このままで本当にKONAはゲットできるのか?
今シーズン初頭のレースで検証する。
5月19日、KONAチャレメンバーの第5回フィードバックMTGが開催された。多くのメンバーが今シーズン最初のレースに出場し、その結果を踏まえてオフからのトレーニングの成果や反省点などを自己分析して報告。プロジェクトリーダーの竹谷賢二さん(TK)がこれを受けて、それぞれの課題とその解決法についてアドバイスを行った。
今回はレース出場のために欠席し、文書での報告を行うメンバーが4人。時間に余裕が生まれたため、フレンドメンバーの高橋明実さん、田所隆之さんがアイアンマン70.3柳州の報告を行った。
ここではTKのオープニングトークと、何人かのメンバーの報告、定期測定やロードマップの検討から見えてきた課題・解決への取り組み方を紹介する。
【TKのオープニングトーク】
オフからの取り組みを
シーズンインレース(宮古島)で確認
5月半ばを過ぎて、皆さんは何かしらレースに出場した人も多いかと思います。レースや定期測定の結果を踏まえ、冬のオフからそれぞれ取り組んできた成果がどのように表れているのか、2020年中にKONA出場権獲得という大きな目標に向かって、今どこまで来ているのか、このままでいいのか、このままでは間に合わないのかなどを検証していくのが、今回のフィードバックの大きなテーマです。
私はオフから3種目それぞれの改善に取り組んできて、その成果を4月の宮古島トライアスロンで確認することができました。
TKの宮古島タイム:総合7位 8:47:49(スイム52:16/バイク4:11:58/ラン3:43:35)
スイムは動画で泳ぎを解析しながらフォームの改良に取り組みました。これまでいい加減な変則4ビートキックで適当に下半身を浮かせていましたが、これを2ビートに変更。最初はタイムが遅くなりましたが、次第に慣れてきて4ビートより楽に同じペースで泳げるようになりました。
バイクはスイムやランほど技術的な改善の余地はありませんが、エアロポジションの改良、そのためのエアロバーの交換を、ニューバイクの導入と合わせて行いました。
ランは以前から取り組んできた、アイアンマンで疲れているときにスピードを維持するための走りに引き続き取り組みました。トレーニングの量が頻度、1回の時間とも増えてきて、走力に余裕が出てきたと感じています。
宮古島ではスイムを2ビートで楽に泳ぎ昨年より良いタイムで終えることができました。バイクではこれまでより20〜30㎞手前の地点で、先行していた選手に追いつき追い越すことができました。ランでは後半に入って脱水でめまいに悩まされるようになり、休みながら走る結果になりました。
ペースは前半が4分40秒/㎞だったのに対して後半は5分20秒弱。トータルの平均速度は5分06秒まで落ちました。
総合7位という結果でしたが、内容にはあまり満足していません。しかし、スイムの取り組みの成果が表れたこと、ランの後半につぶれてもある程度のペースは維持できることが確認できたことは収穫でした。
宮古島の結果を踏まえて、6月のケアンズではトータル9時間10分くらいというのが目安になります。今年はエイジが45から50に上がるので、おそらく9時間40分でもKONAには行けるんですが、KONAで表彰台に上がるという大きな目標があるので、今シーズンの後半はそれに向けてパフォーマンス向上の取り組みを続けていきたいと考えています。
牧野 星さん
バイク・ランの強化に取り組み、
最後までペースコントロールできた
牧野さんは前回のフィードバックを受けてバイク・ランの強化に取り組み、4月の宮古島では目標タイムに届かなかったものの、タイム・順位とも昨年より着実に向上した。
2018年に出場したアイアンマン求礼(韓国)と西オーストラリアでは、ペース設定・ペース戦略が現実に合っていなかったため、後半に失速した。これを受けて今シーズンはトレーニングを改善しながら、実際にレースで維持できる速度やパワーなどの把握に取り組んだ。レースで疲労した状態でも走れるようバイク→ランのブリックトレーニングを繰り返し行ったほか、3月はバイクを月間1000㎞乗り、TK合宿では走り込みを行いながら、竹谷さんにフォームのアドバイスをいただき、バイクとランの適正ペースを割り出した。4月の宮古島ではこうした取り組みの成果を確認することを目標にした。2018年宮古島トライアスロン
10:11:28 総合106位 エイジ24位
スイム0:54:43/バイク5:05:37/ラン4:11:08
2019年宮古島トライアスロン
目標9:40 総合50位以内
結果9:58:50 総合75位 エイジ14位
スイム1:02:57/バイク5:01:35/ラン3:54:18
昨年の宮古島は、KONAを目指す選手としては中途半端な成績だった。今年は最低でも総合タイムで10時間を切り、順位は100位以内に入りたいと考えていたが、目標はそれより高めに設定。達成はできなかったが、最低限の目安はクリアできた。
スイムは先頭の中央でスタートし、100m過ぎでバトルに巻き込まれた。過呼吸・パニックに陥ったが、気持ちを落ち着かせて回復。しかし、前がふさがってペースが上がらず、昨年よりかなり悪いタイムになった。反省点は実力に合わない場所からスタートしたこと。
バイクはスイムの失敗を引きずらないよう気持ちをリセットしてスタート。後続に抜かれても気にせず、トレーニングで割り出したレースプラン通りひたすら165Wをキープ。終わってみると昨年よりタイムは良く、疲労もなくランに移ることができた。
ランは進むにつれて疲労を感じたが、ブリックトレーニングを重ね、TK合宿でも疲労した状態での走り込みを経験していたので、「こんなものかな」と冷静に受け止めながら走ることができた。これまでランでは心拍が落ちていくのに身体が動かずペースも落ちていくという経験をしていたが、今回は心拍を上げて良い状態をキープし、先行する人たちを何人も抜くことができた。これは初めて。
数値目標は達成できなかったが、内容的には全体としてしっかりとレースができた。特にバイクでペースをコントロールできたのは収穫。今後の課題はバイクとランで維持できるパワーを上げること。
今シーズン後半はアイアンマン求礼(韓国)に出場予定。
目標タイムは10:18:00。韓国のKONAスロットは6枠で、昨年のボーダーラインはロールダウン込みで10:27。
【目標クリアのための課題・取り組み】
スイムはスピード強化が必要。またヘッドアップでブレーキがかかるので、実戦的な泳ぎも練習する必要あり。そのため海トレを行う。
バイクはFTPを230Wから250Wにアップし、レースで180Wを維持できる力を身につける。そのためにローラー台によるパワートレーニングを行う。ランは引き続きフォーム改善によるランニングエコノミー向上を目指す。課題は上半身に力が入ること、上下動が生まれていること、上半身と下半身の連動がないこと。
秋のアイアンマン求礼までにオリンピックディスタンスと合宿を繰り返し入れて、現状を確認しながら課題を克服していきたい。
【TKのアドバイス】
レースまではペース維持を、
レース後はペースを上げる練習を
TK■冬からの取り組みが実って、レースを自分でコントロールでき、大枠は良いレースができたと思います。それでもレースでは不測の事態が起きますから、すべて狙い通りにはいかないものです。だからこそ、やるべきことをしっかりできるように練習ですることが大切です。
スイムは実力に合わない位置からスタートしたのは反省点ですが、冷静にトラブルを回避できたのは良かったと思います。バイクはパワーとペースをコントロールして、ランで走れる状態をキープしたのが大きな進歩です。ランで心拍を上げることができたのも、脚が動くからです。
これからの課題はバイクとランのスピードをさらに上げられるようにすること。宮古島までのトレーニングがレースに向けてペースをキープする練習だったとすれば、レースが終わってこれからはペースを上げる練習をする必要があります。
バイクはケイデンスとトルクの
両面からパワーアップ
TK■宮古島までの練習ペースをボトムラインとして、韓国のアイアンマンまでにどうやって上げていくか、具体的にはどんなトレーニングを考えていますか? 目標を達成するためには、ただトレーニングの強度を上げるといった漠然とした方針ではなく、具体的に毎日のトレーニングメニューに落とし込んで実行していくことが重要です。
牧野■バイクのパワーを上げるにはどんなトレーニングをすればいいでしょうか?
TK■FTPより1割くらい低い強度のトレーニングがメインになると思います。具体的にはまず時間を2〜3分、10〜15分など短く区切って、ハイパワーのトレーニングをする。パワーはペダルにかける力(トルク)と回転(ケイデンス)のかけ算ですから、今までより大きな力をかける練習と、回転を上げる練習の両方やると効果的です。
具体的には回転を上げる練習は軽いギヤで、大きな力をかける練習は重いギヤで行います。フロントギヤをアウターに入れて、そのパワーを出しやすいギヤより1枚軽いギヤで回転を上げて同じパワーを維持し、一度戻してから、今度は1枚重いギヤに入れてトルクを上げ、同じパワーを維持するといったことを繰り返す。
インドアでローラー台を使ってやるのもいいですし、夏の暑いときに山の涼しいところに行き、上りでやるのもいいでしょう。ランも宮古島までの練習より短めの距離設定で、スピードを30秒から1分くらい上げ下げしながら練習するといいと思います。
▶続き>>>②「無謀な計画になっていない? リアルタイムに現状把握する」東度さん
▶③「スピード勝負の70.3からロングで戦える持久力とメンタル強化を」孫崎さん
▶④「効率良くトレーニングするには、レースペースでどれだけやったかが“カギ”」高橋さん
▶⑤「KONAアスリートになるためには長くハードな“ビッグデイ”が不可欠」田所さん
◎「KONA Challenge supported by MAKES」オフィシャルHP
オフィシャルページでは、メンバーのトレーニング状況やピックアップコンテンツなどを随時更新しています。
【サポート施設】
AQUALAB
流水プールを使ってインストラクターによるフォームの分析、プルブイを使用して20分測定を行う。
※メンバーの孫崎が実際に測定している様子はこちらから。
SPORTS SCIENCE LAB
心肺能力(VO2MAX)、AT値、AT値でのフルマラソン適正ペース、ランニングフォーム評価、AT値での20分走タイムを測定。
R-body Project
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)で体のコンディションを骨格のゆがみや関節の可動域などのポイントからチェックし、評価。
Endurelife
AT値で20分間バイクをこいだときの平均パワー/心拍数(PWR/HRT—AT値)、FTP(機能的作業閾値パワー/PWR/HRT—AT値20分の95%)、フォーム、ペダリング