BODY CONDITIONING HOW TO

勝てるカラダづくり、筋肉とアミノ酸の重要性。

投稿日:2018年4月9日 更新日:


ルミナ編集部

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©Kenta Onoguchi

トライアスリートのための《アミノ酸》講座

レースで勝つ、自己ベストを超えていくためには技術面だけではなく体力面(フィジカル)も重要。自身もテニスプレーヤー時代に、この点を痛感し、スポーツ栄養学のフィールドで、フィジカル面からのパフォーマンスアップについて研究を続けてきた藤田聡教授に、「勝てるカラダづくり」における「アミノ酸」の重要性を語ってもらった。


立命館大学 藤田聡 教授
立命館大学スポーツ健康科学部教授。フロリダ州立大学と大学院、そして南カリフォルニア大学大学院で運動生理学を専攻。博士(運動生理学)。加齢に伴う骨格筋量の減少(サルコペニア)や運動刺激や栄養摂取による骨格筋肥大のメカニズムについての解明を研究テーマとしている。

学生時代のスポーツ経験から研究者の道へ

私は中学から大学までずっとテニスをプレーしていました。ただ体格が大きくないことから、技術面だけでなく体力面の重要性を意識するようになりました。そのことがきっかけで、どうしたら勝てるカラダを作れるのか、どのようなトレーニングを実施したらフィジカル面からパフォーマンスを向上できるかという点に興味を持つようになりました。そこで、当時テニスの強豪国であり、スポーツ栄養学の研究でも先進的であったアメリカの大学に進学し、運動生理学の世界に足を踏みいれました。

筋肉はタンパク質の「合成」と「分解」でその質が保たれる

パフォーマンスをより高く発揮するためのカラダづくりを目指すアスリートに、まず理解していただきたいことがあります。それは、筋肉はタンパク質でできていて、タンパク質は24時間、合成(新しく作られる)と分解(古いものが壊される)を繰り返しているということ。食後は合成が進み、空腹のときには分解され、常にどちらかがより高くなる状態になっています。この合成と分解の1日を通じたバランスがとれていることによって筋肉の質は保たれ、合成が高まれば筋肉は肥大し、分解が高まると萎縮していきます。

まずはこのことを前提として理解していただいたうえで、アスリートそれぞれに合ったカラダづくりを目指してほしいと考えています。

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筋肥大のためにはタンパク質の合成だけでなく、分解抑制も意識してほしい

多くのアスリートにみられることですが、筋肉量を増やしたい場合、とにかくトレーニングとプロテインの摂取に気を使う傾向があるようです。つまり、タンパク質の合成を高めることに意識が向いています。もちろんこれは重要なことですが、一方で「分解を抑制して筋肉を維持する」という点にはあまり意識が向いていないことが多いようです。特に大学生の若いアスリートの世代では、一度つけた筋肉はそう簡単には減らないという妄想を抱いている感も受けています。

厚生労働省が示唆する食事摂取基準によると、体内のタンパク質(筋肉以外の臓器やホルモンを含む全てのタンパク質)を維持するために1日に必要な最低限のタンパク質量は、体重(kg)当たり0.9g(成人の場合)となっています。つまり体重60kgなら、54g程度となります。ただ、この摂取量は「健康を維持する」という観点であり、活動的なアスリートに対する推奨量ではないことに留意しましょう。

アメリカのスポーツ医学会が運動選手に向けた栄養摂取のガイドラインでは、持久系の運動選手で1.2~1.4g、筋力・筋パワー系の選手で1.2~1.7gのタンパク質摂取量が推奨されています(American College of Sports Medicine, 2009)。これは体重60kgの場合、72~102gと著しく増加しています。

また、カラダの筋肉が多いほど消費エネルギーは大きくなり、カロリー摂取量もより多く必要になります。そのため、プロテインなどを飲んで単にタンパク質をより多く摂ればよいというわけではなく、摂取エネルギーの増加に対する摂取エネルギー不足が生じるとタンパク質の分解量が増加してしまいます。そのような筋肉の分解を防ぐという観点からも、他の栄養素も含めてバランスよく摂取するべきです。

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試合期の遠征では筋肉量の維持がポイント

筋肉量を維持することが難しい、という例でわかりやすいケースが大会や試合で遠征する際でしょう。遠征に行って、体重を落として帰ってきてしまう選手をよく見かけますが、それはおそらく、実施する運動に対して食事や補食などによる栄養摂取量が間に合ってないために起きているのだと考えています。

遠征時は練習時間があまりとれないために、運動も不十分になってしまい食べる量も減るということもあるのでしょう。また、一日中試合を行うため食事を摂るタイミングがなかったり、緊張感で食べられなくなったりしがち。海外遠征だと、環境も変わり食べなれていないものも多く、さらに食欲を維持してバランス良く食べることが難しくなります。そのような中でも、日々トレーニングで身に着けた筋肉をいかに維持するか、そのためにどのような栄養アプローチをするかが大切です。

必須アミノ酸を含む機能性食品をうまく活用したい

サプリメントは運動における必要な栄養素と量を摂取する上において効率的で、有効なツールとして活用できるものです。アミノ酸摂取においては、必須アミノ酸の必要性が高く、中でもロイシンは体内のタンパク質の合成を高めるだけでなく、分解(=減少)を抑える効果のあることが認められています。

一般的なプロテイン食品は一回あたりの摂取量が20~25gとなっていて、飲むと満腹感が強くなってしまうこともあり、必要な食事の摂取に影響することが懸念されます。効率的に筋肉を合成するのに役立つ必須アミノ酸などを活用すると、摂取量自体が少なくなるので食事への影響も起こりにくくなります。

さらに、カラダに必要なタンパク質を作り出す同化作用を刺激する、あるいはエネルギー不足時の異化作用を抑えるという意味でもより有効といえます。

一般的なプロテインは、摂取後体内で消化分解されてから吸収されるため、体内で利用できるまでに時間がかかり、上述したような大会遠征時に摂取しづらいという課題があります。

一方、体内で消化分解される必要がなく吸収の早いアミノ酸であれば、極端な話、運動中でも摂取することが可能です。

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特に意識してほしい必須アミノ酸のロイシンは食品からも摂取できる

和食でも洋食でも、朝食で摂るタンパク質量は少ない傾向がみられます。しかし、一回の食事で筋肉の合成を最大化するために必要なタンパク質の摂取量は、カナダでの研究データによると、高齢者の場合は体重(kg)当たり0.4g、20歳代の場合は0.26gとなっています。体重60kgの若年者であれば、15.6gですね。これは卵なら約2個半、牛乳なら約500mlに相当します。これだけ摂れば、食事で体内のタンパク合成を最大に上げることができますが、不足するとその食事で得られるはずの最大限の筋タンパク質合成を刺激することができなくなってしまいます。

もし朝食をパンだけで済ませなくてはならない場合、当然タンパク質量は不足してしまいます。しかしそこにタンパク質(アミノ酸)を多く含む食品でアミノ酸を摂取すると体タンパク質合成のサポートとなります。

特に重要なのは必須アミノ酸のひとつであるロイシンで、体タンパク質の合成を刺激する機能を持つ栄養素です。海外の研究データを見ても、1.5~2g程度のロイシンを含むタンパク質を運動後に摂取すると血中のロイシン濃度が上がり、筋タンパク質合成を最大に刺激できます(図1)。

またアミノ酸摂取はプロテイン摂取時と比較して体内への吸収率・速度が高いため、少量の摂取でも血中ロイシン濃度を増加させ、筋たんぱく質合成を増加することができます(図2~3)。もちろん体格差、消化吸収能力やロイシンに対する体内の反応の強さなどの点で個人差はありますが、ロイシンは筋肉をつくるスイッチとして重要な存在です。

図1  レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける動きを繰り返す運動)後にプロテイン(卵タンパク質)を摂取した際の筋タンパク質の合成速度の変化

運動中の筋タンパク質合成速度は、プロテイン(卵タンパク質)の摂取量に比例して増加するが、20gの摂取で最大となる。なお、20gのプロテインには、重量換算で約1・7gのロイシンを含有。

図2  レジスタンス運動後のサプリメント摂取による血中ロイシン濃度の変化

図3  レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける動きを繰り返す運動) 後のサプリメント摂取による筋タンパク質の合成速度の変化

【ロイシン高配合必須アミノ酸】3g中に1.2gのロイシンを含有
【ホエイプロテイン】20g中約2.0gのロイシンを含有

ロイシンの含有量が特に高いたんぱく質食品として、乳製品などがあげられます。例えばヨーグルトは、パンを主食とする洋食はもちろん、和食の場合でも食事とあわせて食べやすい食材の一つです。

もちろん、食材とあわせてサプリメントを上手に活用することも重要です。栄養摂取の基本は食事ということを主眼に置くことは、アスリートに限らず、スポーツ愛好者にとっても便利な方法だと思われます。

タンパク質(アミノ酸)摂取は運動とセットにすると効果が高い

プロテインなどタンパク質摂取における最も適切なタイミングの基本的な考えとしては、運動とセットで考えてほしいということ。運動後に1日空けて摂取するよりは、運動前でも後でも、できるだけカラダを動かす際に近い時間に摂るほうが相乗効果が得られます。

運動前に摂取すると胃に溜まってしまい運動がしにくくなる、運動直後だと疲弊してしまい摂取しにくくなってしまうということであれば、カラダが落ち着いたタイミングで摂取すればいいと思います。

また、運動とセットでタンパク質(アミノ酸)の摂取の重要性を考えると習慣化しやすくなります。高齢者の例ではありますが、「タンパク質は重要だから摂取しましょう」と伝えても、なかなか定着しません。しかし、運動するとタンパク質がより必要になりますよ、と伝えると積極的に摂ってくれるようになります。心理学的な誘導でもありますが、これはスポーツ実施者においても同じことが言えると思います。

©Kenta Onoguchi

情報に流されすぎず正しい栄養の理解を

私自身、研究者の立場から競技団体やスポーツ指導者の方々に向けて栄養面でのアドバイスすることはありますが、スポーツ科学とスポーツの現場はまだまだ結びついていないと感じることがあります。

アスリートのレベルが上がるほどメディアの情報に流されやすい面があります。例えば「○○選手が飲んでいるから」と、その効果を理解せずに、そのまま真似をするケースもあるようです。トップアスリートを自分のモデルと位置づけ、その選手が実践している方法を真似ることを否定するわけではないですが、本当にそれが自分にとってベストな方法なのか、科学的な根拠に基づいているのかなどについて、アスリートも指導者も事前にしっかりと検討する必要があります。

大学生のアスリートならまだしも、トップレベルの選手になるほど食事や栄養についてはシビアに考える必要がありますが、その意識も理解もまだ行き届いてはいないようです。特定の競技種目における最適な体づくりやパフォーマンス発揮に向けたエネルギー補給を実現するためには、食事・栄養面からしっかりとした意識を持ち、適切な知識を備えていることが重要です。そうすれば、新しいサプリメントを目にしたり、食事や栄養摂取についてのいろいろな情報を入手しても踊らされることなく、自分で冷静に評価し判断できるようになるでしょう。

科学的にスポーツを考える意識改革にはまだ課題もありますが、これからも多くのアスリートがより高いパフォーマンスを発揮できるようにフィジカルと栄養の両面からサポートしていきたいと思っています。

藤田聡教授研究室について

立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授研究室では、運動と栄養摂取が身体組成やスポーツ・パフォーマンスに及ぼす影響を検討しています。筋肉を分子レベルで検討する基礎研究から、子どもから高齢者までの幅広い年齢・体力を対象とした臨床研究まで、総合的な実験アプローチを用いることで、運動指導の現場に還元できるスポーツ科学のエビデンスの構築に向けて日々研究を続けています。

具体的な研究内容として:
1)特定の機能性食品と運動を組みあわせた際の、脂質代謝や骨格筋タンパク質の代謝に及ぼす影響の検討
2)サルコペニア(加齢性筋肉源弱症)を目的とした長期的なトレーニング介入や栄養介入の検討
3)ジュニアアスリートのスポーツ・パフォーマンス向上を目的としたトレーニング方法の開発
などが挙げられます。
http://www.fitness-lab.net

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