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【2023 KONA速報】ルーシー・チャールズ、5度目の挑戦で初V

投稿日:2023年10月16日 更新日:


ルミナ編集部

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これまで通算4回出場したコナでは、すべて2位だったルーシー・チャールズ・バークレー。今大会で悲願の初優勝を果たした

2023アイアンマン世界選手権
プロカテゴリー女子

取材/東海林美佳
写真/小野口健太

悲願の初勝利は
コナコース新記録で

コナ史上もっとも多くの人に祝福された勝利と言ってもいいのではないだろうか。

コナ(アイアンマン世界選手権)で2位を4回。度重なる大きな故障を乗り越えて5度目の正直に挑んだルーシー・チャールズ・バークレーが悲願の優勝を果たした。

群を抜いたスイム力を武器にした先行逃げ切り型のレーススタイルは、バイク&ラン2種目の比重が高いアイアンマンにおいて決して有利と言えるものではない。

その中で自分を信じて努力を重ね、バイク力とラン力を高めてきた努力と決意のアスリート。2017年のプロデビュー以来彼女が望んで止まなかった女王の座を8時間24分31秒というコナ新記録で見事つかみ取った。

写真はレース前々日、プロ選手の記者会見

ロング世界一決定戦にふさわしい
豪華な顔触れが激突

初の試みとなった男女別日程、別開催地でのアイアンマン世界選手権。史上初の「女子オンリーのアイアンマン」という歴史的な大会を彩ったのは、5×コナ女王のダニエラ・リフ、昨年初出場・初優勝を決めたチェルシー・ソダーロ、2018年コナ女王のアンネ・ハウグ、そしてIM世界記録を持つローラ・フィリップ、加えて今年のIM70.3世界選手権を優勝し、パリ五輪代表にも決まっているテイラー・ニブといったエキサイティングな顔ぶれ。

女子のレベルの高さと層の厚みを裏付けるスタートリストは、今大会にふさわしいものとなった。

スイムは例年にもましてチャールズがアグレッシブに攻める展開となった。スタートと同時に飛び出し、ひとりで他を引き離し1分29秒のマージンを得てバイクスタート。後続集団にはニブ。ソダーロ、リフ、ハウグはチャールズから約4分半遅れ、フィリップは7分以上遅れてスイムアップ。

今年もスイムをトップで上がると、そのままバイクで後続との差を広げていったチャールズ

バイクで「逃げ」を打つチャールズ。
パリ五輪代表のニブが追う

バイクレグに移るとチャールズはスイムで作ったマージンをさらに広げるハイペースで序盤から突っ込み、後続をどんどん引き離していく。

それを追う姿勢を見せたのがコナ・ルーキーどころかアイアンマン自体も初挑戦のニブ。WTCS随一のバイカーとして知られる実力を発揮し2位のポジションを確保。チャールズの逃げに唯一くらいつく。

さらに後方から怒涛の追い上げを見せたのはリフで、60km過ぎに21位から3位まで浮上したが、ハヴィの折り返しを過ぎる頃から少しずつ後退し6位に。

一方後半で良い走りを見せ3位集団へと順位を上げたのがジョスリン・マッコーリー、リサ・ノルデン、フィリップの3人。注目が集まっていたソダーロはバイクで大きく順位を落とし、先頭から22分差10位でバイクフィニッシュ。

パリ五輪の代表入りを決めている「現役オリンピアン」で、直近のアイアンマン70.3世界選を連覇しているニブ。WTCSなどでは頭抜けたバイクの力を武器に数々の勝利を上げてきた

IM最強ランナー、ハウグの猛追は
KONAランコース記録を更新

ランに入ってもチャールズの攻めの姿勢は変わらない。序盤からペースを上げ、後続を引き離していく。ニブはバイク途中でボトルを落とし、それがペナルティ対象となって1分を失ったため、ランスタート時のチャールズとの差は3分49秒に。

だが「今回は2025年大会のための予行演習」と語っていたニブに、焦りはまったくない。頻繁に時計をチェックしながら、ロングを走り切るためのペーシングに専念している様子で笑顔も見える。

後ろから追い上げるのは現アイアンマンアスリート最強のランナーとして名高いハウグだ。軽やかな足取りでリフやフィリップを抜き去り3位に浮上。明らかに別次元の走りで前を行くニブとの差も見る見るうちに詰め、30km手前、エナジーラボの折り返し地点で追い抜き2位に。

チャールズは先頭で独走を続けるが、疲労の色も顕著でペースは徐々に落ちていく。この時点でハウグとの差は7分ほど。このペースで走り続ければ逃げ切れるが、ペースが落ち始めるとわからない、そんなスリリングな展開となる。

コナのランコースレコードを更新したハウグ。その猛追もチャールズを崩すことはできなかった

力強い足取りで追うハウグと全身全霊の走りで逃げるチャールズ。40km地点では差が3分40秒にまで縮まっていた。

だが、そこからチャールズが崩れることはなかった。確かな足取りで興奮に沸くアリィドライブを駆け抜けると、満面のルーシー・スマイルでフィニッシュテープを高く掲げゴールした。

ハウグはその3分2秒後に2位でフィニッシュ。そして後半まで粘りの走りを見せたフィリップが3位と表彰台をものにした。

今回のチャールズの8時間24分31秒は、2018年にリフが出したコース記録を約2分縮める新記録。またハウグのランタイム2時間48分23秒もミリンダ・カーフレーが2014年に出したタイムより約2分速いコースレコードと、今年のハイレベルな戦いを裏付ける結果となった。

《レース後、記者会見のコメント》

「ずっと欲しかったタイトルを、5回目の挑戦でやっと手に入れた」

優勝 ルーシー・チャールズ

今も信じられない想いです。2021年夏以降ケガ続きで、とても苦しい時期を過ごしてきましたが、この競技を始めた時からずっと欲しかったものを、5回目の挑戦でやっと手に入れることができました。

勝利を確信できたのはアリィドライブに入ってから。それまでは何度も何度も振り向きながら走っていました。私の優勝を願ってくれる沿道からの声援に、たくさんパワーをもらいました。

スイム、バイク、ラン3種目にわたり独走態勢を崩すことなく、コナ初制覇を果たしたチャールズ

「得意のランでコース記録更新は、素直に嬉しい」

2位アンネ・ハウグ

ランのコースレコードを出せたのはシンプルにうれしいです。ランは私にとっては特別な種目ですから。

ここ数年は身体の問題で糖質の摂取ができなくなって、補給にはとても苦労してきました。大学のラボなどの協力も得て、試行錯誤してきた結果、今回うまくいったのはとても嬉しい。今日の結果には満足しています。これ以上できないというところまでやり切ったから。

写真左(奥)がアンネ・ハウグ

「コナの何がそんなに特別なのか。今日までわかってなかったみたい」

4位テイラー・ニブ

実際にやってみなければわからないことがたくさんありました。バイクではボトルを落としまくって、3本目を落としたところでペナルティをもらったり。そういう予期せぬ困難に直面しながらも一つひとつクリアしていけたのは経験値になりました。

コナはスペシャルなレースだとは知っていたけれど、実際に何がスペシャルなのかは今日までわかっていなかったみたい。最後はつらくて、アリィドライブが本当に長く感じました。楽しかったというより、今は本当に終わってよかったと思っています。

今大会を面白くした立役者のひとりニブ。パリ五輪後、2025年にコナを制するのが目下の目標だという

「今回のレースでコナは卒業です」

5位/ダニエラ・リフ

バイクの前半はかなり攻めたのですが、100km過ぎから体調に不安を感じて少し抑える走りに切り替えました。

いつもなら100km過ぎからが自分の真骨頂だと思っているので、フラストレーションはありましたけど。おかげで私にしては珍しくランで順位を上げることもできました。

沿道の応援は素晴らしくて、思わず笑顔になりました。レース中に笑うなんて初めてかもしれません。

実は、今回のレースでコナは卒業です。コナは私のキャリアを築いた大切な場所。今度来る時はイベントに参加したりファンとふれあったりと、大会を違う形で楽しんでみたいと考えています。

バイク序盤でレースプランの変更を余儀なくされたリフ。ランで順位を上げて5位に踏みとどまった

アイアンマン世界選手権@コナ
プロ女子上位リザルト
順位/名前・国/総合タイム(SWIM/BIKE/RUN)

1  ルーシー・チャールズバークレー (GBR)
8:24:31(S49:36/B4:32:29/R2:57:38)

2  アンネ・ハウグ(GER)
8:27:33(S54:10/B4:40:23/R2:48:23)

3  ローラ・フィリップ (GER)
8:32:55(S 56:49/B 4:35:52/R 2:55:24)

4  テイラー・ニブ (USA)
8:35:56(S51:16/ B4:34:00/R3:05:13)

5 ダニエラ・リフ(SUI)
8:40:34(S54:11:/B4:38:34/R3:02:11)

※各パートのラップはトランジションタイムを除く

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  1. 号外出ないかなー

  2. ルーシーチャールズ、応援してました。おめでとうございます🎉

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