2019アイアンマン世界選手権
プロカテゴリー女子
取材/東海林美佳
写真/小野口健太
ダニエラ・リフの5連勝がかかった女子のレース。注目は1カ月前にニースで行われた70.3世界選手権でも圧倒的な強さを見せて勝利しているリフと、7月のチャレンジロートで念願のチャンピオンに輝いたルーシー・チャールズ・バークレーの一騎打ち。チャールズ・バークレー念願の優勝は叶うのか。
女王リフが優勝争いから脱落。
チャールズの先行逃げが決まる
スイムは例年通りチャールズが先行するが、その後ろにピッタリつけたのが、ローレン・ブランドン。最後までふたりのまま、後続に大差をつけてスイムアップ。約5分差で上がってきたグループには、昨年3位のアンネ・ハウグ、同4位のサラ・トゥルー、2017年3位のサラ・クロウリーらが含まれている。リフはこのパックの後方でT1(スイム・バイクのトランジション)へ。
バイクでもチャールズは快調に飛ばす。ブランドンを置き去りにして、ひとりで昨年同様逃げを図る。チャールズを追うのはサラ・クロウリー、アンネ・ハウグ、イモジェン・シモンズら。
一方のリフは、調子が上がらずタイムは離れていくばかり。チャールズは全力で逃げ続け、ハヴィの折り返しまでに後続と6分以上の差をつける。リフとの差は9分以上に開いている。
後半追い上げてきたのがダニエラ・ブレイメルとローラ・フィリップ。スイムで遅れるも、後方からグングン追い上げチェイスパックに加わってきた。だがチャールズはさらにスピードを上げ、バイクフィニッシュまでに後方集団と約8分の大差をつけた。
ハウグ自身も驚いた、軽快な走り。
ランに入ってからも快調に走り続けていたチャールズだったが、ハウグがリズミカルな走りでチャールズとの差を徐々に詰めていく。
チャールズは脚の痙攣でスローダウンを余儀なくされ、30kmエナジーラボを過ぎたあたりでとうとう後ろから来たハウグにつかまってしまう。ハウグはそのままチャールズを抜き去りトップに立った。
35km過ぎにはクロウリーがチャールズを抜き2位に浮上。ハウグはミリンダ・カーフレーを彷彿とさせる軽快な走りでリードを広げ、8時間40分10秒で初優勝を決めた。
チャールズは息を吹き返し、クロウリーを抜き返して2位を奪還。そのままフィニッシュし、3年連続、2位に輝いた。
クロウリーは2年ぶりの3位でフィニッシュ。4位には初出場のフィリップが、そしてヘザー・ジャクソンが落ち着いたレースぶりで追い上げ5位に入った。
ハウグのランのタイム2時間51分07秒は、ミリンダ・カーフレーの記録に次ぐ歴代2位の好走。アイアンマン界に新たな「ランナー」が誕生した。
レース後のコメント
アンネ・ハウグ
「どこまで走れるか、まったく未知数だった」
5~6カ月の間、故障でほとんどランの練習ができなかった状態でスタートしたので、どこまで走れるかはまったく未知数でした。ところがランは走り始めからとても調子が良くて・・・。こんな良いタイムで走れてびっくり!
ルーシー・チャールズ・バークレー
「ランで脚がつって順位を落とすも、35㎞で奮起した」
ダニエラ・リフに勝つことを目標にやってきました。彼女が本調子ではないとわかったのはハヴィ(バイク折り返し)ですれ違った時。タイム差はむしろ昨年のほうがあったぐらいだけど、とにかく勢いとエネルギーが感じられなかった。
ランでは何度か脚がつって一時は3位に落ちたけど、35km過ぎで『ここで頑張らないと3位で終わってしまう』と思って奮起したんです。自分でもよく頑張ったと思います。
サラ・クロウリー
「ルーシーとのバトルは苦しかったけど楽しかった」
コンディションは昨年よりずっとタフでした。スイムは波があったし、バイクでは風が強かった。そういった中でも自分のレースをすることに集中しました。
ルーシーとのバトルは苦しかったけど楽しかった。こういうことがスポーツの醍醐味なんだと思います。来年もまたコナに戻って、この素晴らしい仲間と良い戦いがしたいと思いました。
プロ女子上位リザルト
1. アンネ・ハウグ (GER) 8:40:10
2. ルーシー・チャールズ・バークレー (GBR) 8:46:44
3. サラ・クロウリー (AUS) 8:48:13
4. ローラ・フィリップ (GER) 8:51:42
5. ヘザー・ジャクソン (USA) 8:54:44