HOW TO INDOOR TRAINING

キックの「力み」がどうしてもとれないときは?

投稿日:2018年3月27日 更新日:


経澤耕達

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宇都宮村上塾・経澤コーチ
大人になってから泳ぎ始めた人のための「板キック」 #03

リラックスできていないと理想のキック動作はできない。

第2チェックポイント。リラックスできているか。

力みなくキック動作ができているかどうか。下駄キック(力んで、もしくは柔軟性が乏しく足首が曲がっている)や棒キック(ヒザ、足首は伸びているが、力みで脚が硬直して全くしなりがないキック)や痙攣キック(力んでヒザ関節中心のけり幅が狭いキック、ヒザが伸びきる前にすぐにヒザを曲げようとする)になっていないかチェックしてみてください。特にヒザから下は脱力している、反動で勝手に動くという感覚が重要です。

キックの力の発生源は股関節(脚の付け根)ですが、水に力を伝える部分は先っぽの平らな部分(足の甲や裏)になります。リラックスしている状態で足の甲の平らなところに垂直に水が当たれば、足首は勝手にしなり、水を後ろに送り出すことができ推進力のあるキックになります。

また親指と親指が重なり合うくらい少し内股にする(つま先を内側に向ける)のがコツです。解剖学上、つま先を真っすぐに伸ばすよりつま先を少し内側に向けたほうが足首がしなること、平らな部分(足の甲)に水を垂直にぶつける(水をとらえる)ことができるからです。

短くてカカトのないフィンで、水をとらえる感覚を

この水をとらえる感覚、足の甲や裏に水が当たっている感覚、足首がしなる感覚はフィンを使った練習をするとわかりやすいと思います。

ポイントはフィンを水中で動かすこと、水面からフィンが出ないこと。フィンをはくと水をとらえる面積が増えるため、水が重く感じられますが力まないことです。ゆっくりでもいいので脱力してワンキックごとにヒザを延ばしきるように意識してやってみてください。そうすれば足の甲に水がぶつかり足首がしなる感覚がわかりやすいと思います。

フィンはいろいろなメーカーが出していますがおススメのフィンは短くて、カカトがなく、左右非対称な(親指側と小指側がある)フィンがいいと思います(上の写真参照)。

フィンが長過ぎると足首が曲がっていても(しならなくても)長いフィンがしなりスピードが出るので正しいキックができているかどうかの判断が初心者には難しい。カカトがないタイプのほうが足首がしなる感じがつかみやすい。右足用と左足用に分かれているほうが長時間使用してもフィン擦れが起こりにくいからです。

板キックのときはビート板を「持たない」

下半身だけではありません。初心者の指導現場では板キックをするとき、あえてビート板の前を持たせないでビート板の上に手のひらを置いてやらせることがあります。そのほうが水の上に乗る感覚がつかみやすい。

また、手先は人間の身体の中でもとても器用な部分なので、力んでいるとバランスをとろうとして、よく手の指が曲がったり、指先が動いたり、ビート板の横を持ったりします。上から見て力んでいるかどうかがわかりやすいのです。

力みがとれない場合は、大げさにメリハリをつけてみる。

また子どもの指導ではなぞり練習(コーチが補助をしながら正しい動作を身につけさせる練習)をよくやりますが、その補助で子どもの脚を持つと、力んでいるかどうかがよくわかります。力んでいる子はカチコチ、冷凍マグロのようです。

ではどうすればリラックスできるか?

指導現場でも永遠の課題というかリラックスさせること一番難しいのですが、まずはリラックスできていない原因を探ります。ほとんど泳げない初心者なのに足がつかない水深で恐怖心を与える環境で練習をやらせていないだろうか。

心理的な不安や苦しさを取り除いた環境を作ってあげてキックの練習をする。例えば水深が浅いところで心理的な不安を少しでも取り除いて練習する。バランスがとりやすいプールサイドで腰かけキック、壁キックをやってから板キックをやってみる。暖かいところでストレッチをして筋肉をすこしでも緩めてから練習してみるなどです。

プールサイドでの腰かけキックなら、恐怖感もなく、リラックスしてキック動作に集中できる

また、男性陣に多いのがタイムを気にし過ぎたり、みんなから遅れないように速く泳ごうとしたりして力みにつながっているケース。

そういうときは思いっきり力んでキックして、その後リラックスしてキックをしてみるなどスピードの強弱をつけながらキック練習をしてみましょう。力の入れる局面と、抜く局面、力の発生源(股関節)と力を水に伝える部分(足の甲や裏)をしっかり区別する。少し大げさにメリハリとつけてやってみましょう。力と抜く感じがわかりやすい練習方法のひとつです。

正しくキックできてるかセルフチェック

自分ははたしてちゃんとキック動作ができているかどうか判断するには指導者に見てもらうのが一番手っ取り早いのですが、簡単なテストもいくつかあります。

プールの壁に(水面のすぐ下で)手のひらをペッタとつけたまま10秒間ぐらいキックで壁を押し続けることができるかどうか。指を曲げてプールサイドにつかまったり、途中で手のひらが壁から離れたりしてはいけません。常に推進力があるキックを打ち続けることができれば手のひらが離れることはありません。

身体の向きを変えてキック(例えば、おへそを横に向けたサイドキック上向きのキックなど)してもまっすぐキックで進むことができるか、スピードが落ちることはないか。苦手な方向のキックがある人は、何かしらキック動作に問題があると考えてもらっていいと思います。

上手な人はどの向きでも真っすぐ進むし、スピードもほとんど変わりません。足の甲と裏の両面を使ってキックできているかどうか、けり戻し動作でカカトとお尻が近づいてブレーキ動作になっていいないか確認してみてください。

■著者プロフィール
経澤耕達(つねざわ・こうたつ)
宇都宮村上塾 専任コーチ。日本体育協会公認トライアスロン指導者 筑波大学大学院修士課程体育研究科コーチ学専攻修了 16年 岩手国体 出場 77位

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