COLUMN KONA Challenge

【KONAチャレ】レースでもう一段強くなる秘訣は「変化を恐れないこと」

投稿日:2018年6月1日 更新日:


ルミナ編集部

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KONAへ行くために必要なこととは?

4月30日のキックオフミーティングで正式にスタートを切ったKONAチャレプロジェクト前回紹介したように、このミーティングのメインは各メンバーがそれぞれの目標や計画、課題などを披露し、プロジェクトリーダーの竹谷賢二さんがこれにアドバイスするトークセッションだったが、その導入部で竹谷さんはKONAに行くための基本的な心構えやノウハウについて語っていた。これはコナを目指すアスリートだけでなく、より強くなりたいすべてのアスリートにとっても参考になる内容だった。

そこで今回は、「KONAを目指すトライアスリート基礎講座」とも言えるこの導入部の内容を簡単に紹介する。

キーワードは「変化」

KONAチャレのメインテーマは「変化」。メンバーの中に今KONAに行ける人はいない。行くためには変わる必要がある。大切なのはただKONAに出ることではない。たとえば奇跡的な幸運に恵まれて、まぐれで出られたとしても、このプロジェクトの目標を達成したことにならない

我々が目指すのはKONAに出られるアスリートになること、狙ったクオリファイレースで必ず出場権がとれるアスリートになることである。今は行けなくても、3年かけてKONAに行くための行動を積み重ねていけば、誰でもKONAに行けるアスリートになれる。

「何かを犠牲にする」のではない

「KONAにいくためにはいろいろなことを犠牲にしなければならない」と言う人がいるが、KONAを本気で目指す人にとって「犠牲にする」という考え方はありえない。あなたが「KONAに行く」と決めたのは、誰かに強制されたからではなく、自分が行きたいと思い、自分で選んだことだ。だとしたらKONAに行くために必要な選択をし、行動することは、自分が望んですることであるはずだ。

それを「犠牲」と考えるとしたら、あなたは本当にKONAに行くことを望んでいない。本気で望んでいないことをやろうとすると、「犠牲」や「我慢」など、ネガティブな感覚が生じてすべてがつらくなる。そういう人はKONAを目指さないほうがいい。KONAを目指す人は、そのための行動がすべてポジティブで楽しいはずだ。

「計画を遂行する」のではない

3年でKONAに行くには、3年間の緻密な計画を立てて実行していく必要があると考える人がいるかもしれない。しかし、3年先まで見通した計画など不可能だ。状況は常に変わっていき、方針・計画もそれに応じて変わっていく。

必要なのは常に状況を正しく判断し、そのときそのときに必要なことをやっていくことだ。自分が立てた方針が正しいか、どう修正すべきかを常に考え、必要に応じて変えていくことだ。 KONAに行ける人になるということは、そういうことができるようになるということである。

「特別なアスリートになる」のではない

KONAに出ているアスリートは、決して特別なアスリートではない。やっていることは当たり前のことばかりだ。ただし、その当たり前のことを高いレベルでやるのは簡単ではない。抵抗の少ない姿勢で真っすぐ泳ぐ、効率良くペダリングする、身体に負担をかけずにランニングするなど、「当たり前のこと」をいろいろ”知って”はいるだろう。

“知っている”ことを当たり前に”出来る”ようになるには、姿勢、動作、バランス感覚など、膨大な要素の改善を継続しなければならない。誰でも知っている「当たり前」の積み重ねをどれだけ高いレベルまでできるかが、KONAに行けるかどうかを決める。

上達のしかた

3種目の膨大な要素を改善し、上達していくために必要なのは、仮説・実行・判断のサイクルを繰り返すことだ。ビジネスでも、PDC(Plan-Do-Check/計画・実行・検証)ということがよく言われるが、これと基本的に同じだと考えていい。

仮説・実行・判断のサイクルは、さまざまな課題について、トレーニングやレースを通して行われる。それは動作や感覚、意識のしかたなど、運動時の具体的で微妙なことだったりもする。

上達に必要なのはこうした具体的で微妙なこと改善を数限りなく、無限に繰り返していくことだ。そこでは実行と同時にリアルタイムの調整が行われる。たとえばフォーム改善のために、今日は「ここを意識してみよう」と、課題を決めてトレーニングする。

それは身体のバランスや各部位の動き、微妙なタイミングやデリケートな力のかけ方など色々なことを感じ、よりよい動きを試しながら行われる。実行とはただ事前に決めた通りに体を動かすことではなく、リアルタイムで感覚をつかみ、微調整しながら仮説を試すことだ。

これがスポーツの上達ではとても重要になる。この調整が実行しながら行われるのに対して、仮説・実行・判断の「判断」は、トレーニングが終わってから振り返り、分析・評価することだ。これを基に次のサイクルの仮説を立てる。この日々のトレーニングで行われる無数の仮説・実行/調整・判断のサイクルを繰り返すことで、上達は進んでいく

アイアンマンペースを考える

アイアンマンで良い結果を出すためには、ショートディスタンスとは違うアイアンマンでのベストなペースでレースをする必要がある。このペースはスイム・バイク・ラン単体ではなく、レース全体で考えなければならない。ペースにはHTALの4種類あると考えるとわかりやすい。

Hは単体のインターバルなどスピードトレーニングでギリギリまで追い込むときの速度だが、必ずしもAを高めることにはつながらない。ただし、Tを高めるためのトレーニングに使うことができる。また動きや姿勢のコントロール能力を高めるためにHペースでトレーニングすることもある。

TAより上のペースで、これを超えると疲労がたまって、アイアンマンのパフォーマンスが下がる。レースではこれを超えないように注意する。トレーニングでは、Aペースでのコントロール能力を高めるためにこのペースで行うこともある。

Aはレースで目指すべきペース。これに近いペースを維持することに集中する。ただし実際には時速数㎞プラスした速度を意識してちょうどアベレージのペースになる。Aはトレーニングでメインにすべきペースでもある。

Lはレースの後半の落ちた状態のペース。トレーニングでもレースでも、目指すペースで走るには自分のHTALそれぞれのペースを把握しておく必要がある。TAを把握することが重要。Tは心拍などを計測しながら行うタイムトライアルで把握することができる。

Aは長いトレーニングである程度わかるが、ロングディスタンス、アイアンマンのレース経験を積むことで、正確に把握できるようになる。レースではTの何%が自分のAなのかを把握し、そのペースをキープする。何%はその人の開発度合いによる。Tが同じでも、Aが70%の人より90%の人のほうがレースでは速い。このパーセンテージはスキルによっても上げることができる。

Aを上げるにはAをメインにトレーニングするだけでなく、Tを上げることも必要。私のように体力がかなり開発済みの人は体力的にTを上げるのは難しいが、皆さんはまだ時速5㎞くらい上げられる余地がある。

KONAへ行くには? 竹谷さんが真剣に、そして淡々とその心構えについて説いていく

パフォーマンスを定点観測して計画を修正

KONAチャレでは3カ月ごとに、提携4施設でスイム・バイク・ラン・フィジカルのパフォーマンスチェックを行う。ただし、このチェックで計測されるHペース、Tペースは、そのときのコンディションなどが影響するので、そのままアイアンマンのペースとすることはできない。あくまでも参考程度と考える。このチェックシートと、3カ月間のトレーニング実績やレースの結果などを基に、現状把握と実践の成果の検証を行い、計画を軌道修正していく。

構成要素を見極める

最初に言ったように、KONAに行くのは特別な人ではなく、当たり前のことを高いレベルでやれた人だ。この「当たり前のこと」は、心技体やエネルギー、筋力、可動域、スキル、ペース配分、補給など、基本的なものから、それぞれ細かく分ければ無数にある。たとえばスキルはフォームと動きに、フォームは体の部位ごとの傾きに等々、細分化していくことができる。

こうした要素をできるだけ幅広く、たくさん設定し、それぞれについてKONAに行くための最適解を考え続けることがあなたをよりKONAに近づけてくれる。この要素はその人の生活や発展段階によって異なる。プロの考え方は必ずしも参考にならない。自分なりに最適な構成、バランスを見つけることが必要だ。

KONAチャレでは3カ月ごとに集まってミーティングを行うので、そこで議論することができる。他のメンバーの考え方で参考になるところを参考にしつつ、自分なりの要素を組み立て直し、トライし、3か月後にまた集まって議論する。これを繰り返していくことで、自分ひとりで考えるよりもいい最適解の選択ができるようになっていく。

©Kenta Onoguchi

【メンバーとの質疑応答】

Q.ランのメイントレーニングとしてレースペースで走ると、回復に1〜2日かかるが、回復までのつなぎとして何をすべきか?

A.複合種目のメリットを生かす
トライアスロンの場合3種目あるので、つなぎの練習という考え方はしなくてもいいかもしれない。バイクやランで疲れていてもスイムはできる、バイクで疲れていてもランができるなど、組み合わせによって疲れをとりながらトレーニングしていくことも可能。フィジカルを鍛えるトレーニング、3種目のスキルを磨くことに特化した練習をするのも有効。
疲れた状態であえて行うトレーニングもある
また、疲れた状態で行うことにより効果が得られるトレーニングというのもある。本番でのペースの落ち込みをなくすトレーニングだ。アイアンマンのように長いレースでは、前半はAペースをキープするのが比較的楽で、Tを超える場面もあるが、だんだん疲れてきてAより上をキープするのがやっとになり、終盤に近づくにつれてAがキープできなくなっていく傾向がある。これを防ぐには、疲れた状態でAより上のペースで走る練習をするといい。
試しながら経験値を上げる

©Kenta Onoguchi

Q. どのくらい疲労していたらトレーニングを休むべきか、判断の基準は?

A.疲労感や回復力など、人によって違うし、そのときによっても違うので、普遍的な正解というのはない。何通りかやってみて、良い結果が出たほうを選ぶべき。何についても言えるが、大切なのは自分で試し、経験値を上げていくこと。試した回数が多いほど判断の確率は上がる。私自身も8割くらいはやり方が確立されているが、あとの2割はやり方を変えながら試している。答えは常に自分の中にあり、それを探す必要がある。

Q. 補給食の選び方は?

A.いろいろな考え方がある。エネルギー源としての糖質の摂り方でも、ジェルなど吸収が速く、胃にもたれないものを好む人もいるが、それだけでは気持ちが悪くなるという人もいる。その人の体質や日頃の食生活なども関係するので、テストしながら最適解を探すべき。テストは長いトレーニングなど本番に近い条件で行う。

胃もたれや吐き気などまずいことが起きるかどうかを見るだけでなく、その前兆としてどんなことが起きるのかを知ることが大切。前兆を把握していれば、本番でまずいことが起きるのを回避することができる。トレーニングの量だけでなく内容を考える

Q. アイアンマンのトータルタイムを上げるのに、種目のトレーニング量をどう配分したらいいか。バイクを強化したら、ランのトレーニング量が減り、レースのトータルタイムが落ちてしまった。ランのトレーニングを減らして何を失ったのかを考えてみたが、エネルギー代謝、筋力、可動域、スキル、ペース配分能力など、いろいろな要素が関係しているような気がする。トレーニングの配分を変えるタイミングも分からない。

A.エネルギー代謝はトータルの練習時間が同じなら、バイクとランの比率を変えても落ちないと思う。ランの着地のとき重力を受け止める筋力は落ちるかもしれないが。私は仕事で比較的バイクに乗る機会が多いので、自分のためのバイク練習としては週1回。ランは月80㎞程度がずっと続いている。それでもランが速くなった。トレーニング時間はあくまで因子のひとつにすぎない。動きなどスキルの改善で速くなることもできると思う。

 

◎キックオフミーティング1回目の様子はこちらから

◎「KONA Challenge supported by MAKES」オフィシャルホームページ


オフィシャルページでは、メンバーのトレーニング状況やピックアップコンテンツなどを随時更新しています。

◎MAKES
https://makes-design.jp/
◎協力施設
SPORTS SCIENCE LAB
実施内容:心肺能力(VO2MAX)、AT値、AT値でのフルマラソン適正ペース、ランニングフォーム評価、AT値での20分走タイム
R-body Project
実施内容:ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)で体のコンディションを骨格のゆがみや関節の可動域などのポイントからチェックし、評価
AQUALAB
実施内容:流水プールを使ってインストラクターによるフォームの分析、プルブイ20分測定、800mタイムトライアル
Endurelife
実施内容:AT値で20分間バイクをこいだときの平均パワー/心拍数(PWR/HRT—AT値)、FTP(機能的作業閾値パワー/PWR/HRT—AT値20分の95%)、フォーム、ペダリング評価

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