場するならばAタイプ(スイム4000m/バイク190km/ラン42.2km)という思いが強い。しかしながらバイクの苦手な旅烏にとって、数あるロングレースの中でも佐渡のバイクコースほど疲れが蓄積するコースはない。

今までAタイプは3回参加したことがあるのだが、最初の挑戦ではランの16㎞地点で制限時間に間に合わずリタイア。あとの2回は完走したものの、どちらも青息吐息で、2011年2度目のフィニッシュの時は、なんと制限時間ギリギリの最終走者。あちこちの関門をすり抜けるような綱渡りの完走だった。(★その時の顛末はこちら→http://www.triathlontrip.com/kochitama/2011/09/

あの時のフィニッシュの感動は今でも忘れられない。エントリーが気軽にできないのは、奇跡的とも感じた稀有な記憶を壊したくないという思いもあるのだが、それよりもやはりバイクパートでの辛さが、脳裏のどこかにトラウマのようにこびりついていて、前向きな気持ちを躊躇させているのかもしれない。

2011年大会、制限時間ギリギリのラストランナーとしてフィニッシュゲートをくぐった 瞬間の旅烏©Akihiko Harimoto

現在、日本で開催されている宮古島、皆生、バラモンキングの他、アイアンマンやチャレンジシリーズでは、北海道、五島長崎、ケアンズ、マヨルカ島、マレーシア、台湾、チャイナなど、ロングレースには数多く参戦してきたが、リタイアを経験したのは、佐渡とかつて北海道で開催されていたバイクコース200㎞超のオロロンラインの2回だけだ。

オロロンは、2回参戦しているのだが、はじめて挑戦してリタイアした時は、バイクの160㎞地点で制限時間に引っ掛かった。リベンジして完走した時も制限時間7分前のフィニッシュだった。

大会によって、バイクコースはさまざまだし、その時の気象条件も大きく影響するので、一概に比べられないのだが、皆生にしろ、バラモンキングにしろ、獲得標高差だけで換算すれば、佐渡Aタイプと同じくらいハードなコースはいくらでもある。

ならばなぜ突出して苦手意識が強いのだろう?

©Akihiko Harimoto

佐渡Aのハードルは距離、ランの関門、制限時間

冷静に分析してみると、練習を自分なりに積んでいても腰痛もちで、同じ姿勢が維持できないという旅烏にとって、坂が多いコースのハードさよりも距離の長さのほうがダメージが大きいのではないかと思う。オロロンだって、それほど坂は多くなかったような気がする。

それに加えて制限時間の問題。アイアンマンやチャレンジシリーズは、比較的制限時間がゆるいので、バイクでどんなにダメージがあっても、ランパートで少しずつでも前に進めば、フィニッシュラインにたどりつくのだ。

バイクコースの距離の長さと、ランの関門の多さと、その制限時間の厳しさ。その絶妙な取り合わせが、旅烏にとっての佐渡A完走へのハードルを上げているような気がする。7年前の関門をすり抜けるように通り過ぎたことを思い出すたびに、ゾクッとする。

7年前と比べて、バイクスキルがものすごく上達したとは思えない。さらにこの数年は加齢とともに体力を維持するのも容易ではない。考えれば考えるほど、迷うのである。

16日の締め切りまであと数日。果たしてエントリーするかどうか。もし佐渡の会場で旅烏を見かけたら、何かが背中を押したんだと思っていただきたい。

あ、当選するかどうかもわからないが・・・。

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■著者プロフィール
謝 孝浩 (しゃ・たかひろ)
1962年長野県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。 在学中には探検部に所属しパキスタン、スリランカ、 ネパールなどに遠征する。卒業後は秘境専門の旅行会社に就職し、添乗員としてアジア、アフリカ、南米など世界各地を巡る。2年で退職し、5カ月間ヒマラヤ 周辺を放浪。帰国後はPR誌、旅行雑誌、自然派雑誌などに寄稿するようになる。現在は、トライアスロン雑誌での大会実走ルポなどを通じて日本にも目を向けるようになり、各地を行脚している。著書にルポ『スピティの谷へ』(新潮社)、小説『藍の空、雪の島』(スイッチ・パブリッシング)など。http://www.t3.rim.or.jp/~sha/

こちらも2011年の佐渡A。ランも関門が多く、最後まで気が抜けない(画像は本人提供)

 

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