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【稲田弘×山本淳一】90代のアスリート 次の舞台のために気持ちも新たに前進

投稿日:2024年8月7日 更新日:


ルミナ編集部

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稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

©Kenta Onoguchi

次の舞台のために気持ちも新たに前進

アスリート稲田 弘×コーチ山本淳一

91歳で挑戦したアイアンマン・ケアンズ。5年ぶりのフルディスタンスは、バイクでタイムアウトに。一旦アイアンマンへの挑戦は辞めるのか、またこの先もトライアスロンを続けるのか、日本のみならず、世界中が注目する稲田弘さんの次のターゲットとは? 長年コーチを務める山本淳一さんの見解とともに話を訊いた。

写真=小野口健太
Photographs by Kenta Onoguchi

稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

©Kenta Onoguchi

Hiromu Inada
70歳でトライアスロンデビュー。76歳でアイアンマンに初挑戦。80歳でKONA(アイアンマン世界選手権)を初完走し、エイジ優勝。2016年、2018年にもKONAで優勝し、最高齢アイアンマン完走記録(86歳)をもつレジェンド。91歳で5年ぶりにフルアイアンマンに出場。今後も世界一を目指し挑戦は続く。1932年、大阪生まれ。

山本淳一さん

©Shugo TAKEMI/Triathlon Japan Media 2023年エイジグルーパー日本選手権宮崎

Junichi Yamamoto
1996年よりナショナルチーム入り。トライアスリートとして30年以上競技活動に励む。指導者としてもトライアスロン愛好者のチームや、パーソナルコーチングなどを展開。2019年、2023年とエイジグループ世界選手権でエイジ優勝、2度世界一に輝いた。稲田さんのコーチとして長年その挑戦を支えてい。1973年、愛知生まれ。

5年ぶりのフルディスタンスケアンズを振り返って

稲田弘(以下稲田)大会当日は暑いんだけど、気持ち良いくらいの気候でした。スイムは穏やかでコースも泳ぎやすく工夫されていたし、遅いですけど、最後までヘタるということはなかったですね。バイクは風はなかったのです

が、ほとんどアップダウンなので、上り坂で脚を使ったけど、上りの練習もしていたので快調に走れました。結果的に、2周回するうちの1周目が終わった段階、ちょうど80㎞地点でタイムオーバーになってしまいました。

「まだいける!」と思っていたところだったので、ショックではありました。でも、自分の力を出し切ったので、悔いはないな、っていう気持ちです。こう言ったらなんだけど、ほっとした気持ちもありましたね(笑)。

稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

アイアンマン・ケアンズ2024 ©Kenta Onoguchi

山本淳一(以下山本)5年ぶりのフルアイアンマンだったので、緊張があったし、レースに向けて100%ちゃんとトレーニングが積めたかって言うとそうではないのは事実なんですが、レースで稲田さんのもてる力をすべて出し切れたかって言われると、自分としては、まだやれることはあっただろうし、そこが限界だとは思いません。

稲田さんとしては、これまでのプレッシャーと、周りの期待もあって、できると思っていた気持ちから、できないかもっていう気持ちが生まれて、コロナの3年もありつつ、フルディスタンスへの恐怖も強かったのかな。

正直、カットされた直後の表情っていうのは、レース前より良かったんですよ。

安堵の表情、悔しさは大前提としてある上で、ほっとしたというか。出し切った結果がそこだったんだろうけど、そこが限界だとは思わない僕がいます……。でも稲田さんが出し切ったと言うなら、納得した結果だったのかな、って思いますね。

稲田 レース直前までの調子は、正直あまり良くなかったんです。でも、制限時間さえなければ、まだいけそうという気持ちはありました。

タイムオーバーで止められた後もT2まで35㎞くらいバイクで戻らないといけなかったので戻ったし、その後10㎞くらいはランもしてね。まだまだ自分は行ける、という気持ちもありましたよ。

稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

アイアンマン・ケアンズのバイクコース、80㎞地点でタイムオーバーに。稲田さんと山本コーチが言うように、安堵の表情が印象的。写真=山本さん提供

完走に一番大事だったのは目的意識をもつこと

山本 完走のために一番足りなかったのは、目的意識が低かったということに尽きます。これは、今までにはなかったことなんですよ。5年のブランクもあるし、実際にできなくなっていることのほうが多いというのもありますが、自分はずっと稲田さんを見てきているので、できないはずがないと分かります。

今まで、「無理」という言葉を使わなかったのに、「無理だよ」って自分から言うこともあって、やってみてできないのと、やらずにできないっていうのはちょっと違いますよ、と伝えていました。

でも、誰でもそうでしょう? 調子がいいときは何やってもできるから、悪いときにどうするかというのが大事なんです。僕から見たら、そういう気持ちの変化が影響していたのかなっていうのがありますね。

一番気になる今後の取り組み方は

稲田 基本的に、自分の今のスピードだと、バイクが極端に遅いので、今後フルのアイアンマンに挑戦しても結果は同じかな、と。

KONA(アイアンマン世界選手権)に行きたい気持ちはあったけど、それは無理かなと。その挑戦は、悔しいけど、自分のもてる力を出し尽くして、それでもだめだったわけだからね。今度は、ミドルのアイアンマン70・3の世界選手権を目指そうと思っています。

ただ、制限時間は一緒なわけだから、スピードが出せるっていうパフォーマンスを発揮しないと、やっぱり結果は同じだろうなって気持ちもあるから、インターバルとかスピード練習も必要だと感じています。

スイムとランは自信があるので、バイクをもうちょっとレベルアップしないとだめかな、って思っています。出場レースについては、コーチとも相談中なんですけどケアンズのコースは走りやすいことが分かったので、ケアンズの70.3か、昨年出ているハワイ70.3かな。完走したら、必ず優勝なので(笑)、そのあと世界選手権で世界一を目指そう、と。

また、11月にはスタンダードディスタンスの日本選手権に出るので、そこでも優勝して、世界で戦いたい。今まで世界一でやってきているんで、世界一をこれからも守り続けていきたいと思っています。

稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

アイアンマン・ケアンズ2024 ©Kenta Onoguchi

山本 そうやって、順を追ってやってもいいかなって、思いますね。稲田さんは、段階を踏まずにアイアンマンから世界に挑戦していますから。

この年齢で51.5㎞からサラの状態で、デビューした人と同じように挑戦していくのはいいですよね。51.5㎞をちゃんと完走して、そのスピードをもって、70.3にチャレンジしてほしい。51.5㎞、70.3の世界チャンピオンになれる可能性はあると思いますよ。

世界一になって、その上にまたフルのアイアンマンっていうのがまだあるのかなって、僕は思っています。自ら「世界一になる」っていう言葉が出てくるというのは、自信がある表れだろうし、今後のレースについても、皆さんには期待してほしいですね。

稲田弘さん IMケアンズ2024 Lumina

©Kenta Onoguchi

続きを読む >>世界一にこだわる稲田さんの挑戦に欠かせないもの

【関連動画】稲田さん91歳アイアンマン挑戦

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