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旅烏の「徒然グサッ!」〈6〉セントレアのおすすめ観光スポット
Lumina誌面でおなじみの「旅烏」こと作家でトライアスリートの謝 孝浩さんが、日々のトライアスロンライフで心にグサッときたことを書き綴るショートエッセイ
ロクロを回したこと、ありますか?
今年で8回大会となる「アイアンマン70.3セントレア知多半島ジャパン」の開催日が迫ってきた。競技説明会やアワードパーティ、エキスポなどが開催されるメイン会場は、愛知県常滑市に立地する人工の島、中部国際空港セントレアだ。レース前後は、トライアスリートが国内外から集結し、空港にトライアスリートが溢れる。
旅好きの旅烏にとって、トライアスリートが空港をジャックするその雰囲気が好きで、同日開催のアイアンマン・ケアンズに参戦した2013年以外は、すべて参戦している。
スタート地点が空港からは離れているため、レース前日は準備であわただしいのだが、レース前後に余裕がある日程を組める人は、空港内だけではなく、対岸の常滑市内を散策することをおすすめする。実は旅烏もLUMINAの取材で訪れるまでは、すぐそこなのに、常滑市内を見物したことはなかった。
今から思えば、実にもったいない。なんとも風情のある街並みなのである。常滑市は焼き物の街として有名で、常滑焼きゆかりの場所を繋いでいく「やきもの散歩道」が整備されている。工房やギャラリー、かつて使われていた登り窯も見学することができる。
工房のひとつでロクロを使った陶芸を体験した。手練りで陶芸をしたことはあったが、ロクロ体験はその時がはじめて。電動なので、足で回すよりは少しは簡単なのかもしれない。それでもかなりハードルが高いことにはかわりない。工房のスタッフの方が優しく教えてくれた、というかほぼスタッフの人の手ほどきのままという感じ(笑)。
しかし初心者の旅烏でも、見様見真似で、徐々に形になってくると、なんだか嬉しくなったものだ。なんとかそれらしき形になったので、底に名前を掘って、十数種類の中から、好きな藍色の釉薬を選んだ。
2カ月ほどして、焼きあがった陶器が届いた。なんともいい風合いの湯呑み茶碗に変身していた。手ほどきのままに手伝ってもらいながら形をつくり、色づけも焼きつけもプロの手によるものではあるが、自らの手で生み出した1点モノには変わりない。それからは、湯呑みとしてはもちろんのこと、時に花をいただいた時などは、一輪挿しとしても利用している。旅の思い出の詰まった、お気に入りのモノのひとつになったのである。
陶芸体験 角山陶苑
愛知県常滑市栄町3-116
http://www.tac-net.ne.jp/~kakuzan/
※次回の【旅烏の「徒然グサッ!」〈7〉暑い日や雨の日は、 ヴァーチャルな景色と一体化する。】はこちら
■著者プロフィール
謝 孝浩 (しゃ・たかひろ)
1962年長野県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。 在学中には探検部に所属しパキスタン、スリランカ、 ネパールなどに遠征する。卒業後は秘境専門の旅行会社に就職し、添乗員としてアジア、アフリカ、南米など世界各地を巡る。2年で退職し、5カ月間ヒマラヤ 周辺を放浪。帰国後はPR誌、旅行雑誌、自然派雑誌などに寄稿するようになる。現在は、トライアスロン雑誌での大会実走ルポなどを通じて日本にも目を向けるようになり、各地を行脚している。著書にルポ『スピティの谷へ』(新潮社)、小説『藍の空、雪の島』(スイッチ・パブリッシング)など。http://www.t3.rim.or.jp/~sha/