新しいカタチのレースシーズンの取り組み方
コロナ禍でほとんどのレースが中止となり、目標が定められない異例のシーズンを過ごしたKONAチャレメンバーたち。バーチャルレースやオンライン講座など、バーチャルなイベントやコミュニケーションが新しい日常になった。
しかし、バーチャルでは味わえないリアルレースの価値が一層痛感されたシーズンでもあり、秋になって開催されたアイアンマン70.3セントレアや長良川国際、九十九里トライアスロンなどは貴重な体験になった。
このシーズンの締めくくりとして11月15日、KONAチャレ・フィードバックミーティングがオンラインで開催された。6人のメンバーが今シーズンの取り組みと収穫を振り返り、リアルレースに参加したメンバーはそこで感じたこと、来期に向けて得たものをリポートした。
>>レースに出場したメンバーの振り返りはコチラから
【TKオープニングトーク】
この秋の体験が来シーズンの心の準備につながっていく
今シーズンはとても短い特殊なシーズンでした。
この事態が今年で終わってくれることを願っていますが、来年4月の宮古島がすでに中止となるなど、来年もレースがいつどれだけ再開されるのか、予断を許さない状況です。
それだけに、今年の取り組みを振り返り、秋のレースに出た人はその結果もふまえて、来年の準備をしていく必要があると思います。
秋の3イベントを通じて感じたリアルの良さ
私はリアルレースのメインとして10月18日のアイアンマン70.3セントレアに参加しました。その1週間前のアイアンマンVR KONA、さらにその2週間前にルミナの館山キャンプに参加して、9月からセントレアに向けて調子を上げていきました。
館山キャンプではミドルのスイム・バイク・ランを模擬レースとして行いました。みんなで集まって一緒に頑張ることでバーチャルでは出ない力が出ますから、改めてリアルの良さを痛感しました。
アイアンマンVR KONAはスイムとバイクを1日で、ランは金曜~日曜の3日間で行うというカテゴリーに参加。種目を分けてもアイアンマンは大変だと改めて実感しました。
同時に、一度休んで翌日スイッチを入れ直すのは大変で、レースのテンションは1日でやったほうが保ちやすい面もあるかなと思いました。
セントレアはバイクで残念な事故があり、途中でバイクパートが中止に。ウエーブスタートだったので、中止になった時点で走っていた距離が選手によってまちまちになり、リザルトにはその距離とタイムが加算されましたが、同じエイジの選手はほぼ同じ周回でストップになったので、ある程度の公平さは確保されたと思います。
私の場合、バイクの記録は周回の1周分10㎞ちょっとで、バイクのアドバンテージを生かすレースにはなりませんでしたが、トータルでエイジ2位になり、今シーズン取り組んできたことの成果をある程度出すことができました。
来シーズンに向けての課題
スイム・ランの伸びしろにフォーカス
今シーズンの収穫は、レースがあってもなくても変わりなく、パフォーマンス向上に取り組むことができたこと。来年に向けても、バイクは加齢による落ち込みをおさえてパフォーマンスを維持し、伸びしろのあるスイムとバイクのパフォーマンスを上げていきたい。
スイムは今年コロナ禍で泳げない期間に陸上で技術的な改善に取り組み、それを実際の泳ぎにつないでパフォーマンスを上げることができました。
11月8日にはマウンテンバイクの全日本マスターズに出場。トライアスロン以外にも、再開されている水泳やバイク、ランなど単体のレースに練習試合として出ることも、レースならではの集中した状態でパフォーマンスの現状確認ができるのでおすすめです。
これから数カ月はラン強化期間。最近、Zwift runを始めました。メニューは、これまでトラック練習など陸上競技的なトレーニングをしてこなかった自分にとってはかなりハードですが、ランの抜本的なスピード強化には有効。これから来年の東京チャレンジマラソン(1月31日荒川河川敷で開催)に向けてラン強化していく計画です。
退職・転居・第一子誕生……生活激変の中でもパフォーマンス向上
木家勝之さん
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>>>初めてのフィードバックミーティング(動画あり)
【暮らしの変化】
春からコロナ禍で鍼灸師・マッサージ師・スポーツトレーナーの仕事が激減し、ウーバーイーツで稼ぐ日々が続いた。妊娠中の妻は産休へ。
7月に勤務していたスポーツクラブを退職し、住まいを都心から鎌倉に移す。
退職・転居の時期はトレーニング量が落ちたが、その後落ち着いてきて、少ないながら継続的なトレーニングが可能に。早朝に海で泳ぐ、ローラー台のあとランニングなど。週1回の2時間ローラー台も。
計画では今年のメインレースだったアイアンマン・コリアの予定日9月6日に向けて調子を上げることができた。奇しくも9月6日に第一子が誕生。
【10月の定期測定】
スイム(20分)は平均ペース1分45秒で5%向上。前回途中でバテてフォームが崩れ、流水速度を下げたが、今回は逆に上げることができた。
バイクは平均パワー279Wで3%向上。練習量が少ないわりに落ちていないのは驚き。
ランは前回が悪かったこともあり、30%向上。昨年のアイアンマン・マレーシア時のレベルまでは戻っていないが、痛みなく練習できているので、これから上げていける。
R-bodyのFMSの点数はあまり変わらないが、指導を参考にした週4回のコンディショニングと週3回の筋トレに取り組んでいる。
【今年の振り返り】
レースには出られなかったが、全体的には悪くなかった。「トレーニングピークス」というソフトでパフォーマンスや疲労度を可視化したグラフで見ると、7月の転職・転居あたりで一度パフォーマンスが落ちているものの、その後回復しつつあり、全体的には右肩上がり。
コーチの意見では、トレーニング時間が限られていた分、いいレストになった。つまりこれまでオーバートレーニング気味だった。これからはメリハリをつけてトレーニングしたほうがいいとのこと。
【これから】
2021年に向けて、フェーズを分け、それぞれテーマを設定してパフォーマンスを向上させていきたい。
【TKのフィードバック】
難しい時期にすばらしい人生の転換、トレーニングの大転換を実現している。「いつでもKONAに出られるアスリートに変化していく」というKONAチャレの目的に向けたトレーニングができるようになったのは収穫。
細かい波はあっても、右肩上がりの大きな波を作ることができている。このままいけば、必ずKONAに出られるアスリートになれる。
TK■レースに出られなかったことで影響はありませんでしたか?
木家■影響はあります。トレーニングで仮想レース日を何度か入れましたが、経験を積むことによる実戦的な向上にはやはりレースが必要です。だからセントレアには出たかった。
TK■スイムの練習が少ないのに、測定でフォームが崩れなかったのはなぜか、思い当たるところは?
木家■ドライランドを徹底したことが大きいと思います。アクアラボでいただいたアドバイスを実践しました。
TK■R-bodyの指導を活用しているのもいいと思います。
木家■自分の3種目の課題に即した身体の動きに落とし込んで、コンディショニング、筋トレの取り組みをレベルアップできています。
TK■今年レースがないのにパフォーマンスが向上した理由は?
木家■昨年まではトレーニングの時間がとれていた分、量的な達成感を追い求め過ぎていた。今年は時間がない分、自分の課題としっかり向き合うことができ、トレーニングのやり過ぎがなくなったことが、パフォーマンス向上につながっていると思います。
ベース作りからしっかり取り組んだ充実の半年間
東度久美さん
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>>>KONA獲得の秘訣
>>>KONA獲得後
出場予定だったKONAが中止になり、残念だったが、コロナ禍でレースがない中、自分としては新しいチャレンジがいろいろでき、来年のKONAに向けて非常に充実した収穫があった半年間だった。
毎年3レースくらい出場するので、テーパリングや3種目の実戦練習に時間をとられるが、今年はレースがない分、これまで取り組めなかったことに取り組んだ。
春から3カ月くらいじっくりベース作り。1カ月ごとにテーマを決めてしっかりトレーニングに取り組むことができた。
ランはジョグをじっくり。筋トレ、コンディショニングなども。バイクはローラー台メインで、ZwiftのFTPビルダーなどの4週間単位のワークアウトメニューを実践。
前からやりたかったスキル・フォーム練習も初めてじっくりやってみた。鏡や動画で自分の動きを見たり、イメージトレーニングをしたり等々。
速く強くなった実感はないが、動きが改善されて、スイムは楽に泳げるようになり、ランは見た目に以前よりまともなフォームになった。
ミートアップやバーチャルレースなど、オンラインを活用できるようになったのも収穫。仲間と実際に会えなくても、顔を見ながら一緒に走ることでしっかり追い込め、効果的に練習できる。コロナのおかげで最強のアイテムを手に入れることができた。
ここ数カ月は合宿や実走にも行けている。会えなかった分、仲間と顔を見て頑張れる喜びを痛感。
バーチャルの仲間もたくさん増え、今までにない楽しさを感じている。これからの1年、さらに頑張れそう。
【TKのフィードバック】
今年を象徴するようなキーワードがいくつも出た。東度さんのような取り組みで分かることは、コロナでレースがなくてもやることは同じだということ。
レースがあると、長期的な底上げを中断して、現状の力を整えて仕上げるということをやることになる。
レースに出るのは、現状を確認したり、実戦の経験を積んだりするのに必要だが、長期的に自分を強くするためには、やはり基礎トレーニングやスキル練習など底上げのトレーニングが重要。
そういう自分自身をよりよくしていく取り組みができたかどうかが、来年の向上を決めることになる。
すべてのトライアスリートにTKからのメッセージ
レースがあってもなくても、「自分をKONAに出られるアスリートへ変えていく」という大目標は変わらない。
レースがない中、レースがいつ再開されるのか見えない中で過ごした今シーズンは、KONAを目指すメンバーが自分を試されたシーズンでした。
自分をより良いほうへ変えていくという長期的かつ本質的な目標を見失わなかったメンバーは、見通しが立たない中でも、この目標に向けて取り組みを続け、秋に開催されたレースや、合宿での模擬レース、バーチャルアイアンマンKONAなどで、成果を出すことができました。
レースやイベントに参加できなかったメンバーでも、充実した取り組みを続け、来年に向けてパフォーマンスを向上させた人たちもいます。
コロナ禍で思うような練習ができない中、自分のトレーニングを見つめ直し、休養や回復の大切さに気づいた人もいます。3種目のトレーニング以外の、力の底上げに必要な基礎トレーニングを実践した人もいます。
重要なのは、ただパフォーマンスが上がっただけでなく、これからさらに向上させていくために必要なことを自分で考え、身につけることができたこと。
これこそ「KONAにいつでも出られるアスリートになる」という最も大切な目標のために必要なことです。
目先のレースのために大目標を見失わない
一方、レースのためのテーパリングやリカバリーに時間をとられ、長期的にパフォーマンスを向上させることができないと気づいた人もいます。レースは現状確認のため、実戦の経験や技術を磨くために必要ですが、あくまで長期的にパフォーマンスを向上させていく取り組みの一部です。
長期的な大目標を達成するための戦略と、そのために必要な小目標と戦略をうまく組み合わせて、強くなっていきましょう。
目標を見失って取り組みを止めてしまうのは大きなロス
残念なのは、レースという目標がないことでモチベーションが維持できず、自分をよりよく変化させていくという本質的な取り組みをやめてしまう人たちがいたことです。
この取り組みを中断してしまった人は、レースが再開されたとき、かなりのビハインドを背負って再スタートすることになるでしょう。中断することで、これまで積み重ねてきたことの多くが消えてしまいますから、本当にもったいないと思います。
来年はさらに自分が試されるシーズンになる
冒頭で触れたように、来年も始めから元通りのシーズンが始まるとは限りません。世界的なコロナの感染拡大を見ていると、少なくともシーズン前半は今年と同様か、それ以上に先の見えない混沌とした状況が続く可能性もあります。
しかし、今年長期目標を見失わず、取り組みを続けた人は、この経験を生かして自分をコントロールし、リアル・バーチャルを問わず開催されるレースやイベントを活用しながら、さらに成長を続けていけるでしょう。
私も皆さんと切磋琢磨しながら、自分をよりよく変えていく努力を続けていきたいと思います。
◎「KONA Challenge supported by MAKES」オフィシャルHP
オフィシャルページでは、メンバーのトレーニング状況やピックアップコンテンツなどを随時更新しています。
【サポート施設】
AQUALAB
流水プールを使ってインストラクターによるフォームの分析、プルブイを使用して20分測定を行う。
※メンバーの孫崎が実際に測定している様子はこちらから。
RUNNING SCIENCE LAB
心肺能力(VO2MAX)、AT値、AT水準、AT値でのフルマラソン適正ペース、ランニングフォーム評価、AT値での20分走タイムを測定。
R-body Project
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)で体のコンディションを骨格のゆがみや関節の可動域などのポイントからチェックし、評価。
Endurelife
AT値で20分間バイクをこいだときの平均パワー/心拍数(PWR/HRT—AT値)、FTP(機能的作業閾値パワー/PWR/HRT—AT値20分の95%)、フォーム、ペダリングについてチェック&アドバイス。