KONA Challenge supported by MAKES
定期測定を踏まえて2回目のフィードバックミーティング
8月5日、KONAチャレメンバーの第2回フィードバックミーティングが開かれた。メンバーがひとりずつ前に出て、5月〜7月のトレーニングや出場したレースの報告、身体の機能やスイム・バイク・ランの測定結果を踏まえた自己評価を行い、プロジェクトリーダーの竹谷賢二さん(TK)が、それぞれの課題とその解決法についてアドバイスを行った。
各メンバーの自己評価とTKからのフィードバックを通じて明らかになった課題、解決のためのアプローチには、参加した他のメンバーやフレンドにとって、参考になるポイントも多く、皆熱心に聞き入っていた。
ここでは何人かのメンバーの報告と自己評価、TKのアドバイスを紹介していこう。
第1回フィードバックの様子はこちら》》》夢へ挑戦するアスリートたちのリアルタイムストーリー
仲村周作さん
初アイアンマンでほぼ目標達成
主観と客観の一致、持久力の基盤強化が課題
仲村さんはトライアスロン2年目。1年目からアイアンマン・西オーストラリアに挑戦し、サメの出現でデュアスロンになったものの、完走を果たしている。今年は6月のアイアンマン・ケアンズに出場。目標タイム12時間30分に対して結果は12:33:14 (スイム1:30:22 /バイク6:04:53 /ラン4:42:17)。
この3カ月のトレーニングについては、スイムはアクアラボ、個人レッスン、グループレッスンで週2〜3回。アクアラボでの測定値もまずまず。バイクは週1回竹谷さんとのパーソナルトレーニングが主体だが、ケアンズ以後仕事の関係で全く乗れず。それでも測定値は上がっている。ランは練習量が減り、測定値も落ちている。ケアンズは目標に近いタイムで完走でき、満足している。スイムはウエットスーツで首が擦れて痛かった、海酔い対策の耳栓を本番で忘れたなどの問題があるが、今後対応は可能。バイクは後半股間が痛くなり、DHポジションが維持できなかった。上りで前ももが張った。
ランは心拍が低いのにペースが上げられなかった。
▶7月の測定結果 ▶定点総評 ▶4月・7月の測定経過
【TKのアドバイス】
主観と客観を一致させてフォーム改善
仲村 1年前まで全く泳げなかった自分が3.8㎞を完泳できました。アクアラボでは自分の泳ぎをすぐに見ることができるので、改善点が分かりやすかったです。自分で思い描いている泳ぎと実際の泳ぎが近くなってきたように感じています。
TK 自分のイメージと実際の動き、主観と客観を一致させるのはとても重要です。自分の動きを見ながら修正していくことで、だんだん見なくても正しい動きができるようになります。
バイクの上りはダンシングで楽に攻略
仲村 バイクの上りで前ももが張ったのは頑張り過ぎでしょうか? レースペースでの標準パワーは170Wで、上りは217Wくらいでした。どれくらいを上限としていいのか分かりません。
TK 前ももが張ったことは、いろいろな理由が考えられますが、まずペダリングで3時の位置から下死点へきれいに加重をかけられていない可能性があります。パワーの上げ過ぎも考えられますが、これはパワーを上げる時間が短ければ回復しますし、回転数にもよります。どのくらいのパワーでどのくらいもつかは、経験を積んで覚える必要があります。あと、ダンシングなら体重を利用して楽に上れますから、これを練習すべきでしょう。腰を上げるので、股間や腰の痛み防止にもなります。
ロング初心者は長時間動き続けるトレーニングも必要
仲村 ランは話ができるくらい低心拍だったのですが、ペースを上げることができませんでした。これはなぜでしょうか?
TK 心拍は身体がまず動いて酸素やエネルギー源を送る血流を増やすから上がるわけです。この場合は身体が思うように動かなくなった理由を考えるべきでしょう。仲村さんは運動歴が浅いので、長時間動き続けるトレーニングが不足している可能性があります。長時間の持久力が十分構築できたらそれほど必要ありませんが、それまでは長時間動き続けることをやったほうがいいでしょう。たとえば、山歩きなどで12時間くらい動き続けるのもお勧めです。
河口まなぶさん
レースで調子の良さとコースに惑わされて失速
主観を客観的数値で修正することの大切さを痛感
河口さんはトライアスロン歴6年目。アイアンマンを3回完走しており、今年は7月のアイアンマン・フランクフルトに出場。結果は12:39:10 (スイム1:14/バイク6:32/ラン4:39)で、目標の10:45(スイム1:15/バイク5:45/ラン3:45)から大きく遅れた。※フランクフルトのレースリポートはこちら。
5月からトレーニングを計画通り行い、6月のアイアンマン70.3セントレアでも想定通りのタイムが出て、その後も調子は上がっていた。しかし、レース本番(アイアンマン・フランクフルト)ではバイクでその調子の良さと、コースの走りやすさに惑わされて飛ばしてしまい、後半失速した。前半のパワーは190W。今から思えば上げ過ぎだったが、当日の好調さならいけると思った。バイクの目標タイムは5時間45分で、180㎞なら平均時速31.7㎞/hだがフランクフルトは5㎞長い185㎞なので平均32.3㎞/h出す必要がある。目標タイムにこだわったのも失敗の要因。
▶7月の測定結果 ▶定点総評 ▶4月・7月の測定経過
【TKのアドバイス】
戦略的な取り組みには成功。問題は本番の戦術で判断ミス
河口 バイクコースの前半にアウトバーンを走る部分があり、190Wで37㎞/h出しても、定期測定の時より軽快な感じだったので、飛ばし過ぎという感じはしませんでした。補給も予定通り。ところが後半に入って前ももが張り、そこで初めてまずいと思いました。
TK レースでつぶれる人の典型的なパターンです。調子も良く、他は問題なかったわけですから、もったいないことをしましたね。バイクのパフォーマンス測定でATレベルのパワーは4月が171W、7月が198Wですから順調に上がっています。つまり良い練習ができていた。
ただし、ATで198Wということは、アイアンマンのレースだとその70〜80%が目安ですから140〜150W。一時的に出すとしても180Wくらい。190Wで最後までもたないことは分かったはずです。主観で「いける」と感じても、客観的データは無理だと言っているわけですから、そこで自分をコントロールすべきでした。
4月から戦略的な取り組みには成功していたのに、レースでの戦術で失敗したということです。そこさえ修正できれば問題は解決します。
トレーニングで180㎞乗らなくてもレースペースはつかめる
河口 バイクトレーニングの距離は最大で137㎞だったんですが、これは短過ぎるということはありませんか?
TK 180㎞乗る必要はないと思います。私もトレーニングは140㎞くらいまでです。180㎞乗るとどうなるか感じられるところまで乗れば十分。ソフトを使ってアイアンマンで持続可能なパワーを割り出すこともできます。
巽 朱央さん
2週間前の故障で攻めるレースができず
スイムとバイクのレースペースが分からないことも課題
巽さんはトライアスロン歴4年。今年の宮古島では年代別優勝している。ランニングは得意だが、スイム・バイクが苦手でランまでに疲れてしまう。DHバーが怖くて握れないなどの課題がある。今年は7月にITUロングディスタンス世界選手権に出場。結果は8: 11: 22 (スイム3㎞ 1:11:06 バイク121㎞4:12:15 平均速度28.7k/h ラン30㎞2:39:12 平均速度5:18/㎞)
この3カ月のトレーニングはスイムはルミナの朝スイムなどで練習量が増え、姿勢などを改善してきた。バイクはロングライドを取り入れ、峠の上りを増やした。パフォーマンス測定でも数値は向上している。バイク・ランのブリックトレーニング、ランの心拍を意識した100mダッシュも始めた。全体的にトレーニングの強度が上がったが、疲れを感じることが多くなった。ITUロングディスタンス世界選手権の2週間前、バイク練習中に外靱帯に痛みが出た。治療を行い、先生に「軽症」と言われたのでレースには出場したが、思い切ったレースができなかった。
▶7月の測定結果 ▶定点総評 ▶4月・7月の測定経過
【TKのアドバイス】
バイクで発生した故障の原因はランにある
TK 故障の原因というのは、必ずしも痛みが出たときの行動にあるとは限りません。たとえば私はランで脚の痛みに1年くらい悩まされたことがありますが、その原因はスイムのターンでヒザをねじっていたことにありました。
巽 私の場合、バイクで痛みが出ましたが、原因はランの強度が高過ぎたことにあると思います。スポーツサイエンスラボで「ダッシュは全力だとフォームが崩れるから70〜80%で」と言われていたんですが、それがすっかり抜け落ちていて今思えばそれ以上で走っていました。
TK 高強度トレーニングはフォームが崩れると身体のどこかにひずみが生まれ、故障の原因になります。したがって心拍が上がるのに速度が上がらないときはフォームが崩れている可能性が高いので要注意。フォームが維持できる限界値を知り、その手前で高強度トレーニングを行うようにしましょう。
故障はハッキリした痛みを感じるまでに、違和感やフォームの崩れなど、いくつかの信号があります。その段階で気づくと、故障を回避することができます。
自分のレースペースを知る
巽 今回のスイムは他の選手がスタートからハイペースだったので、バトルは少なく楽に泳げたんですが、マイペースで泳いだらタイムは同じ3㎞の宮古島より悪かったんです。
TK レースペースとマイペースのとらえ方だと思うんですが、余裕があるペースなのか、ギリギリもつペースなのかということですよね。スイムの場合、人の後ろについたほうがラクですから、ちょっと頑張ってついていくべき局面もある。つまり同じレースの中でもペースの上げ下げができたほうがいい。
巽 ランはどこまでペースを上げても大丈夫か分かるんですが、スイムとバイクはまだよく分かりません。
TK ランで分かるなら、それを参考にしてスイム・バイクに応用していけばいいのでは? レースのペースというのは幅を持たせて設定すべきです。目標タイムもすべてうまくいったらこのくらい、うまくいかなくてもこれくらいで合格という感じで設定する。ロングはいろいろなことがありますから、ペースも目標タイムも固定せず、幅をもたせて考えると適切な対応ができます。
永堀悟さん
二度の風邪でダウンし、練習はスピード強化がメイン
アイアンマンに向けてレースペースの持久力強化が必要
永堀さんはトライアスロン歴7年目。1年半レースに出ていなかったが、5月のITU世界トライアスロンシリーズ横浜(スプリントディスタンス)に出場した。成績は1:14 :27 /総合7位 (スイム 12:38/バイク38:25/ラン23:24 )
この3カ月のトレーニングは5月・6月に約1週間ずつ風邪で体調を崩し、家族も次々風邪でダウンしてその対応に追われたこともあって、満足のいくトレーニングができなかった。この期間はスイムを中心に、短時間でも各種目のトレーニングを週2回以上行うようにした。レース前1カ月はスピード強化に集中し、スイム・バイクは以前のラップタイムを出せるようになっていた。7月のパフォーマンス測定では全体的に数値が向上。7月に入り、バイクのミドル〜ロング練習もできるようになった。横浜トライアスロンでは、スプリント部門で総合7位、エイジ4位と、1年ぶりのレースとしてはまずまずの結果。スイム・バイクは以前のスピードでクリアできたが、ランはスタートからスピードが上がらず。今年のメインレースである10月のアイアンマン台湾に向けてスピードの持続力強化が課題。
▶7月の測定結果 ▶定点総評 ▶4月・7月の測定経過
【TKのアドバイス】
スピード強化と持続力強化はトレーニングの両輪
永堀 高強度トレーニングで測定値は上がったものの、体調の問題でトレーニングの量を確保できませんでした。
TK スピードを上げることができると、余裕で出せるスピードが上がりますから、レースでも有利です。5月・6月でそれができたわけですから、回り道したわけではなく、意味のある練習ができたと考えましょう。
次に必要なのは、ご自身でも分かっているように、そのスピードで走れる時間・距離を伸ばしていくこと。レースペースの強度で走る時間をなるべく増やしましょう。スイムは十分練習ができていますから、そのパフォーマンスをキープしつつ、バイク・ランに重点を置いたトレーニングをしましょう。
ソフトを活用して強度別の練習量を管理
TK お勧めなのは練習データをパソコンで解析するソフトの活用です。たとえばガーミンなどのギアを使えば、バイクライドのデータを強度ごとに分けて棒グラフに表示できます。これを使えばバイクライドごとに自分がレースペースでどれくらい走ったか、それを超えるペースや下回るペースでどれくらい走ったかが一目瞭然です。
レースではアベレージを上回るパワーが必要な局面もありますから、トレーニングで20Wくらい上げた強度で走る時間も必要です。
こうしたデータ分析をしながら、強度別の練習量を管理していけば、より的確なトレーニングができると思います。
このようなフィードバックをレギュラーメンバー全員が行い、あっという間に時間が過ぎていった。次回のフィードバックは3カ月後の11月。その間に浮き彫りになった課題に取り組んだり、ターゲットレースに臨んだり、メンバーそれぞれが次のステップへ向けて動き出した。今後もメンバーのトレーニング状況などは随時オフィシャルページでアップしていく。
>>>KONAチャレ過去掲載記事を読む
◎File01. キックオフミーティング「夢へ挑戦するアスリートたちのリアルタイムストーリー」
◎File02. 第1回フィードバック「レースでもう一段強くなる秘訣は”変化を恐れないこと”」
◎File03. モータージャーナリスト河口まなぶ、 KONAへの焦燥と誓い。
◎File04.ウエットスーツに頼らない本物のスイムを手に入れる(AQUALABでの測定リポート)
◎「KONA Challenge supported by MAKES」オフィシャルHP
オフィシャルページでは、メンバーのトレーニング状況やピックアップコンテンツなどを随時更新しています。
◎MAKES
https://makes-design.jp/
【他サポート施設】
AQUALAB
流水プールを使ってインストラクターによるフォームの分析、プルブイを使用して20分測定を行う。
※メンバーの孫崎が実際に測定している様子はこちらから。
SPORTS SCIENCE LAB
心肺能力(VO2MAX)、AT値、AT値でのフルマラソン適正ペース、ランニングフォーム評価、AT値での20分走タイムを測定。
R-body Project
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)で体のコンディションを骨格のゆがみや関節の可動域などのポイントからチェックし、評価。
Endurelife
AT値で20分間バイクをこいだときの平均パワー/心拍数(PWR/HRT—AT値)、FTP(機能的作業閾値パワー/PWR/HRT—AT値20分の95%)、フォーム、ペダリングを評価。