COLUMN

日本のロングのミライを語ろう《後編》

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ルミナ編集部

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アイアンマン・ハワイ2022年

©Kenta Onoguchi

>>トライアスロン・ミライ・ミーティング

トライアスロン界では日本と世界との差が拡大している。これを打開するためJTUではマルチスポーツ対策チームが6年計画で、日本のロングディスタンスを強化していくプロジェクトをスタートさせた。

このプロジェクトがどんなものなのかをトライアスリートに伝えるため、6月4日にオンラインで「トライアスロンミライミーティング」を開催。ここではミーティングの中から、ポイントをいくつかピックアップして紹介する。

最後は、現役選手らが現状のリアルについて語ってくれた。
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WTCS横浜

©Kenta Onoguchi

ショートで活躍する選手のロング参戦 日本での可能性は?

三井住友海上トライアスロン部
川合貴紀監督・古谷純平選手・小田倉真選手

【三井住友海上トライアスロン部の歩み】
2013年 三井住友海上トライアスロン部創部 東京オリンピック決定
2015年 日本選手権 古谷純平優勝 椿浩平3位
2017年 日本ランキング古谷純平1位 小田倉真2位
2018年 アジア大会 古谷純平男子個人・混合リレー金メダル
2019年 パラアスリート米岡聡加入 椿浩平ガイド選手に
2021年 東京オリンピック 小田倉真男子個人19位・混合リレー13位、東京パラリンピック 米岡聡・椿浩平ガイド 男子PTVIの部銅メダル
現在は2024年パリオリンピック国別出場枠男女3名獲得を目指し、ワールドカップ、WTCS、大陸別選手権でのポイント積み上げ中

平松リーダー■世界では距離の垣根が取り除かれ、ノルウェーの(クリスティアン・)ブルンメンフェルト、(グスタフ・)イデンなどオリンピアンが2022年アイアンマン世界選手権優勝など、ショート、ロング両方で成果を上げています。

オリンピックを目標に活動しているトライアスロンチームの監督として、この状況をどうとらえていますでしょうか?

また、これは、期待を込めてお聞きしたいところでもありますが、三井住友海上トライアスロン部の選手にもパリオリンピック後、ロング挑戦の可能性はありますか?

川合監督■世界的なオリンピックからアイアンマンへ参戦の動きは、非常にうれしいことだと思っています。ロングとショートの同時強化は可能かという観点からも注目しています。

ノルウェーの2選手はアイアンマンでの成功後、現在ショートに戻ってパリを目指していますが、イデン選手はやや苦しんでいるように見えます。

古谷選手、小田倉選手は、パリオリンピック後の挑戦はロングでも、どこまでもやったらいいと思っています。

平松リーダー■すでに小田倉選手は2022年佐渡ロング日本選手権に初出場して優勝していますよね。この参戦にはどのような意図があったのでしょうか?

 

小田倉真

©Kenta Onoguchi

小田倉選手■佐渡日本選手権参加は、東京オリンピックまでショートに集中してきたので、違う景色を見たかったから出場しました。そして、練習から大会まで含めて、違う刺激がショートにも生かせるのではないかとも考えました。

結果として自分をよく知ることができたと感じます。経験してみて、ロングに興味が湧きましたが、同時にバイクでのペース配分など、ロングの難しさも感じました。

ショートではバイクで突っ込んでもなんとかなりますが、ロングではそうはいかないことを痛感しました。

将来的にはWTのロング選手権やアイアンマン70.3に出たい気持ちもありますが、今はパリオリンピックに向けてショートに集中しています。

平松リーダー■古谷選手は大阪・中国で連勝。WTS横浜大会でもバイクで先行して、バイクでの強さを改めて示してくれました。バイクの強さはロングに有利だと思いますが、いかがでしょう?

古谷純平

©Kenta Onoguchi

古谷選手■ロングに興味はありますが、まずミドルからと考えています。

実際今年もプロカテゴリーでの参加が可能ならアイアンマン70.3ジャパンに出ようとしていたのですが、プロカテゴリーが開催されないと分かり、参加を見送りました。

ノルウェーチームと合同合宿などで一緒に練習してきましたが、自分との実力差、特にバイクの差は非常に大きいと感じています。

ミドル・ロングのレースの組み立て方なども未知数なので、今後、挑戦しながら学んでいきたいと思っています。

3×オリンピアン上田藍のアイアンマン挑戦

上田藍

©Kenta Onoguchi

上田藍選手
リソル、稲毛インター所属。北京、ロンドン、リオと3大会連続でオリンピック出場。2022年シーズンからは、プロカテゴリーでアイアンマンに挑戦し、アイアンマン70.3ワコーでは初優勝を飾る。

今後可能性を試すのはオリンピックではなくロングディスタンスだと考え、昨年(2022年)からプロカテゴリーでのコナ出場を目指して、ミドル・ロングに挑戦しています。

2022年にアイアンマン70.3ワコーで初優勝することができました。現在70.3では戦えていますが、アイアンマンは苦戦しています。

スタンダードディスタンスが(競技時間)2時間くらいなのに対して、アイアンマンは約9時間。長時間パフォーマンスを維持するのは難しいと痛感しています。

特にバイク180kmに課題があると感じています。エアロポジションを改善するため風洞実験を行ったり、クランクを替えて回転重視のペダリングに変えたり、いろいろ改善中です。

上田藍

アイアンマン・アリゾナ ©Patrick McDermott/Getty Images for IRONMAN

生々しい話ですが、資金面の苦労もあります。

オリンピック選手はスポンサーの支援、国の強化費などがあり、競技に集中できますが、ロングでは自分で収入を得なければなりません。

私の場合、ショートから転向後も支援を継続していただいているスポンサーさんもあり、これはとてもありがたいことですが、こうした支援がない選手はきついと思います。

海外の大会に参加するには渡航費がかかるので、経済的負担は大きいです。私は海外のレースで賞金を稼いだりしながら、遠征費に充てています。

今後は、ロングの魅力をもっと広めて、アスリートが競技に集中できる環境を作っていけるかが重要だと感じています。

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