SPECIALIZED NEW VENGE
エアロロードの代表格スペシャライズドVENGEがモデルチェンジ
文・大塚修孝
エアロロードの代表格であるスペシャライズドVENGE(ヴェンジ)が第3世代として、モデルチェンジされた。
スペシャライズドは、MTBの量産から始まり、現在では、全ジャンルでトップクラスの総合メーカーだ。特にトライアスロン、ロードレースでは、世界最高峰の大会で実績を上げている。
トライアスロンの世界では、人気ブランドで、アイアンマンでは、常に上位に位置している。トライアスロンは、ロードレースのタイムトライアルとも違う、特有のジャンルだけに注力できるメーカーは限られている。「トライアスロンバイク」の代名詞とも言えるブランドなのだ。また、一方で、ドラフティングレースとなるショートのエリートレースでもそのシェアは高い。ロングでもショートでもいけるブランドだ。
今回のモデル、エアロロードは、それまでも各社でその効果を求めたモデルが存在していたが、昨今の「エアロロード」というカテゴリーは、単にエアロダイナミクスだけではなく、軽量性、快適性、そして、必要な剛性など、総合的な性能をもった「オールラウンド性」を追求したバイクとなっている。メーカーによっては、エアロロードのくくりはなく、フラッグシップモデルがそれに当たるというようなメーカーもある。
VENGEは、2010年に第1世代がデビュー、エアロロードの代表格として、君臨しているモデルだ。2015年に第2世代「VENGE ViAS」を同社風洞実験施設ウィントンネルを駆使し、フルモデルチェンジ、フレームだけではなく、ホイール、コクピット、タイヤ、ヘルメット、シューズ、ウエアなど、総合的な「エアロダイナミクス」の提案をしていた。そして、今回の発表が「第3世代」となるNEW VENGEである。
VENGE ViASよりも空力性能に優れ、TARMACよりも軽い。
今回NEW VENGEの目指すものは3つあった。「エアロダイナミクス」「軽量化」そして、「ハンドリング」だ。エアロダイナミクスだけではなく、軽量性と各サイズにおいて最適化された必要な剛性を高次元に融合させることにあった。エアロダイナミクスだけで、重くては意味がない。また軽量でも、剛性が落ちればこれも同じことだ。
このモデルの開発には様々な検証を行っている。まずは、形状だが、エアロ形状はもちろんとして、縦と横の比率はどうか、その時の軽量性と剛性は。必要な個所には、剛性を高め、そうでないところでは、剛性を落とし、軽量性を生かす。スーパーコンピュータで導き出されたものを製作し、試し、再び、製作する。何度も何度も繰り返し、より良い走りを求めてきた。結果として、500ピース以上の部材から構成されフレームが出来上がっているのだ。
特筆すべきは、エアロダイナミクスにおいて、極めて良い結果が出ている点だ。前作のVENGE ViASを超えるデータが出ているとのことで、正面からの風に対し、40km/h走行で8秒の短縮となっている。
また、軽量性においては、S-WORKS TARMAC(ターマック) SL5 DISCを上回っている。前作よりもフレームで240g、完成車で460gの軽量化に成功し、560mmサイズで7.1kgという仕上がりとなったのだ。
このエアロダイナミクスと軽量化は随所に見られるが、スペシャライズドの考えるエアロダイナミクスは、コクピットと呼ぶハンドル周りとフォークでの効果が大きいとしている。そこの形状や重量についてバランスの良い仕上がりが実現できている。ハンドルバーとステムで107gの軽量化がなされているため、このコクピットをTARMACなどでも流用したいと考える選手もいるようだ。
トライアスロンに必要十分な快適性。
一般サイズとITUサイズの専用DHバーも
そして、トライアスロンでの使用も前提としているため、「専用DHバー」もラインアップしている。あえて汎用のものではなく、エアロダイナミクスも考慮されたものだ。実は、DHバー本体は、前作のVENGE ViAS DISCがリリースされた時に作られたものだが、この第3世代に取付けられるようクランプなどを改造している。一般サイズとITUサイズの2種類が用意されている。
その他、サイクルコンピュータなどの各デバイスも専用アダプターが用意され、ステムと一体化させ、エアロダイナミクスを向上させるなど、その徹底ぶりは脱帽だ。ハンドルのバーテープは、巻く部分とそうでない部分に段差があり、バーテープを巻くと、ハンドル表面が「面一」になったり、Di2のジャンクションがシートピラー内に内蔵されるなど、細かいところへのこだわりも徹底している。また、コクピットの作業性向上やヘッドスペーサーのバリエーションなども今回もモデルチェンジで大きく改善されている。
さて、実際に乗ってみて感じることは、走り出しの軽さだ。ホイールとの兼ね合いもあるが、スムーズに進んでくれる。徐々にスピードが上がり、35km/hを超えてくるとそのスムーズが実感しやすくなる。試乗当日は、強風が吹いていたが、バイクの安定感を感じた。
そして、上りでは、軽量性と剛性のバランスが絶妙で、それまでのエアロロードは違ったオールラウンドのバイクのように走ってくれる。ショートでも40km走るトライアスロンのバイクパートは短くない。そのため「快適性」なども重要となるが、その点においても申し分ないだろう。そして、「ディスクブレーキのスペシャライズド」のイメージが定着しつつあるが、安全性と快適性を感じさせてくれるブレーキフィーリングだった。
エアロロードというよりは、「次世代ロード」であり、エアロダイナミクス、軽量性、剛性などバランスの良い新しいロードバイクが誕生したのではないだろうか。