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90歳で世界選手権に挑む稲田弘さんの《年齢》という壁の乗り越え方

投稿日:2023年3月16日 更新日:


ルミナ編集部

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稲田弘さん ©KentaOnoguchi

Interview Hiromu Inada>>My Reboot Style

探求を楽しめば、壁は越えられる。

今年、90歳でアイアンマン世界選手権完走という前人未到の記録にチャレンジする世界のレジェンド・稲田弘さんに、誰も経験したことのない境地で続くトレーニングの日々について訊いた。

写真=小野口健太 取材=原修二

稲田弘さん ©KenntaOnoguchi
稲田 弘 Hiromu Inada
1932年大阪生まれ。70歳でトライアスロンデビュー。76歳でアイアンマンに初挑戦。80歳でKONA(アイアンマン世界選手権)を初完走しエイジ優勝。2016年、2018年にもKONAで優勝し、最高齢アイアンマン完走(86歳)の世界記録をもつレジェンド。90歳の今年、アイアンマン世界選手権完走の世界記録更新に挑む。

――90歳でアイアンマン(以下IM)世界選手権完走という前人未到の記録にチャレンジされる今季、大まかなスケジュールを教えていただけますか。

稲田 4月に石垣島トライアスロンに出て、6月IM70.3ハワイ(ホヌ)でIM世界選の出場権獲得を目指し、出場権が獲れたら9月にフランス・ニースのIM世界選に出場します。昨年もホヌに出て完走したんですが、13分タイムオーバーでした。

ランコースがゴルフ場で、アップダウンがあり、特に下りで4年前に傷めたヒザの痛みが出て走れず、タイムロスしたのが原因です。

ヒザの故障は半月板損傷で、それ自体は治らないんですが、使う筋肉を変えてヒザに負担がかからない走り方を工夫して、ほぼ痛みなく走れるようになりました。今年は時間内完走できると思います。

――アイアンマン側は昨年のホヌで優勝と認め、表彰しようとしたとか。

稲田 そう。タイムはオーバーしたけど、他に同じエイジの選手がいないし、90歳以上のエイジで完走は前人未到だということで、優勝と認め、表彰しようとしてくれたらしいんです。

しかし、制限時間内に完走していないわけですから、受けなかった。帰国後、今度は「コナに招待したい」と打診がありました。「VIP待遇で招待する。経費をすべて持つ」と言うんですが、この招待も断りました。

最初は受けてもいいかなと思ったんですが、「VIP待遇」というのが嫌だったんです。そんなふうに特別扱いされるとプレッシャーがかかる。だから、「出るなら予選でちゃんとスロットを獲って出たい」と言って断りました。

80代に入って感じた壁と90歳の今、立ちはだかる壁

――今年のIM世界選がコナではなくニースになったことについては?

稲田 コナは特別な聖地です。9年連続出場して「10回目もコナで」と思っていたし、昨年のホヌでもコナの人たちに「来年コナで会おう!」と言っていたので、そこは残念です。

――ニースはコナとコースも気象条件もかなり違いますよね? 

稲田 バイクが海抜0mから2200mまで上るハードなコースなので、山本(淳一)コーチが対策を考えて、色々アドバイスしてくれます。

(トライアスロン)バイクのハンドルをドロップハンドルにしたり、軽いギヤをつけてヒルクライムの練習をしたりといった対策を始めています。

2016年アイアンマン世界選手権(KONA) 稲田弘さん

2016年アイアンマン世界選手権(KONA)

――80代後半以降のIM完走は、世界で稲田さんしか経験していないわけですが、年齢を重ねていくことで経験する困難はどんなものですか?

稲田 やはり日に日に体力が落ちていくことです。まず80歳で大きな落ち込みがありました。80~84のエイジで初めてコナを完走したのは実年齢79歳、数え年80歳でしたが、絶好調でした。ところが翌年、実年齢80歳になって体力がガクッと落ちた。

その後完走できない年が続きましたが、そこを乗り越えて2016年に84歳で最高齢完走世界記録を更新。さらに2018年、86歳で完走して85歳~のエイジを作りました。

80代後半は前半よりキツかったけど、今90歳になってさらにキツいと感じます。筋力が落ちてきたし、骨も脆くなっている。練習で同じことをやってもタイムが落ちるし、疲れるようになりました。

――年齢とともに立ちはだかる壁を、どうやって乗り越えていますか? 

稲田 体力が落ちていく中で、山本コーチと相談しながらできることを続けてきただけです。今も基本的に毎日3種目トレーニングするし、週1回100kmライドと、25㎞ランを入れています。週末は4月~12月なら館山でアスリートワークスの合宿があり、バイク100㎞後、ラン5~10㎞とスイムもやります。

1~3月の週末はバイク合宿があり、館山までバイクで海沿いを170㎞走り、翌日は内陸コース160㎞を走って帰ってきます。慣れの問題なので、量は問題ありません。

速度は基本ゆっくりです。大切なのは楽しんでやることですから、キツいときは無理をしない。睡眠不足、栄養の関係など、そのときによって体調は違うし、気候条件も違いますから、調子を見ながらやります。

ゆっくりペースだけだとスピード感覚が鈍りますから、最近はランに100mのダッシュを繰り返すインターバルを入れています。バイクは負荷をあまり上げず、回転を思い切り上げるインターバルをやります。

稲田弘さん

――年齢を考えると信じられないような練習内容だと思いますが、そこまでやれる秘訣は何でしょう?

稲田 楽しんでやっているからできるんでしょうね。少しでも良い動きができるように、練習中も常に「こういう動きをしたら、楽に進むな」とか、「坂を速く上れるな」といったことを考えながらやっています。

テレビを見ていて、他のスポーツ選手の動きがヒントになったりすることもある。最近ではスピードスケートの動きを参考にバイクのペダリングを変えてみたら、昨年のホヌでバイクが練習より30分速かったんです。

こういう気付きとか工夫は楽しくてしかたがない。四六時中そういうことばかり考えているからいろんな気付きがあるし、それを試したいから練習が楽しみなんです。

まだアイアンマンを続けられそうな気もするが

――健康面で気をつけていることはありますか?

稲田 睡眠は8時間寝ないとダメなのでしっかり眠ります。食事はきのこ類も含めて野菜の種類を増やしたりするくらいです。「こういう野菜にはこういう栄養素が含まれていて身体に良い」と聞くとプラスするので、今14種類くらい食べます。

入れるタンパク源も、鶏胸肉や豚肉など運動や健康に良い栄養素を含んでいる食材を選んでいます。ほかに調味料として黒酢、オレンジジュース、黒ごま、味噌などで栄養をプラスしたり、サバ缶を入れて調味料代わりにしたり山芋を入れたり、とにかくできるだけ食材の種類を多くしています。

こういうたくさんの具材を煮て丼2杯食べます。胃腸は年齢の割に強いほうかもしれません。合宿でも、よく食べ過ぎじゃないかと言われます(笑)。

――90歳でアイアンマン完走を達成できたら、その後の目標は?

稲田 まだわかりません。アイアンマンを続けられそうな気もしますが、最近の体力の落ち方を見ていると、実際にはかなり厳しい。51.5㎞や、長くても70.3の大会を楽しむことになるかもしれません。

まずは今年、ホヌの70.3で出場権を獲り、アイアンマン世界選をやってみてから考えます。

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