仕事で国内外を飛び回る。家庭には妻と4人の子どもたち。環境保全や子どもの育成に取り組むNPO法人の代表でもある。
多忙な日々だからこそ、限られた時間の中でトライアスロンに全力で取り組み、自分を進化させていく楽しさがある。そんなチームVAAMのメンバー前田直昭さんに、生活のバランスを充実させる極意と、トライアスロンライフの楽しみ方を訊いた。
1976年千葉・木更津生まれ。神奈川・小田原在住。環境プラントメーカーのエンジニア、経営コンサルタントを経て8年前から化学メーカーでものづくりの革新に取り組む。京都を拠点に国内外の製造拠点を飛び回る。2000年に立ち上げたNPO「環境応援団いっぽ」の代表として海川の清掃や子どもの環境教育などにも取り組んでいる。
【主なスポーツ&トライアスロン歴】
大学時代はモトクロス。ほかにBMX、サーフィン、ゴルフなど。
2012年 出張先の北海道でシューズを購入してジョギング開始
2013年 大磯ファミリートライアスロンでデビュー
2014年 館山トライアスロンで51.5デビュー、他にアクアスロンなどに出場
2015年 館山わかしおトライアスロンなどショートとハーフマラソンに出場
2016年 チームVAAM1期生としてアイアンマン70.3セントレアで初ミドル。他にショート、フルマラソン、オープンウォータースイム(弓ヶ浜国際オープンウォータースイム3㎞総合優勝)などに出場
2017年 アイアンマン70.3セントレア。他にショート、アクアスロン、ハーフマラソン、マウンテンマラソンに出場
2018年 宮古島大会で初ロング。アイアンマン70.3セントレア出場。
【普段のトレーニング】
月間トレーニング量の目安は
時間で30〜40時間
距離で400〜600㎞(スイム12㎞/バイク300㎞/ラン150㎞)
すべてが自分に返ってくる明快さ、色々な人との出会いがトライアスロンの魅力。
--まずトライアスロンを始めるまでのスポーツ歴と、トライアスロンを始めたきっかけを教えてください。
高校の終わり頃から大学までモトクロスに熱中していましたが、特に体力を使う競技スポーツはやっていません。サーフィンやゴルフ、BMXなど遊びとしてやってきた程度です。
トライアスロンを始めたきっかけは、子どものパパ友に誘われて自宅に近い大磯ファミリートライアスロンに出たことです。ちょうど太りすぎ解消のためにジョギングを始めていましたし、サーフィンで海に入るのは慣れていました。バイクはたまたまモトクロスチームの先輩から譲り受けたロードバイクが自宅にあったんです。
トライアスロンには「ハードなスポーツ」というイメージを抱いていましたが、やってみたらとても面白くて、そこからバイクとスイムも少しトレーニングするようになり、その翌年から51.5の大会に出るようになりました。でも、最初の2年くらいは3種目合計で月間50㎞を目標にしていましたから、練習量は少なかったですね。今みたいに真剣に取り組みだしたのは4年目、2016年にセントレアのアイアンマン70.3に出た頃からです。
--トライアスロンの魅力は何ですか?
言い訳がきかない明快さ、潔さですね。やったことが成果になってあらわれるし、手を抜けばそれも結果に出る。仕事は色々な事情でやろうとして実現できないことも多いですが、トライアスロンはすべて自分次第。どんな結果が出ても自己責任。だから謙虚になるし、愚痴もなくなる。
自分で計画を立てて実行、検証しながら自分の可能性にチャレンジしていくところは、仕事にも通じます。単なるストレス解消というだけでは終わらないものがトライアスロンにはあると思います。
それから、バイクショップやレース仲間、大会の会場や町での出会いなど、いろんな人と出会えることも魅力です。4月に出た宮古島大会では、カフェで地元の人たちとの交流を楽しみました。
--自宅は小田原、仕事の拠点は京都。国内外の出張も多いようですが、どんなトレーニングをしているんですか?
現在単身赴任中で京都駅の近くに住んでいて、平日は京都で仕事、または地方や海外へ出張。週末と祝日は小田原に戻れるときもあります。トレーニングはそのときいる場所で、できることをやる。平日の夜は仕事で関わる人たちと食事会/飲み会になることが多いので、トレーニングはなるべく早朝にやります。たとえば京都では明け方の鴨川沿いをバイクで北上して貴船神社往復する40㎞バイクに短いラン、あるいは10〜20㎞ラン。出張先はランが主体です。スイムは公営プールを利用しています。
仕事も趣味も社会活動も家族サービスも、すべて全力で取り組むから楽しい
--3種目練習するトライアスロンと仕事の両立は大変ではないですか?
大変と感じたことはないですね。他に環境関係の活動を手がけるNPOなのですが、仕事もトライアスロンもすべてすごく好きですし、どれも全力で取り組むから楽しい。
そもそも仕事とプライベートを分けないというのが僕のスタイルなんです。すべて前田直昭として取り組む。自分と向き合いながら、出てくる課題に取り組むことで、前向きになれるし、進化できる。
好きな言葉のひとつに「楽しいことは楽じゃない、楽なことは楽しいとはかぎらない」というのがあるんですが、仕事も家族も趣味も社会活動もみんな自分の中でつながっていて、それぞれ進化の工夫を続けることで高めあえると思います。
僕は特に優れた技能・能力があるわけではありませんが、誰でもできることを徹底してやり続けるのは得意なんです。一つひとつは誰でもできることですが、「仕事」「家族」「NPO」「トライアスロン」というバランスを最適化しながら、いろんなことを楽しく追求していけるところに僕の特性があるのかもしれません。
--忙しい中で自分を進化させていくために、どんな工夫をしていますか?
仕事のための勉強でもトライアスロンのトレーニングでも、スキマ時間を活用し、短い時間でもとにかくやるようにしています。15分でも時間があったらやる。最近、トライアスロンのオリンピアンとじっくりお話しする機会があったんですが、彼は「たとえばバイク練習の後に、5分でもいいから時間があったらランニングをしたほうがいい」と言っていました。
やるべきことは常にたくさんあるので、ダイアリーに書いて整理するようにしています。自分の生活の全体を見渡すために、仕事のこともトライアスロンのことも家族のことも同じダイアリーに書く。できなかったことやその反省も書く。書くことで自分を客観的に見ることができ、自分の弱さを知り、謙虚になれます。
僕は生まれつき前向きでエネルギッシュな人間ですが、そうでない人も世の中にはたくさんいますし、中には僕のポジティブさをプレッシャーと感じる人もいます。自分の弱さを知ることで、謙虚になれますし、人に対してもプレッシャーにならない励まし方ができるようになります。
週末のトレーニングは朝8時までに終えて、あとは家族サービス
--家族サービスの時間はどのように確保していますか?
平日家に帰らない分、週末くらいは家族と過ごさないと、夫として父親として失格です。午前中トレーニングなんて贅沢は言えないから、トレーニングは早朝からスタートして8時には家に戻り、妻と過ごします。
子どもたちは大学生・高校生ですから、一緒に遊ぶことはそれほどありませんが、運動会などのイベントにはなるべく参加します。バイクやランのトレーニングを兼ねて彼らのスポーツの試合を応援しに、神奈川県内はもちろん千葉や静岡くらいまで出かけたりもします。子どもの仲間や親御さんたちにはバイクウエアやランニングウエアで現れる父親として有名で、子どもたちはちょっと恥ずかしがっていますが(笑)
--奥様は理解してくれていますか?
オープンウォータースイムの大会など、近くのイベントには応援に来てくれます。でもトライアスロンのために家族サービスがおろそかになるのは許してくれません。日中どうしてもトレーニングしたいときは彼女との交渉が必要です。30分だけトレーニングの許可が出たらその時間を守り、おかげでいいタイムで走れたりする。たまに彼女に買い物などの用事を頼まれたら、それを口実に出かけて15㎞ランとか40㎞バイクとか練習をしてしまい、帰って怒られることもあります(笑)妻も半分あきれて笑っています。
まともにぶつかったら身も蓋もないことが、そういうユーモアの要素を入れていくことで、なんとか許されている。バイクなど高い買い物をしたり、宮古島に4日間も出かけたり、トライアスロンには時間もお金もかかりますから、いかに妻の理解を得るかはとても重要です。
トレーニングのがんばりを支えてくれるVAAMから、チームメイトとのつながりも生まれてきた
--VAAMはどんなタイミングで飲んでいますか?
スーパーヴァームを朝のトレーニングのときに飲みます。ドリンクタイプは水分もある程度とれますし、空腹時の体脂肪が燃えやすいときに運動するのでVAAMを味方にすることが習慣になりました。
スーパーヴァームゼリーは仕事終わりのスイムの前に飲むと、小腹が満たされてがんばれる。顆粒タイプは軽量でコンパクトですから、レース中だけでなく、出張に持っていくのに便利です。
--VAAMを取り入れて気づいたことはありますか?
トレーニングで追い込むときや長い距離をやるときにVAAMを取り入れているのですが、しっかりがんばれるという実感、信頼感があります。だから2016年のチームVAAMで試してから2年間、次第に自分で購入して飲む量が増えてきました。
最近はオフに体重が3〜4㎏増えても、シーズンインまでの強化期トレーニングで確実にベスト体重まで落とすことができるようになりました。体重のコントロールがうまくなってきていると感じます。
セントレアでもショートの大会でもタイムが伸びていますし、今年は宮古島で初めてロングも完走しました。ロングではエネルギー補給が重要ですが、胃腸の関係もあって食べる量には限界がありますから、今まで以上に体内のエネルギー源である体脂肪をエネルギーとして使えるかが重要なテーマになってきますね。
--今年は3回目のチームVAAMですが、このプロジェクトは前田さんにとってどういう存在ですか?
1年間取り組んできた成果をチームの仲間に見てもらえる発表会みたいなものですね。セントレアのレースで再会し、ゴール後にレース中のことをあれこれ語り合うことで、次の目標に向けてがんばろうという気持ちになれる。
セントレア以外のレースでメンバーに会うこともありますが、これでまた仲間意識が強くなります。この春にはメンバーが自主的に集まって食事会を開き、情報交換しましたが、仲間がいる安心感と刺激で、普段のトレーニングがよりがんばれるのがチームの良いところだと思います。
--最後にこれからの目標を聞かせてください。
仕事も家庭もNPOもトライアスロンも僕にとっては大好きで大切なものですから、このバランスを大切にしながら、これからもそれぞれのベストを追求していきたいですね。
1日がかりのロングライドとか、海外のアイアンマンシリーズ参戦とか、今はやりたくてもできないことは色々ありますが、いずれもっと時間やお金に余裕ができたら、妻と海外に出かけてトライアスロンの大会と旅行を楽しみたいと考えています。
前田さんの2018セントレア
完走後のコメント
水分・エネルギーともに補給に成功。課題は「ランに足を残せる乗り方」
目標タイムからすると満足度は70点。バイクでの風に足が負けて、ランに足を残せませんでした。今年の宮古島大会(4月)で、ランに足を残すという課題を見つけていたんですけれど、悔しいですね。できることは精一杯やったんですけど。
ただエネルギー切れはなかったですね。水分・エネルギーともに補給はうまくいったと思います。
補給は、スイム前にスーパーヴァーム。バイクは、DHバーのボトルにスーパーヴァームを水で割ったもの。エイドでヴァームウォーターをとりました。
ランは、落ち着いてからザバスの補給食(ザバスピットイン エネルギージェル)を。ランは、エイドでヴァームウォーター、そして塩タブとスポーツようかんを食べました。
自分は、時間をとるトレーニングがなかなかできないので、補給の正しいシミュレーションはできていないんです。ただ、日ごろからVAAMを摂りながら、どの辺でエネルギー切れが起こるかはチェックしていました。
今後は、目指しているフルのアイアンマンに向けてバイクのフィッティングから見直し、距離のあるブリックトレーニング(※バイク/ランなどの複数種目練習)を積みたいと思います。アイアンマンでは、粘りきることが大事でしょうね。
前田さんの決戦(レース)前日ご飯
早朝:セントレアに向けて発つ前にヨーグルトとバナナ
朝食:セントレア空港に着いてから9時前にスープボウル(カレーライスに見えますが、トマトスープとトマトライス)
昼食:カレーうどん
夕食:海老フライ定食