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旅烏の「徒然グサッ!」〈10〉
Lumina誌面でおなじみの「旅烏」こと作家でトライアスリートの謝 孝浩さんが、日々のトライアスロンライフで心にグサッときたことを書き綴るショートエッセイ
『ヌーが見た空』の舞台を訪ねる scene#07
自転車に優しい街
スペイン・サンセバスチャン
オリンピックまでに400km!?
自転車で東京都内を走っていると、最近、車道の路肩部分に水色の自転車レーンが増えているのをお気づきの方もいるだろう。
「東京都自転車走行空間整備推進計画」なるものが、東京都では5年前に策定され、それに基づいて自転車走行空間の整備を東京都は進めているようだ。
2020年のオリンピックまでに、自転車が走りやすい約400kmの推奨ルートを確保する予定だとか。
少しずつではあるが、良い方向に前進しているのかもしれないが、整備されている割合は少ないし、整備が終わっていても専用レーンに駐車してあることも多く、自転車が安全で乗りやすい環境とはまだまだほど遠い感じだ。もちろん自転車の乗る側のマナーもきちんとしなければならないが。
廃線した路線を利用
古くから自転車文化が育まれているヨーロッパでは、自転車に優しい街がたくさんある。スペインの北東部にあるバスク地方のサンセバスチャンという街もそのひとつ。白戸太朗さんが、思い出に残るトライアスロン体験をした街として、このWeb Magazineのコラムにも登場する街だ。
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日本のように、すでにある車道の路肩を無理やり自転車レーンにしているのではなく、2車線の自転車専用道路がサンセバスチャンの街の中に張り巡らされている。信号も自転車専用なのが驚いた。ちょうど朝の通勤時間に自転車に乗ったのだが、街の多くの人たちが、通勤にも自転車を利用しているようだった。
さらに驚いたのが、自転車道路に沿って、丘の上のほうに上っていくと、山肌を切り開いたトンネルにたどり着いた。あとでわかったのだが、今は廃線になった電車の路線のトンネル部分を利用して、自転車道路に改造したのだそうだ。1kmほどのトンネルを通って、丘を下りると、宿泊していた海沿いのホテルに着いた。ちょうど10kmほどのライドになった。
海から丘に向かって広がっているサンセバスティアンの街。人口18万人のこの街のスケールには、自転車が似合うと思った。「自転車に優しい街」とは、こういうことなのだと、実感した瞬間だった。
この体験も、また「ヌーが見た空」の小説に反映している。
※次回の【旅烏の「徒然グサッ!」〈11〉トライアスリートの年末行事 「煩悩スイム」】はこちら
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■著者プロフィール
謝 孝浩 (しゃ・たかひろ)
1962年長野県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。 在学中には探検部に所属しパキスタン、スリランカ、 ネパールなどに遠征する。卒業後は秘境専門の旅行会社に就職し、添乗員としてアジア、アフリカ、南米など世界各地を巡る。2年で退職し、5カ月間ヒマラヤ 周辺を放浪。帰国後はPR誌、旅行雑誌、自然派雑誌などに寄稿するようになる。現在は、トライアスロン雑誌での大会実走ルポなどを通じて日本にも目を向けるようになり、各地を行脚している。著書にルポ『スピティの谷へ』(新潮社)、小説『藍の空、雪の島』(スイッチ・パブリッシング)など。http://www.t3.rim.or.jp/~sha/