計画に対してリアルタイムに
現状把握する
5月19日に行われた4回目のKONAチャレメンバーのフィードバック・ミーティングの続きから。
<<<前記事を読む ①「目標に対しての自分の現在地を把握する」牧野さん
東度久美さん
ITUロング世界選手権で現状チェック
IM台湾に向けて強化スケジュールを策定
東度さんはITUロング世界選手権(スペイン)で初の海外レースを経験。想定外の事態への対応力不足を痛感したほか、疲労によるペースの落ち方などに課題を発見。メインレースの10月のアイアンマン台湾に向けて、疲労した状態で行うトレーニングメニューを充実させたスケジュールを考えた。
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2018年の振り返りで3種目それぞれのスピード強化が課題ということが明らかになり、オフから課題克服のためのトレーニングを積んで、シーズン初めにはそれなりの手応えを感じた。2019年は10月のアイアンマン台湾がメインレース。それに向けた現状把握のため、3月10日にはなももマラソン(フル)、5月4日にITUロング世界選手権に出場した。はなももマラソンはラン単体でどこまでスピードが強化できたかチェックするのが目的。結果は3時間35分(平均ペース5分12秒/㎞)で、昨年のかすみがうらマラソンの3時間47分(平均ペース5分22秒/㎞)より走力が向上している。ITUロングディスタンス世界選手権(スペイン)
目標7:50:00 エイジ13位 スイム3㎞0:56/バイク120㎞4:00:00/ラン30㎞2:42:00
結果7:55:42 スイム(1.5㎞に変更)0:42:29/バイク110㎞4:10:13/ラン30㎞2:52:06初の海外レースだったこともあり、時差や現地の気候、行動、コースなど予想外のことが多く戸惑った。もっと下調べなど準備が必要だったと反省。
スイム
川を往復するコース。朝の気温7℃、水温14℃と寒く、日本ならスイム中止になるレベルで、3㎞を1.5㎞に短縮して実施。そのため下りから始まる予定が上りから始まり、前日までの雨で流れが速く往路は3分26秒/100mペース、下りの帰りもあまり上げられず1分51秒/100m。心拍が下がっていたので、もっと上げても良かったか。42分はデビュー戦より遅いが、みんな10分くらい遅かったとのこと。
バイク
事前に把握していたコースプロフィールよりアップダウンがあり、高低差計2000m。DHポジションが維持できる平坦な部分が少なかった。PWは目安の170Wをキープできずかなり上下した。3周回の1周目は低体温気味で力が入らず、2周目からようやく身体が動き、3周目は疲労でペースダウン。スイムの遅れて焦りがあった。距離が短いのにペースが落ちすぎか。
ラン
フラットなコースだが、ペースが10㎞過ぎから落ち始め、ピッチを刻んで粘ったが、いつもより上下動が大きく、フォームに改善の余地あり。トータルでは目標に届かなかったものの、それほど悪い内容でもなく、これを現状ととらえて10月までのトレーニングを行う。
ITU世界選手権の結果を踏まえて、10月のアイアンマン台湾では目標11時間10分のほかに、第2目標として11時間30分を設定。各種目の目標タイムも第2目標を設定した。
スイム 1:10 → 1:16
バイク 6:00 → 6:13
ラン 3:50 → 3:52
【目標クリアのための課題・取り組み】
月ごとのテーマを定めて、10月までのスケジュールを自分なりに立ててみた。5月はリカバリーとベースの維持、6月はベース強化とバイクのパワー、速度適応。7月は高強度のブリックトレーニングなどで疲労耐性強化、8月は暑さを避けて室内でバイクのインターバル、ランは夜にトラック練習などで心肺強化、9月はレースシミュレーション的なミニレース、10月は疲労抜きと刺激入れ。
ポイント練習はこれまでやれるときに臨機応変にやってきたが、疲労の耐性を強化するため、ブリックトレーニングなど疲労した状態でのトレーニングを週末に行う。これを実践するのに、どれくらい休養が必要か、どれくらい続けてやれるか確証はないが、3月・4月にもある程度やって「いける」という手応えはある。スイムは毎月1回OWSを入れて対応力強化。
【TKのアドバイス】
計画はリアルタイムで狙い通りか
把握しながら実行することが大切
TK■トレーニングスケジュールは月ごとの目標設定や身体の指数管理、全体の流れなど、とてもいいと思います。ただし大切なのはそのとき本当にそうなっているかです。プラン通りにやるには、プラン通りに疲れているか、休めて回復しているかなどをリアルタイムで分かっている必要があります。疲労した状態でのトレーニングも、レース中の疲労を分かった上で的確に再現できているかに注意し、そうなっていないなら修正していく。
東度■計画は立てましたが、実際にどのくらいがベストなトレーニングなのかは自信がないんです。
TK■本当のベストはレースが終わってみないと分かりません。ただ、これから定期測定でチェックしていけば、かなりの精度でうまくいっているか、修正が必要か分かると思います。
ビッグなポイントトレーニングは、
できる身体を作りながら上げていく
TK■週末にブリックトレーニングを行う、いわゆる「ビッグデー」、長くてきついビッグなポイントトレーニングが要所々々に入っているのはいいことなんですが、3日間連続というのがありますよね。これがいきなりできるのかどうかは気になります。いくら疲労した状態でやるといっても、1日のブリック、2日連続のブリックを何度も入れながら、できる身体を作っていかないと、3日連続の途中で疲れてしまい、絵に描いた餅になってしまう危険があります。
東度■世界選手権の前に4週やってみて、3時間くらいならできるようになっています。
TK■それならトライしてみていいと思います。ただ、生活の中で時間の枠が決まっているなら、時間にとらわれずにもっと強度を上げて、2時間くらいで疲労状態を作り出すことも可能です。
東度■私の場合バイクで疲労が出てくるのは90㎞からなので、まず100㎞くらいパワーを管理しながら乗ってからでないと疲労への耐性強化トレーニングはできないのではないかと。
TK■TSS(トレーニング・ストレス・スコア)的な考え方でやれば、疲労は圧縮して作り出すことができます。1時間ものすごく強度を上げて疲労状態を作り出し、そこからアイアンマンペースでといったように、ビルドアップの逆のビルドダウントレーニングをやればいい。
アップダウンのコースは
パワーキープにこだわる必要なし
東度■世界選手権ではバイクのアップダウンでパワーが安定しなかったんですが、設定のパワーをキープしたほうが良かったんでしょうか? 上りでは外国人選手に抜かれて、下りではオーバーペースにならない程度にこいで抜き返したりしたんですが。
TK■コースにもよります。テクニカルな下りなら危険ですが、安全に下れる範囲ならこいだほうがいいでしょう。上りと下りは距離が同じくらいだとしても、かかる時間は上りのほうがかなり長くなりますから、パワーをかける時間もそれだけ長くなります。平均のパワーをキープするのは難しいものです。なるべく疲労せずにバイクを攻略するには、コースをできるだけ知っていたほうがいいですし、楽にスピードが出せる技術も必要です。そういう技術は実走で磨くしかありませんから、ローラー台だけでなく、スイムの海トレ同様、バイクの実走トレーニングも大切です。
▶続き>>>③「スピード勝負の70.3からロングで戦える持久力とメンタル強化を」孫崎さん
▶①「目標に対しての自分の現在地を把握する」牧野さん
▶④「効率良くトレーニングするには、レースペースでどれだけやったかが“カギ”」高橋さん
▶⑤「KONAアスリートになるためには長くハードな“ビッグデイ”が不可欠」田所さん
>>>KONAチャレ過去掲載記事を読む
◎「KONA Challenge supported by MAKES」オフィシャルHP
オフィシャルページでは、メンバーのトレーニング状況やピックアップコンテンツなどを随時更新しています。
【サポート施設】
AQUALAB
流水プールを使ってインストラクターによるフォームの分析、プルブイを使用して20分測定を行う。
※メンバーの孫崎が実際に測定している様子はこちらから。
SPORTS SCIENCE LAB
心肺能力(VO2MAX)、AT値、AT値でのフルマラソン適正ペース、ランニングフォーム評価、AT値での20分走タイムを測定。
R-body Project
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)で体のコンディションを骨格のゆがみや関節の可動域などのポイントからチェックし、評価。
Endurelife
AT値で20分間バイクをこいだときの平均パワー/心拍数(PWR/HRT—AT値)、FTP(機能的作業閾値パワー/PWR/HRT—AT値20分の95%)の測定とフォーム、ペダリングについてのチェック&アドバイス。