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パリを旅する5000人規模のトライアスロン大会《Garmin Triathlon de Paris》

投稿日:2020年3月14日 更新日:


KOZUMA SPORTS

text by:

A.S.O-TriathlonParis©Daren

旅するトライアスロン。
~パリの灯は見えたか?

ガーミン・トライアスロン・パリ
Garmin Triathlon de Paris

今年の開催日/2020年6月28日

[大会ホームページ]
https://www.garmintriathlondeparis.fr/fr

パリで5000人規模のトライアスロン大会が開催されている――。その魅力と見どころ(走りどころ)を、昨年(2019年)大会に参加した筆者が紹介する。

文/コウヅマスポーツ
text by KOZUMA SPORTS

大会の情報をボクが知ったのは昨年の5月。その翌々月にフランスへ行く用事があり、準備を進めている最中だった。なんと23回(第1回は1998年)の歴史があり、開催はボクが当初予定していた渡航日の1週間前。「どうせ行くなら・・・」と元トライスアリートとしての好奇心がムクムクと顔を出しエントリーを決め、パリへと飛んだ。

ロングみたいな51.5km?

現地に到着したのはレースウイークの金曜日(2019年6月28日)。受付&バイクチェックインは51.5kmの大会ながら前日の土曜のみ。ロングさながらで、トランジションエリアの広さにも驚かされた。

そりゃ、5000人の大会規模ならば当然と言えば当然。前日に受付を済ませねばならないのにも納得させられる。

その受付時に受けた印象は全体的にゆる〜い感じのもの。メイン種目は51.5kmだが、ほかにスイム、バイク、ランを3人でつなぐリレーと、スプリントカテゴリー(S500m+B25km+R5km)があり、受付窓口では「ほぼママチャリ?」という参加者もいて、なんかほのぼのとさせられた。

日本じゃまず見ることのできない規模のトランジションエリアが広がる

パリの名所を『ぜんぶ乗せ』コース!

気になるコースの売りはやはりバイク。パリの北東部にある大会会場、ラ・ヴィレット公園から、おおざっぱにいうと西に向かって往復し、一部セーヌ川沿いを走るというルート。

途中、パリといえば誰もが思い浮かべるルーブル美術館横からコンコルド広場へ続く道を抜け、エッフェル塔を臨みながらロンシャン競馬場もあるブローニュの森(折り返しエリア)、を目指す。

その後、凱旋門の近くを通り、来た道を戻るというコース。つまりはレースに出ながら代表的な観光名所を堪能できるというわけ。こんなレース、ほかにあるだろうか?

<コースマップ>


これぞ都会で行われる大会!

大会当日、会場に向かっていると、朝方までクラブで踊り楽しんでいたであろう若者の一行ほか、徹夜で飲み明かし眠そうな目をした人たちとすれ違う。一方、レースへの意気込に満ちたわれわれ参加者たちは逆方向へ。日本のマラソン大会でも同じだが、このコントラスト、いかにも都市部で行われる大会という雰囲気だ。

スイムは公園内を流れる運河を真っすぐに泳ぐワンウエーコース。メイン会場に帰ってくるルートになるので、トランジションエリアで準備を済ませた参加者は、この運河沿いを逆方向に歩きスタート地点に向かう。

スタートは午前8時から5分おきのウエーブ方式。最初はエリート部門でその後、事前の申告タイム順にグループ分けされているようだ。

ボクは全6ウエーブある中の第5組目。そう、ホント久々(約10年ぶり)のトライアスロン大会、しかも泳ぎが苦手の身にとってスイムはメチャメチャ高いハードル。バトルも恐ろしくて予想タイムを控えめに申告していた(ちなみに昔出たアイアンマンでのスイムベストは1時間50分くらい)。しかし、これが後の悲劇の一因となるとは・・・。

スイムを待ち受ける選手の群。先にスタートするウエーブがさらに気分を盛り上げてくれる/A.S.O-TriathlonParis©AnthonyBrebant

歩きながらスイムを応援!

スイム会場に到着すると、はやる気持ちを抑えきれないトライアスリートの熱気と、アップテンポの大音量BGMに包まれた。この曲、よく聞くとAC/DCのサンダーストラック(雷鳴)だ。

お仏蘭西(死語?)に居ながらにしてコテコテのブリティッシュ調ヘビーメタルなんて・・・とちょっと笑えたが、スタートの演出にはぴったりで、応援者までもが自然とリズムをとっている。

そしていよいよボクのウエーブが始まり、いざ入水! 水質はお世辞にも良いとはいえず、たまに藻が腕に絡まるのが気になったが波はなく、水温も快適で泳ぎやすい。

レースの準備期間に1カ月くらいしかなかったボクは、おそらく端から見たら「コイツやる気あんのか?」と思われるペースで、とにかく無理しないように進んでいく。

息継ぎ時に目に入るのは運河沿いのギャラリーたち。なるほど、このレイアウトなら家族やパートナーなど、お目当ての選手を応援しながらスイムパートを楽しめる。見る側も嬉しいだろうなぁ、と感心しながら泳いでいると、不意のバトルに巻き込まれた。

「ひえ〜、やめて〜〜」と泣きそうになりながらと後ろを確認すると、次のウエーブの集団が。そう、ちんたら泳ぎ過ぎて追いつかれたのだ。

「すんません、すんません」と心の中で叫びながら集団をやり過ごす中、背泳ぎの人や、ついには平泳ぎの人にも追い抜かれていく。

ほうほうの体でスイムアップし、時計を見ると、な、なんと1時間11分もかかっているではないか! 「なんじゃこりゃ?」と二度見するもこれが現実。あまりに余裕をかまし過ぎた上に、どうやら運河がゆるやかに逆流していたようだ(にしてもヘボ過ぎるが・・・)。

同時にスイムの制限時間が脳裏をよぎる。確か最初のウエーブから1時間30分くらいだったはずだ。つまりボクの組だと少しオ−バーするくらい。

わざわざパリまで来てスイムで終わり? 目がくらみそうになりながらトランジションエリアにたどり着くと、当然のことながらセットされていたバイクはほとんど無し。見慣れた光景ではあるが、今回は絶望感が増す−−。

スタートからほぼ1.5km応援可能なスイムコース/A.S.O-TriathlonParis©AnthonyBrebant

最大のピンチ脱出?

一応バイクをピックアップして人目につかぬよう、そろ〜りとバイクスタート地点に向かう。誰にも何も言われなかったので、背徳感を抱きながら走り出すと、ほどなくして原チャリに乗ったマーシャルらしきオッチャンが前に立ちはだかった。

やはりダメか・・・。そう観念すると、そのオッチャンがフランス後で「オレに付いて来い!」と(多分)言って、先導し始めてくれた。

え、いいの? と思いながら後を追っていくと、そろそろコースを片付けようかというボランティアや警察までも『ビ〜〜!』とホーンを鳴らしまくって蹴散らかし、メインとなる通りまでエスコート(?)してくれた。

「なんてええオッチャンなんや・・・」と感動しながらペースが落ち着くと、まわりの景色が目に入るようになる。

バイクはマウンテンバイクやフラットバーなどバリエーションに富んでいた

ツールで最後に走るコースも!

なんという光景だろう。

交通規制のないパリの街中を自転車で疾走する高揚感。途中、裏路地を走る区間もあり、オシャレなカフェで朝のコーヒーを楽しんでいる客たちが手を振ってくれる。レースに集中するのがもったいないくらいだ。

おそらくボクは参加者の中で、最もキョロキョロしながら走っていたはず。序盤から歴史を感じさせる宮殿やセーヌ川のほとりなど、これまで体験したことのない空間を満喫。

さらに印象が強かったのがパヴェ(石畳)で、太めのクリンチャータイヤでもガタガタと振動が腕から胸のあたりにまで響いてくる。これが本当に走りにくい。

欧州にはこういったパヴェがプロサイクリストたちを苦しめるクラシックレースが多くあると聞く。その代表ともいえるパリ〜ルーベが『北の地獄』と呼ばれる意味が(たかだか800mくらいの区間だが)よく分かった。

トライアスロンに限らずマラソンなど、これまでいろいろな大会に出場してきたつもりだが、その魅力のひとつに『非日常』を楽しめることが挙げられると思う。でも、こんなの今までの記憶にない非日常だ。

トライスロン・パリ最高!

ツール・ド・フランスの放送で見たことのあるルーブル美術館の横道を抜け、コンコルド広場に向かう途中、そう叫びたくなる。この先にはエッフェル塔が大きく見えるはずだ。

筆者もこんな光景を満喫する予定だったのだが・・・/A.S.O-TriathlonParis©Daren

衝撃の結末!

しかし、付け焼き刃で準備したボクにとって、トライアスロンはそれほど甘くはなかった。ほどなく、コース役員がボクの前に立ちはだかる。相変わらずフランス語(当たり前だ)なのでよく理解できないが、どうもここで折り返せと言っているらしい。

「そんなアホな・・・」

距離にしてバイクの15km地点。先にはまだ見ぬエッフェル塔や凱旋門が待ち受けているというのに。

「殺生なこと言わんといて〜な」「信じられな〜い」と、ボクの周りに走っていた参加者も同様に食い下がる。

すると、なんとさっきの先導してくれたオッチャンが合流してきて、すまなそうな顔で「この先、交通規制が終わるから迷惑になるんで」と諭され、泣く泣く折り返すことに−−。

戻りの15kmは、まさに失意のルージング・ライドでよく覚えていないが、身に染みたのは沿道の応援だ。基本、折り返しコースなので、ちゃんと走っている選手に合流したボクにも熱心な声援を送ってくれたが、それにまた胸を刺す。

お情けのランパート?

バイクを終了し、恐る恐る周りを見渡すが、また誰にも何も言われなかったので、折角なんでしれっとランに移る(すんません)。

コースは運河沿いを、スイムとは逆の方向に走り、折り返すレイアウト。バイクに比べると単調で地味ではあるが、走らせてくれただけで良しとしなければならない。

そんな中、印象に残ったのは序盤に待ち受ける階段。まるで皆生トライアスロンのようだが、3階くらいまでの高さがあり、上りながら自然と笑えてくる。ボクの隣の女性参加者も苦笑していた。

そして歓喜じゃないフィニッシュ。

もちろん、ボクがバイクの途中で折り返しているなんてギャラリーには分からないので、熱烈に迎えてくれる拍手が恥ずかしかった。

いや、ボク失格なので・・・。と心の中でつぶやきながら動線を進むと、笑顔のボランティアが完走Tシャツとメダルを渡してくれる。もはや断る気力もなくそれらを受け取り、帰り支度のためにトランジションエリアへと戻った――。

ランニングの時間帯になると紫外線が強く刺すので暑さ対策も万全にしたい/A.S.O-TriathlonParis©Daren

哀愁のヨーロッパ?

ということで、ボクの久々のトライアスロンは約41.5kmで終了。なのでエラそうにレースをどうこう言える立場ではないとは思う。ただ、これでもかとパリの名所を詰め込んだこの大会は、(完走できれば)極上の小さな『旅』を約束してくれることは間違いない。

「翼よ、あれがパリの灯だ!」

これは歴史に名を残す飛行家、チャールズ・リンドバーグが、かつてニューヨーク〜パリ間の大西洋単独無着陸飛行に成功したときに残した言葉といわれている。

今回、極東の地から太平洋を越え、はるばるやってきてボクにとって、51.5km先のパリの景色を見ることはできなかった。人生そんなに甘くはないということを華の都(これも死語?)が教えてくれたということか。

その後、モヤモヤを抱えたままパリを後にしたのだが、欧州に滞在中、ずっと「なんだかなぁ」という無念な想いがつきまとっていたのが、今となっては懐かしく感じる。

しかし・・・、このまま苦い記憶で終わらせていていいのか? オレ。

さあ、どうする?

パリジャン、パリジェンヌ
参加者からのメッセージ
ジャン-クルードゥ&セリーヌ・ルコアさん

今回レースに参加した素敵な地元カップルより、今年参加しようと思っている読者へメッセージ。

「エッフェル塔や凱旋門など普段から見慣れた風景だけど、レースで体験するとまた違って映えて見えたよ。日本からの参加者にとっても、これまでにないエキサイティングな大会になるんじゃないかな?」(ジャン-クルードゥさん/左)

「お互いトライアスロン・パリは2回目だけど、一緒に走るのは初めて。ひとりはもちろん、カップルで出場するのもオススメですね。大会に向けて一緒に練習するのも楽しみが増しました」(セリーヌさん/右)

なるほど夫婦や仲間で出れば、この素敵な体験が2倍、いや3倍以上楽しめるということだ。

今年出場する人はここをポイントにしよう

[受付時はIDが必要]
前日の受付時はスマホでのQRコード読み取り方式。またIDが必要で、これはパスポートを提示するのがてっとり早い。

[使い捨てのサンダルを用意しよう]
スイムスタート地点へは皆、メイン会場から運河沿いを真っ直ぐ1.5km歩いて向かう。途中、小石が転がっている区間もあり、裸足だとちょっと歩きにくい。実際、リピーターたちはぺらぺらのビーチサンダルなどをはいている人も多かった。

[ドリンクは多めに用意]
6月末とはいえ当日は暑く、特にランでは紫外線が強く感じた。もちろんランコースにエイドはあるのだが、バイクパートやレース後のトランジションエリアなど、水分は余裕をもって準備しておきたい。

[しっかりと練習しよう]
筆者みたいにならないように・・・。

パリのトライアスロンショップならココ!
Bicycle Store

自転車の国・フランスに来たならばトライアスロンショップにも足を運びたい。パリの中心部にある『バイシクル・ストアー』は大会のエキスポに出店もしていたフレンチトライアスリートのよりどころで、地元の人気プロダクツを楽しめる。店長のジュリアン・ブラン(Julien BOULAIN=写真下)さんはアイアンマン・ハワイ(KONA)に3度出場したことのある強豪エイジだ。「サーヴェロなどのハイエンドバイクからリーズナブルなモデルまで取りそろえているのも特徴のひとつ。「初心者にも分かりやすく案内するよ」の言葉どおり、敷居が低い店内雰囲気が印象的だった。
https://www.triathlonstore.fr

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