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3年ぶりのアイアンマン世界戦。注目選手とトップ3予想

投稿日:2022年5月4日 更新日:


山村 勇騎

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©Getty Images for IRONMAN

アイアンマン世界王者のタイトルは誰の手に?

2021年版 アイアンマン世界選手権
プロレースプレビュー

文=山村勇騎

2020年に端を発したコロナ禍の影響で延期が続いていたアイアンマン世界選手権が、今週末5月7日、ようやく開催される。

米・ハワイ州のコナから、ユタ州のセントジョージへ舞台を移して開催にこぎつけたのは「2021年版」のアイアンマン世界選手権(※「2022年版」は10月コナ開催)。昨年IM70.3の世界選手権が開催されたセントジョージは、世界のアイアンマンコースの中でも、一番難易度が高いコースである。

コナは「風と暑さとの戦い」だが、セントジョージは「山との戦い」と言えるほど、バイクとランではアップダウンが激しいコースだ。

個々の本当の実力が大きく試されるこのタフなコースを舞台に、「アイアンマン世界王者」のタイトルをかけた世界最高峰の戦いが始まる。

昨年70.3世界戦の舞台にもなったセントジョージのバイクコース ©Donald Mirralle/IRONMAN

ノルウェー勢はアイアンマンでも世界を制圧するか?
>>プロ男子注目選手

©Getty Images for IRONMAN

グスタフ・イデン
Gustav Iden

■出身 ノルウェー
■年齢 25歳

■主なキャリア
アイアンマン70.3世界王者(2019・2021年)、2021年アイアンマン・フロリダ優勝、2020年、東京五輪8位

ITU(現World Triathlon)からアイアンマンまで、オールラウンドに活躍している現70.3世界王者が、満を持してのアイアンマン世界戦デビュー。

アイアンマン(ディスタンス)デビューとなったフロリダのレースでは、ベテラン・アイアンマンアスリートらを抑え、勝利を上げている。

昨年の70.3世界戦では、このセントジョージのタフなコースでバイクの強さを見せつけ、得意のランでも引き離し、余裕の勝利を収めている。相性の良いセントジョージのコースで、普段通りのバイクとランを見せれば、優勝に最も近い選手だ。

©Kenta Onoguchi

クリスティアン・ブルンメンフェルト
Kristian Blummenfelt

■出身 ノルウェー
■年齢 28歳
■主なキャリア
東京オリンピック金メダリスト、2021年アイアンマン・コズメル優勝

言わずと知れた東京五輪の金メダリストが、アイアンマン世界戦デビュー。同郷のトレーニングパートナーであるイデンとともに、同じコーチ下で、練習を重ねてきた。

これまでバイクでのメカニカルな問題が多く、昨年の70.3世界戦や今年の70.3バーレーン大会では、パンクに悩まされ思うようなレースをできずにいたが、アイアンマンデビューとなったコズメル大会では、アイアンマン世界記録となる7時間21分という高速タイムで優勝。東京五輪で他を圧倒したガッツあふれるパフォーマンスを見せてくれれば、優勝に近づけるだろう。

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セバスチャン・キーンル
Sebastian Kienle

■出身 ドイツ
■年齢 37歳
■主なキャリア
2014年アイアンマン世界王者、70.3世界王者(2012・2013年)

今年の両世界選手権出場をもって引退を発表した2014年世界王者が、復活のパフォーマンスを見せるか。プロフィールドの中でも、最もベテランであり、高速バイカーのひとりとして長年活躍してきた。

ここ数年間は、ケガなどの影響でパフォーマンスの波が大きかったが、2019年のアイアンマン世界戦では、3位でフィニッシュ。今年は、引退を覚悟した世界戦への挑戦で、どこまで本来のパフォーマンスを見せてくれるかに注目。

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ライオネル・サンダース
Lionel Sanders

■出身 カナダ
■年齢 34歳
■主なキャリア
2017年アイアンマン世界選手権2位、アイアンマン70.3セントジョージ優勝(2018・2021年)

エイジ上がりの選手のひとりで、プロデビュー後すぐに、その頭角を示し始めた。2020年に、1時間トラックソロレースで、カナダの国内レコードを破るほどのバイクの強さをもつ。

高速バイクだけではなく、学生ランナー出身で、ランの速さも見逃せない。2003年のアイアンマン世界王者ピーター・リード以来となる、カナダ代表としての世界タイトル獲得なるかに注目だ。

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サム・ロング
Sam Long

■出身 アメリカ
■年齢 26歳
■主なキャリア
2021年アイアンマン70.3世界選手権2位、2021年アイアンマン・コーダレン優勝

トライアスロンのメッカであるコロラド州ボールダー出身。エイジ上がりで、プロデビューして、徐々に強さをレベルアップしてきた。強みとしてきたバイクスピードとともにランを強化し、トップ選手へ上り詰めた。

気になるのは、数日前のバイク練習中に車との接触事故に遭っていること。大事に至らなかったものの、しっかりと回復できているのかが疑問。

スイムが弱点ながらも、バイクで先頭集団に追いつける実力をもっており、かなり強化してきたランで、昨年以上のパフォーマンスを見せることができれば、優勝できるポテンシャルをもっている。

マシューズら、台頭する新鋭に注目
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©Kenta Onoguchi

アンネ・ハウグ
Anne Haug

■出身 ドイツ
■年齢 39歳
■主なキャリア
現アイアンマン世界王者(2019年)、五輪出場(2012年ロンドン、2016年リオ)

ITUサーキットで長年活躍し続け、2016年のリオ五輪出場後、ロングへ転向。すぐに頭角を現し始め、2018年アイアンマン世界戦で3位入賞、2019年には世界王者に。

小柄な体型ながらも、力強いランフォームで、常にアイアンマンでは2時間50分代で激走する。今回のセントジョージでは、スイムとバイクでの遅れを、ランでカバーできるかが連覇への鍵となる。

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ダニエラ・リフ
Daniella Ryf

■出身 スイス
■年齢 34歳
■主なキャリア
4度アイアンマン世界王者(2015・2016・2017・2018年)、5度アイアンマン70.3世界王者(2014・2015・2017・2018・2019年)、五輪出場(2008年北京、2012年ロンドン)

2013年のロング転向以降、絶対王者として常に世界の頂点に君臨していた。2019年のアイアンマン世界戦には、病にかかりながらも出場を果たしたが、それ以降、世界の舞台ではリフらしいパフォーマンスを発揮できずにいる。昨年の70.3世界戦に加え、今年の70.3レースでも優勝を逃している。

このスランプを乗り越えてうまく調整できていれば、今大会でも、得意のバイクで強さを見せてリードを広げ、ランで粘っての優勝も見えてくる。

©Kenta Onoguchi

ローラ・フィリップス
Laura Phillips

■出身 ドイツ
■年齢 34歳
■主なキャリア
2019年アイアンマン世界選手権4位、2021年アイアンマン・オーストリア&スウェーデン優勝

ここ数年間で最も著しい成長を見せている新星。去年から数々のアイアンマンレースで優勝を重ね、今年の70.3ドバイでは、リフを抑え優勝。

スイムが弱点ながらも、バイクでトップへ追いつける速さをもち、しっかりとランも走れるのが強みだ。

しかし、数日前に高熱で風邪にかかり、一時出発を延期。現在、体調を見て出場するかは模索中だが、もし完全に体調が治り出場を果たすことができれば、これからの注目選手としても見逃せない存在だ。

(※その後、新型コロナウイルス陽性が判明し欠場)

©PTO

カトリナ・マシューズ
Katrina Mathews

■出身 イギリス
■年齢 31歳
■主なキャリア
2020年アイアンマン・フロリダ優勝、2021年アイアンマンUK優勝、2021年アイアンマン70.3世界選手権4位

イギリスの軍隊出身で、2015年にエイジでトライアスロンデビューしてから、メキメキと頭角を現し、2019年プロ転向後も、アイアンマン・フロリダで初優勝。その勢いは止まらず、初の世界戦となる2021年の70.3セントジョージ大会では、多くの強豪やベテランの中で4位入賞を果たしている。

ランを2時間49分で走れる脚をもっているので、うまくバイクで順位を上げることができれば、要注意な存在となる。優勝候補から外してはいけない選手だ。

©PTO

スカイ・モンチ
Skye Moench

■出身 アメリカ
■年齢 33歳
■主なキャリア
2021年アイアンマン・チャタヌーガ優勝、2019年アイアンマン・フランクフルト優勝

エイジ上がりで、2016年にプロへ転向。数年かけて探りながら、徐々にパフォーマンスを上げていき、2019年のアイアンマン・ヨーロッパ地区選手権優勝で、ブレークスルー。

コロナ以降バイクの強化を図り、アイアンマン・チャタヌーガでは、成長した強さを見せ、2位に30分もの差をつけ余裕の勝利を上げている。

今大会、唯一のアメリカ代表トップ選手として、歴代世界王者らを相手にどんな戦いぶりを見せるか、注目が集まる。

2021版アイアンマン世界選手権
トップ3予想

《プロ男子》
1位 グスタフ・イデン
2位 ライオネル・サンダース
3位 サム・ロング

《プロ女子》
1位 カトリナ・マシューズ
2位 ダニエラ・リフ
3位 アンネ・ハウグ

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■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)
アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンのオフィシャルレースメカニックとして、全米のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。自身も強豪エイジグルーパーで、昨年の70.3世界選手権に続き、今回のアイアンマン世界選手権にも出場する。

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