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フロデノが有終の美飾るか?IRONMAN世界選プレビュー

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山村 勇騎

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アイアンマン世界選手権 ニース

今回の世界選が引退レースとなる北京金メダリスト&3×アイアンマン世界王者ヤン・フロデノ。写真は8月のPTO USオープンでブルンメンフェルトらを下して勝利を上げた際のもの © Professional Triathletes Organisation

2023年アイアンマン世界選手権ニース・フランス
プロ男子プレビュー

新たな地での挑戦。

聖地であるハワイ(コナ)でのアイアンマン世界選手権が45周年を迎える中、世界のトライアスロン人口とアイアンマンレース増加の流れを受け、今後4年間は、世界選の開催地がローテーション制度となり男女別に分かれる。

今年は、男子がフランス・ニース(9/10)、女子はハワイ・コナ(10/14)でそれぞれ開催。世界中に賛否両論渦巻く中、新たな試みが始まる。

アイアンマン世界選手権 ニース

レース前々日に開催されたプロ選手の記者会見。フロデノ、ランゲら元王者とサム・レイドロウら新鋭が居並ぶ、IM世界イチ決定戦らしい豪華な顔ぶれ ©Donald Miralle for IRONMAN

昨年TOP5のうち3人が欠場
王座奪還か、新星の台頭か

フランスのニースでの世界選手権開催は、2019年の70.3世界選以来だが、通常シリーズ戦のひとつとしてアイアンマン・フランス(ニース)が開催されており、今回の世界選でも同じコースを使う。

1周回、山岳コースが待つバイクレグは、上りでのパワーと、下りのテクニカルなスキルが、勝敗を分ける大きなポイントとなる。

アイアンマン史上最もタフなコースのひとつであり、ペース配分を怠れば、後半のバイクやランパートに、大きく影響してくることは間違いない。

アイアンマン世界選手権 ニース

アイアンマン史上最もタフな山岳コースと言われるバイクコース ©Donald Miralle for IRONMAN

ランは、ほぼフラットなコースで、2時間半切りの可能性もある高速コースだが、4周回で後半かなり混み合う分、自身のペースを上手くキープし、レースに集中できるか、メンタル面の強さが求められる。

プロカテゴリーで出場する選手の顔ぶれをあらためて見ると、近年アイアンマン世界王座を分け合ってきたノルウェー勢のクリスティアン・ブルンメンフェルト(2021年世界王者、2022年世界選3位)とグスタフ・イデン(2022年世界王者)、そして2022年世界選4位のマックス・ニューマンと、昨年のトップ5のうち3人が欠場している。

ヤン・フロデノら過去に2度以上世界を制した元王者たちが、再度王者へと返り咲くのか。

それとも、次の時代を背負って立つ20代の若手や、長年経験を積んできたものの優勝経験のなかったベテラン勢が、悲願の世界王座を奪うのか。

注目の一戦が今週末(9/10・日曜日)、開幕する。

アイアンマン世界選手権 ニース

©Donald Miralle for IRONMAN

プロ男子
注目選手

アイアンマン世界選手権 ニース

©Donald Miralle for IRONMAN

Jan Frodeno
ヤン・フロデノ

■出身:ドイツ
■年齢:42歳
■PTO世界ランキング:4位
■キャリア:北京五輪金メダル、2015・2016、2019年アイアンマン世界王者

20年以上トライアスロン界で活躍してきたフロデノが、今シーズン限りの引退を発表。このニースでプロトライアスリートとしての闘いに、終止符を打つ。

トライアスロン界きってのカリスマアスリートで、五輪金メダルとアイアンマンの世界王座の両方を、初めて手にしたレジェンド。

ここ数年は、ずっと足の故障に悩まされたシーズンを送り、過去2年ほど世界選を欠場していたが、今年は万全の状態で最後の世界選に挑む。

完全復活となった今シーズンは、8月のPTO US Openで、強豪が集う中、元王者の貫禄を見せ、PTOシリーズ初優勝を果たしている。

これまでロングディスタンスでは、3種目ともに、弱点という弱点がないパーフェクトなレースを見せてきた。

この世界選手権でレジェンドらしいパフォーマンスを見せ、再度世界王者に返り咲いての引退という、完璧なシナリオを完結させてほしい。

アイアンマン世界選手権 ニース

©Donald Miralle for IRONMAN

Patrik Lange
パトリック・ランゲ

■出身:ドイツ
■年齢:37歳
■PTOランキング:12位
■キャリア:2017・2018年アイアンマン世界王者

2×世界王者だが、ここ数年は、故障などに悩まされ、元世界王者としての存在感が少し薄れていた。

しかし、今シーズンはチャレンジ・ロートで2時間30分台の素晴らしいランを見せ、2位入賞。

多くのウーバーバイカー(バイク強者)が集う中、唯一の不安要素となる弱点のバイクを、どこまで強化してきているかが王座奪還への鍵となってくる。

ランスタートまでに先頭との差を5分以内に収められれば、これまで培ってきた経験とタフなメンタリティー、2時間30分切りが期待できる得意のランを武器に、再び王座に近づいてくるだろう。

昨年のコナでグスタフ・イデンに次ぐ2位に入り世界を驚かせた新星サム・レイドロウ(写真右)©Kenta Onoguchi

Sam Laidlow
サム・レイドロウ

■出身:フランス
■年齢:24歳
■PTO世界ランキング:10位
■キャリア:2022年アイアンマン世界選2位

次世代のロングトライアスロン界を担う新星のひとり。昨年の世界選では、初出場ながらダークホースとして2位に入賞している。

ジュニア時代からトライアスロンを始め、父親が長年のコーチとして、二人三脚で登り詰めてきた。昨年のコナでは、バイクコースレコード(4時間4分)を更新し、破格の剛脚ぶりを証明した。

残す課題は、長年大きな壁となっているランだ。今年出場したレースでも、ランで痙攣に悩まされリタイアすることが多かった。

この問題さえクリアできていれば、得意のスイムとバイクで差をつけ、昨年の世界選同様、ランで逃げ切るパターンに持ち込んでの勝利も見えてくる。

アイアンマン世界選手権 ニース

記者会見前にフロデノと談笑するディトレブ(写真右) ©Donald Miralle for IRONMAN

Magnus Ditrev
マグナス・ディトレブ

■出身:デンマーク
■年齢:25歳
■PTOランキング:2位
■キャリア:2023年チャレンジ・ロート優勝、2022年70.3世界選3位

今年PTOシリーズレースを通して、もっとも成長を見せてきた若手。ここ2年間で、ウーバーバイカーとして頭角を現し、ベテラン勢にも引けを取らない存在感を表してきた。

チャレンジ・ロートでは、ロングのバイク180.2㎞で世界歴代2位にあたる7時間24分というタイムでフィニッシュ(世界記録はブルンメンフェルトの7時間21分)。

これまで弱点としてきたスイムも強化し、バイクで先頭集団に追いつくほどのバイクスピードをもつ。

得意とするバイクで先頭集団から逃げきれる展開にもっていき、ランで粘れれば、優勝も見えてくる。

同じく記者会見前、写真左がスキッパー(右はIMアジア・パシフィック王者としてニースに臨むブレーデン・カリー)©Donald Miralle for IRONMAN

Joe Skipper
ジョー・スキッパー

■出身:イギリス
■年齢:35歳
■PTO世界ランキング:14位
■キャリア:2022年世界選5位

これまで多くのアイアンマンレースで優勝を重ね、常に優勝候補として注目されてきた。毎年アイアンマンを、3レース以上連戦するというハードでタフなシーズンを組みながらも、これまでス9つのアイアンマンタイトルを獲得してきた。

アイアンマンディスタンスで7時間切りを目指す「SUB7プロジェクト」では、アリスター・ブラウンリーが故障で出場困難になった際、代わりに出場し、6時間47分というタイムで見事7時間切りの目標を達成している。

弱点であるスイムでの遅れをカバーできるバイクレグは、ジュニア時代、ロードレーサーとして活動した経験の賜物。バイク後半戦で、その実力を見せてくるだろう。

ベテランとしての経験とタフなメンタルを生かし、ランで優勝に絡む争いにもってくれば、初タイトル獲得も近くなるだろう。

2023アイアンマン世界選
男子トップ3予想

1 ヤン・フロデノ
2 マグナス・ディトレブ
3 ジョー・スキッパー

▼レース前記者会見の模様はコチラ

▼レース当日のLive配信はコチラでチェック!

■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)
アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンのオフィシャルレースメカニックとして、全米のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。アイアンマン・シリーズ戦などでメカニックとしても活躍している。

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