GERONIMO大塚のトラモノ批評 #002
サーヴェロの新型発表に見る、モデルチェンジへの期待と課題 《前編》
文・写真提供=大塚修孝(Triathlon GEROINMO/トライアスロンMONOジャーナリスト)
写真=小野口健太
既報(https://lumina-magazine.com/archives/news/12823)のとおり、今春、2019年MONO情報としては、最大級とも言えるサーヴェロの新型発表があった。
3月米国アリゾナでのメディアローンチを経て、New P5、P3Xと立て続けに発表があり、各商品の情報については、様々なメディアで同様の情報が出てきた。
ここでは、今回の一連の「モデルチェンジ」全体への期待と課題について考えてみよう。
【新型リリースについて】
毎年、いくつものメーカーが、何らかの新モデルを発表している。ただそれだけのことではあるのだが、「トライアスロンモデル」に限って言うと、そのように次々と新モデルを打ち出してくるメーカーはごく少ない。
トライアスロンモデルやエアロロードは、「コンセプトモデル」でもあり、そのメーカーの技術レベルを表すひとつの指標と言っても過言ではない。ましてやアイアンマンNo.1ブランド「サーヴェロ」からの新たな発表となれば、トラMONOとして、大きなニュースであり、トレンドリーダーとして、その動きの反響は大きいだけに注目が集まる。
【サーヴェロについて】
サーヴェロ――トライアスロンでは、もはや説明不要のメーカーだろう。最高峰アイアンマンにおいて、2005年から昨年まで14年連続トップシェア(使用率1位)という快挙を成し遂げている。
その14年にわたるNo1アイアンマンブランドとしての歴史は、大きく3つに分けられる。
② 2012年リリースの「初代P5」
③ そして、2016年リリースの「P5X」
――といった具合だ。
「初代P3」(写真下)は、その地位を決定付けたモデルで随所のコダワリは、他社への影響が大きかった。
「初代P5」(写真下)は、P4をベースに、UCI対応も可能にしつつ、初めて「トライアスロン専用」にこだわったエアロダイナミクスを追求した。
そして、P5X(写真下)では、エイジユーザーからのフィードバックも多く取り入れ、ストレージやユーザビリティへの追求をした。
【アイアンマンで求められるバイクとは?】
現在、「トライアスロンバイク」と言えば、昨年(2018年)のスペシャライズドSHIV、フェルトIADiscのほか、2016年のサーヴェロP5X、BMC TM01など、アイアンマン世界選手権(KONA)という舞台で「世界同時発表」を行っているメーカーは少なくない。
また、公式なメディアローンチは行わないメーカーも、多くの場合、サポートするプロ選手に最新モデルを実戦投入させるのは、またKONAの舞台である。
つまり、「トライアスロンバイク」は、KONAに象徴されるアイアンマンというレース、コースでの使用を最大の目的とし、各メーカー開発にあたっている、「IRONMAN BIKE」なのだ。
【トレンドと異形vsスタンダード】
トライアスロンバイクのモデルチェンジは、毎年行われているわけではない。初代P3は7年半、二代目SHIVは7年、TM01は6年というロングセラーモデルだった。現行のIAも昨年ディスクブレーキモデルが追加されたが、やはり6年目のロングセラー。
完成度が高く、人気があれば、当然、長く販売されることもあるのだが、それを差し引いても、トライアスロンバイクのモデルチェンジのタイミングは難しい。
トライアスロンバイクの「原型」となった初代P3に始まり、斬新なフューエルシステムを搭載した二代目SHIV、また、ヴェンタムやダイアモンドなどの「異形」も登場する中、各メーカーは、その開発の難しさと方向性に迷った。
また一方で、「ディスクブレーキ」が標準化に向かう流れもあり、その点でモデルチェンジを余儀なくされている感もある。
>>>サーヴェロの新型発表に見る、モデルチェンジへの期待と課題 《後編》に続く
■著者プロフィール
大塚修孝(おおつか・のぶたか)
本誌連載などでおなじみのトライ アスロン「モノ」ジャーナリスト。トライアスロンに関わり28 年。特に、アイアンマン世界選手権は、96年から取材を続けて今年で24年目となる。レース出場者のバイク全台を自ら撮影して調査する「GERONIMO COUNT」など圧倒的なデータ収集力と緻密なデータ分析には定評がある。 Triathlon GERONIMO www.triathlon-geronimo.com