5月の館山わかしおトライアスロン、6月の木更津トライアスロンを目指して仲間と一緒にトレーニングする「トライアスロンを始めよう。ENJOY THE TRI supported by SHIMANO」。昨年の千葉シティトライアスロン(千葉チャレ)のスプリントでデビュー、今年はきさトラでオリンピックディスタンス完走を目指したメンバーのまゆさんが、その想いを綴ってくれた。
文=まゆ 写真=小野口健太、Lumina、メンバー提供
1993年生まれ。学生時代、体育の成績は常に「3」、運動会やマラソン大会を仮病でサボるほどの運動嫌い(運動音痴)だった。昨年スプリントデビュー、今年はきさトラでオリンピックディスタンスデビューを果たす。トライアスロン以外で興味·関心があるのは、ウェルネス、ボディポジティブ、ジェンダー、サスティナブル。ブログ「Live with balance」(https://moi-realsize-life.com/)
わたしのペースで、わたしなりに。
「わたしの人生、今年で終わりだ」
新たな目標を立て、新たな出会いにワクワクするはずの新年。わたしは人生に絶望して、メンタル底辺で2023年を迎えた。健康診断で胸に腫瘍が見つかり、精密検査を受け、〝乳がん” である可能性を告げられたからだ。
わたしのトライアスロンデビューは、昨年の千葉シティトライアスロン。スプリントでのデビューだった。そこからは割と真面目に身体を動かしている。お酒も飲まない。ジャンクフードもあまり食べない。もう1年以上風邪も引いていない。健康には自信があった。
健康診断で引っかかったのも何かの間違いだろう。診察室で〝がん〞というワードを聞いた瞬間は、頭が真っ白になった。
精密検査は細胞を調べる生検まで行った。結果はというと「今は良性だが、今後がんに変わる可能性もあるし、良性のまま腫瘍が大きくなる可能性もある。数カ月後にまた再検査しましょう」という何とも中途半端なものであった。
「良性なので心配する必要はないです」「悪性なので手術して治しましょう」
そういった白黒はっきりした結果を期待していた。なんてモヤモヤする結果なのだろう。生検の結果が出て数カ月が経っても、自力で海底から上がってくることができない。
電車の中で、出先のトイレで、お風呂の中で、ベッドで。ひとりになると、締め忘れた蛇口のように涙が溢れ出た。夜中3時頃に目が覚めていつも寝不足だった。
髪の毛が抜けて10円ハゲができた。蕁麻疹が何度も出た。ひとりになると将来に対する不安が押し寄せてくる。「がんかもしれない」と言われたときの感情、検査したときの器具の感覚がフラッシュバックする。
のちに、精神科で〝軽度のうつ〞と診断された。「とにかく何か気が紛れることをしよう」外食したり、買い物に出かけたり、小旅行をしてみたり。もちろん調子がいいときは走ったり、自転車に乗ったり。いろいろと試した。
そんなとき、Luminaのメルマガから「トライアスロンを始めよう」への参加案内が届いた。
元々は運動音痴で、トライアスロンも始めてまだ半年ほどしか経っていない。オリンピックディスタンスはまた2、3年後に挑戦できたらいいな、と「トライアスロンを始めよう」の案内が届くまでは思っていた。何か予定を入れて頭の中から不安を取り除きたい。
今の状態から抜け出したい。ODを完走して自信を取り戻したい。そんな思いで、わたしは「トライアスロンを始めよう」への参加と、木更津トライアスロンでODに挑戦することを決めた。
篠崎コーチやメンバーは皆パワフルだ。白い泡が立っている荒れた海で泳いだり、太陽がジリジリと肌を攻撃してくるような暑さの中で走ったり。ハードな練習をした後でも、コーチもメンバーも楽しく笑いながら帰っていく。
パワフルな人に囲まれて行うハードな練習は、わたしの気持ちを明るくしてくれた。練習は、心の底から、楽しく過ごせた時間だったと言える(苦手なランニングはめちゃくちゃきつかったけど)。
木更津トライアスロンのレース当日。普段は本番でもドンッと構えるタイプなのだが、珍しく少し緊張していた。練習不足で完走できるか不安だったからだ。
レースの申し込みをしたときに決めていたことがある。それは「寝不足のとき、身体が疲れているとき、気分が落ちているときは練習しない」ということだ。前回スプリントを完走したときは週4〜5で練習していたが、結局、今回は週2ほどしか練習できていなかった。
レース前に「トライアスロンを始めよう」のメンバーやLuminaスタッフの皆さんと話すことができて多少緊張が和らいだ。知っている人がレース会場にいるというのは、なんて心強いのだろう。
今回の目標はケガなく、完走すること。スタートしてからはとにかくマイペースを意識した。「大丈夫。このペースなら時間内にはゴールできる」
周りの速い人にペースをもっていかれそうになりながら、そう心に言い聞かせて、ただただ自分の身体と気持ちに向き合った。苦手なランの10㎞はとてつもなく果てしなく感じる。他人から見たらジョギングとも言えないスピードだろう。それでも最後まで10㎞歩かずに、ゴールゲートをくぐることができた。
「よかった。無事にゴールできた。OD完走できたんだ」
ゴール後はうれしさよりも安堵の気持ちが勝った。運動音痴でも、病気でも、完走することができた。少なくとも、レース前よりは、自分への自信も取り戻せたような気がする。
人生、常に上向きとは限らない
人間関係で悩むこともあるし、仕事でミスすることもある。自分が病気になることもあれば、大好きな人がいなくなってしまうこともある。
周りの人と比べてしまったり、世の中の目を気にしてしまったりすることもあるだろう。でも、人生でもトライアスロンでも、常に全速力で走っている必要はないのだ。
ゆっくりでもいい。時には止まってみてもいい。ひとりで頑張るのではなく、周りにサポートを求めてもいい。「MY PACE MY STYLE」で歩んでいこう。