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ブルンメンフェルト連覇は? 70.3世界選プレビュー

投稿日:2023年8月25日 更新日:


山村 勇騎

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アイアンマン70.3

レース前のプロ選手記者会見に臨んだ男女優勝候補ニブ(写真左から2番目)とブルンメンフェルト(同3番目)©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

2023年アイアンマン70.3世界選手権プレビュー

IM世界選に向けフロデノら不在の中
連覇狙うブルンメンフェルト&ニブ

アイアンマン70.3(以下70.3)世界選手権開催地のローテーション制が始まり、約10年が経つ。今年のレース(女子8月26日、男子 同27日)の開催地は、北欧フィンランドのラハティ(首都ヘルシンキから北に1時間の位置)。

男女合わせて110人近いプロ選手が出場し、現王者のクリスティアン・ブルンメンフェルトとテイラー・ニブが連覇を狙いにくる。

しかし、1週間前にシンガポールで開催されるPTOアジアオープンもあり、前世界王者(アンネ・ハウグ、ルーシー・チャールズバークレー、ヤン・フロデノ)やPTOトップランカー(女子1位アシュリー・ジェントル、男子2位マグナス・ディトレブ、PTOヨーロッパオープン覇者男子4位マックス・ニューマン)は、アイアンマン世界選(男子9月ニース/女子10月ハワイ)にフォーカスし、70.3世界選出場を見送っている。

アイアンマン70.3 世界選手権

©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

地の利ある欧州勢がそろう
平坦コースでの「高速レース」

天候も涼しく過ごしやすい気候となり、選手にとってはパーフェクトなレース環境となりそうな、今回の70.3世界イチ決定戦。

バイクコースも緩やかなアップダウンがあるが、難易度は低い。ランも、周回始めに上りがあるが、ほぼフラットなコースで、高速レースになると予想される。

ほとんどのプロ選手がEU(欧州)出身という観点から、気候に馴染んでいる上に、遠征でのストレスが少ないので、EU勢にとって、そこが強みとなる。

女子のレースは8月26日、男子は同27日、それぞれの戦いの火ぶたは、日本時間の午後1時(現地午前7時)に切って落とされる。

©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

2023IM70.3世界選
注目選手
プロ男子

驚異の連戦続く、ブルンメンフェルト
連覇に向けた「不安要素」とは?

アイアンマン70.3

©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

Kristian Blummenfelt
クリスティアン・ブルンメンフェルト

■出身:ノルウェー
■年齢:29歳
■PTO世界ランキング:1位
■キャリア:現70.3世界王者(2022年)、東京五輪金メダル、2021年アイアンマン世界選手権優勝(セントジョージ大会)

オリンピックでの金メダル、IM&70.3世界王座など、数々の世界タイトルを総なめにしてきたブルンメンフェルトだが、PTOシリーズレースでのタイトル獲得を目指した今季は、勝星を満たせず、悔しいシーズンを過ごしてきた。

これまで、何度もレース中に痙攣に悩ませられるシーンがあり、それをどうクリアできるか。

さらに今回は、世界選1週間前にパリでの五輪テストイベントレースに出場、その2日後のPTOアジアオープンに出場するというハードスケジュール。身体への負担がレースへどう影響するか、これが不安要素となる。

それらのフィジカルな問題をクリアできれば、現世界王者として100%のパフォーマンス発揮し、連覇は確実だ。

アイアンマン70.3

©Kenta Onoguchi

Gustav Iden
グスタフ・イデン

■出身:ノルウェー
■年齢:27歳
■PTO世界ランキング:121位
■キャリア:現アイアンマン世界王者、アイアンマン70.3世界王者(2019・2021年)、2020年東京五輪8位

昨年、初めて出場したアイアンマン世界選をコースレコードで優勝。過去に2度70.3世界王者に輝いている。

ショートでも活躍する同郷ブルンメンフェルトのトレーニングパートナー。3種目とも穴がないオールラウンドなパフォーマンスが強みだが、中でも一番の見どころは、現在コナのランコースレコード(2時間36分)をもつ、高速ランだ。

今年は、ショート以外のレースに出場する機会はなく、2024年のパリ五輪出場にフォーカスしたシーズンを送ってきた。WTCレースで自身のパフォーマンスを上手く発揮できない中、数カ月前に実母が亡くなったこともあり、メンタル面の影響が心配される。

パリ五輪のテストイベントには欠場を決意し、この70.3世界選に注力。世界タイトル奪還を狙う。

難局を乗り越え、現在ロング界で世界最強であることを再度証明してもらいたい。

アイアンマン70.3 世界選手権

©World Triathlon

Jason West
ジェイソン・ウェスト

■出身:アメリカ
■年齢:30歳
■PTO世界ランキング:7位
■キャリア:PTOヨーロッパオープン5位、PTO米国オープン2位

70.3レースやPTOレースで、素晴らしいランナーアップを見せた、今年もっとも熱い選手だ。

昨年まで大きな活躍はなかったものの、弱点であるスイムとバイクを改善し、最大の強みであるランで、順位を徐々に上げるレースを展開。

常にランラップ1位の速さを誇り、PTO米国オープンでは、ランで20位から2位まで順位を上げ、他の選手よりも4分以上速い走りを見せた。

バイク終わりまで、うまく上位をキープできれば、得意のランで優勝もあり得る危険な存在だ。

アイアンマン70.3 世界選手権

レース前のプロ選手記者会見に臨んだサム・ロング(写真右端)©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

Sam Long
サム・ロング

■出身:アメリカ
■年齢:27歳
■PTO世界ランキング:3位
■キャリア:2021年70.3世界選2位

もうベテランの域に入ってきた次世代のアメリカンヒーロー。今年の70.3レースでは3勝し、目標としてきた70.3世界タイトルを狙う。ソーシャルメディアでも人気の選手で、 レースでは、YoYoYoという掛け声で、オーディエンスを常に盛り上げる。

一番の強みは、弱点であるスイムでのロスをカバーできるバイクレグ。現在PTOバイクランキング1位で、常にバイクラップを更新するパフォーマンスを見せる。

注目されるバイクの強さだけではなく、その後のランも他を寄せつけない速さを見せる。今年こそは、世界タイトル獲得に一番近い選手として要注意だ。

2023IM70.3世界選
男子トップ3予想

1 グスタフ・イデン
2 ジェイソン・ウェスト
3  サム・ロング

2023IM70.3世界選
注目選手
プロ女子

いち早くパリ五輪出場も決めた
ニブの「70.3連覇シナリオ」

アイアンマン70.3 世界選手権

©Kenta Onoguchi

Taylor Knibb
テイラー・ニブ

■出身:アメリカ
■年齢:25歳
■PTO世界ランキング:2位
■キャリア:現70.3世界王者(2022年)、2023年PTO米国オープン優勝

2021年からミドルにも参戦し始め、マルチにショートでも活躍する若手のオリンピアンで、現70.3世界王者。先日のパリ五輪テストイベントでは5位に入り五輪出場権を得ている。

最大の強みは、バイクレグ。ウーバーバイカーと呼ばれてきたリフに、匹敵する実力をもっている。

オリンピック戦線仕込みの高速スイムで、先頭集団で上がり、バイクで大幅な差をつけ、ランでそのまま逃げ切るレース展開を好む。

過去の70.3レースでも、バイクで後続に大差をつけ、毎回バイクラップを更新してきた。

今回は、五輪テストイベントとPTOアジアオープン出場後の世界選参戦という、プロ男子のブルンメンフェルトと同じ過密スケジュールだが、昨年同様の展開へもちこめれば、2連覇は間違いない。

アイアンマン70.3 世界選手権

ラハティ現地でリラックスした表情を見せるリフ(写真左)©IRONMAN_ Ville Kashkivirta

Daneila Ryf
ダニエラ・リフ

■出身:スイス
■年齢:36歳
■PTO世界ランキング:5位
■キャリア:5度アイアンマン世界王者(2015~2018年、2021年)、5×アイアンマン70.3世界王者(2014・2015・2017~2019年)

2013年のロング転向以降、ロング界の絶対王者として君臨。セントジョージ世界戦で、5度目の世界王者となった。

圧倒的なバイクパフォーマンスで、どれだけ差を広げられるかが、リフの優勝の分かれ目となる。

昨シーズンは、アイアンマン世界選(セントジョージ大会)優勝後も、アイアンマン世界選(コナ)で8位という悔しい結果に終わる。今年も、初戦となるPTOヨーロッパオープンでDNFと不調が続いているように見えた。

しかし、地元の70.3レースで優勝後、チャッレンジロートでコースレコードを更新するなど、ネガティブな結果を払拭するパフォーマンスを見せた。

今年から、過去に何度も世界王者へと導いた名伯楽ブレット・サットンを再度コーチに迎え、ドリームチームを復活。70.3世界タイトル奪還できるか、注目が集まる。

アイアンマン70.3 世界選手権

今年6月にイビサ島で開催されたデュアスロン世界選を制しているパラント(写真中央)。この大会では今回70.3世界選に初参戦する上田藍(3位)が同じ表彰台に上がっている ©World Triathlon

Emma Pallant
エマ・パラント

■出身:イギリス
■年齢:34歳
■PTO世界ランキング:9位
■キャリア:2018年70.3世界2位、2022年70.3世界3位、現デュアスロン世界王者

元トラックランナーとして五輪トライアルにも出場経験もある高速ランナーだ。

過去に、2度の70.3世界戦入賞経験もあり、トライアスロンだけではなく、デュアスロンでも、何度も世界王者に輝いた。

弱点であるスイムを向上し、上手くバイクで順位をキープできれば、ハーフ1時間20分を余裕で切るランで、優勝も確実に見えてくる。

暑さに弱いイメージがあるが、フィンランドの涼しい気候が上手くハマれば、本来のパフォーマンスを十分発揮し、去年70.3世界戦3位以上の結果を出せるだろう。

タマラ・ジュエット

Tamara Jewett
タマラ・ジュエット

■出身:カナダ
■年齢:33歳
■PTO世界ランキング:11位
■キャリア:70.3オーシャンサイド優勝(2023年)

今年もダークホースとして要注意の選手だ。エリートランナーとしての実力を大いに生かし、過去にハーフ1時間12分台の速さを見せる。

今シーズンは、強豪が集まった70.3オーシャンサイドで、スイムを強化した姿を見せ、先頭集団でバイクへ。得意のランで強さを見せつけ優勝を果たした。

PTOヨーロッパオープンでは、ランで順位を上げ4位フィニッシュ。今回の世界選でも、スイムとバイクの成長次第では、同じような展開で上位陣を脅かす存在となるだろう。

2023IM70.3世界選
女子トップ3予想

1 テイラー・ニブ
2 エマ・パラント
3 ダニエラ・リフ

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■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)
アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンのオフィシャルレースメカニックとして、全米のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。アイアンマン・シリーズ戦などでメカニックとしても活躍している。

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