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【WTCS横浜】《レース速報》雨煙る横浜 ルエール初戴冠 ハウザーは宣言どおりの勝利

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ルミナ編集部

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WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

取材・文=東海林美佳
Text by Mika Tokairin
写真=小野口健太
Photographs by Kenta Onoguchi

WTCS第2戦横浜
新王者はジャンヌ・ルエール&マシューハウザー

今年も2月のアブダビを皮切りに幕をあけたWTCS(世界トライアスロンシリーズ)。第2戦となる横浜はスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmのスタンダードディスタンスで争われる。(※)朝からの雨と次第に強まる風という過去最悪の天候のなかでも、予定通り午前中に女子レースが、午後からは男子レースが開催された。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

女子レース
ルエール強豪振り切り初優勝の歓喜
髙橋侑子再出発のWTCS初戦は19位

パリ五輪の金メダリスト、カサンドル・ボーグラン(フランス)と、銅メダリストのベス・ポッター(イギリス)。また、昨年の横浜を制したレオニー・ペリオー(フランス)や第1戦のアブダビ優勝で好スタートを切っているリーザ・テルチュ(ドイツ)ら強豪が顔を揃えた今年のWTCS横浜。

日本勢はパリ五輪後も現役続行を決めた髙橋侑子と、平泉真心、林愛望、中山彩理香、酒井美有、佐藤佳子、佐藤姫夏、武中香奈枝の7名が出場。日本トライアスロン界次世代を担う若手の初参戦にも期待がかかる一戦だ。

スイムは視界が霞むほどの雨が降りしきる中でのスタートとなった。先頭で上がってきたのはテレーゼ・フォイアージンガー(オーストリア)。そこにジャンヌ・ルエール(ルクセンブルク)、テルチュらが続いてスイムアップ。ポッター、ボーグランや髙橋、林、酒井、武中ら日本勢もそれに続く。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

雨のためコース変更となったバイクでは、序盤、ルエールらスイム先頭集団の3人が小さな集団を形成して逃げを図るも中盤には後続に吸収され、30人以上の大集団となった。バイク序盤で遅れたボーグランやグウェン・ジョーゲンセン(アメリカ)、そして髙橋、酒井、林ら日本勢もこの集団に食い込んでいる。

雨の中、誰もが神経を使いながらの集団走行で、リスクを避けるために好んで先頭にポジション確保したのがルエール、フォイアージンガーら。一方ランの強い選手は最後尾付近でやはりリスク回避を図っている模様。そんな中、6周回目にボーグランが濡れた路面で滑って転倒しリタイアとなる。

幸い他選手への影響はなかったが、優勝候補の不運な事故は残念としか言いようがない。その後、最終周に入る直前、フォイアージンガーがアタック。集団から抜け出し、1人逃げを決めたかに見えたが再び集団に吸収され、結局トップでT2に入ったのはルエール。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

その勢いのままルエールはランでも飛び出し、みるみるうちに後続との差を築いて独走体制となる。後ろから追うのはアニカ・コッホ(ドイツ)、テルチュ、ディアナ・イサコワ(個人中立選手)の3人、さらに後方からポッター、そしてジョーゲンセンらのスピードランナーが追い上げるエキサイティングな展開となった。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

ルエールはトライアスロン界切っての俊足たちの追い上げにもひるまず、最後まで独走を保ったままWTCS初優勝を決めた。ポッターとテルチュの間で繰り広げられた2位争いはラストスパートでポッターに軍配。後方から怒涛の追い上げを見せたジョーゲンセンは表彰台にわずか及ばず4位でゴールし、リオ五輪金メダリストの復活を印象づけた。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

日本勢ではベテラン髙橋が19位。若手の林が25位でゴール。大学生の林のスイム、バイクまでの積極的なレース展開は今後の糧となるはずだ。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

優勝のジャンヌ・ルエールのコメント
「いろんな感情が湧いてきて、混乱してます。IM70.3に出たすぐ後だったので、このレースのために準備をする時間がなかったのにこの結果。びっくりです。バイクでは、サングラスを忘れてしまったので泥はねを回避しようと先頭に陣取っていました。その後のランでは、どうやってあの走りができたのかわかりません。こんなことは一生に一回しかないから楽しもうと思って走りました。雨も味方してくれたと思います」

【リザルト】
【女子エリート】
1. ジャンヌ・ルエール(ルクセンブルク)1:51:34
2. ベス・ポッター(イギリス)1:51:38
3. リーザ・テルチュ(ドイツ)1:51:40
19. 高橋 侑子(相互物産/東京)1:53:47
>>エリート女子

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男子レース
ハウザー冷静なレース運びで横浜初優勝
ニナーは世界の強豪と渡り合い22位

男子レースではヘイデン・ワイルド(NZ)が直前のバイク事故による大ケガで不出場となるなか、注目株は昨年の横浜優勝のモーガン・ピアソン(アメリカ)、2位のマシュー・ハウザー(オーストラリア)、そしてパリ五輪銅のレオ・べルジェールら。

日本からは昨年の横浜でブレイクスルーのパフォーマンスを見せたニナー賢治と、安松青葉、佐藤錬、吉川恭太郎、定塚利心、大島拓人の6名が出走した。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

スイムはマルク・デーバイ(ハンガリー)が終始トップを守り切り、その後にハウザー、チェイス・マクイーン(アメリカ)と続く。日本勢では吉川が先頭から20秒差、大島が21秒差と好位置でスイムアップ。通常ならトップ集団に食い込むニナーは27秒差。

雨に加え風も強まるなかでのバイクレグでは、縦に長く伸びた大集団が形成された。ハウザー、べルジェール、バスコ・ビラサら実力者の中で、ここにいないのがスイムで大きく遅れをとったピアソン。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

途中、アタックをしかけた選手がすぐに後続に吸収されてしまうなど、強い雨風の中、選手たちは思い切った勝負に出られないでいる様子。バイクは安全にやり過ごして、ラン勝負に持ち込もうとの目論みか。そんな中最終周で大逃げを打ったのがデーバイ。思い切ったスパートで後続を18秒引き離すことに成功した。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

ランの序盤でもデーバイの独走がしばらく続いたが、後ろから追ってくるのはハウザーらスピードランナー5人。1周目の終盤にはデーバイに追いつき、やがて置き去りにした。ベルジェール、ハウザー、ビラサ、シャルル・パケ(カナダ)そしてミゲル・イダルゴ(ブラジル)の5人が後続と大きく差を広げ、トップ争いを展開する。やがてパケが脱落、その後ベルジェールが脱落し、集団が絞られていった。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

終盤までくらいついていたイダルゴも後退し、最後はハウザーVSビラサの一騎打ちとなった。ビラサはハウザーを振り落とそうと何度もスパートを仕掛けるも、ハウザーは離れない。最後、満を持して出たハウザーは一気にビラサを振り切り、念願の横浜初優勝を決めた。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

日本勢トップはニナーの22位。安松が28位、佐藤が32位。バイクまでいい位置にいた吉川は36位となった。

WTCS横浜2025 ©KentaOnoguchi

優勝のマシュー・ハウザーのコメント
「イチバンになれてうれしい。スイムではデーバイが攻めてくれたおかげで僕もいい泳ぎができました。バイクは雨と風であまり攻められなかったけれど、仕方ない。ランではとにかく冷静に、自分を抑えて走ることを心がけました。それが、最後のスパートの成功につながったんだと思います。沿道でもコーチが『抑えろ!抑えろ!』って言い続けてくれて、そのおかげで足を溜めることができたんだと思います。横浜はいつ来ても雰囲気が最高。今日みたいな天気でもね。ここで勝ててうれしいです」

【リザルト】
【男子エリート】
1. マシュー・ハウザー(オーストラリア) 1:41:08
2. バスコ・ビラサ(ポルトガル)1:41:14
3. ミゲル・イダルゴ(ブラジル)1:41:29
22. ニナー 賢治(NTT東日本・NTT西日本/栃木)1:44:40
>>エリート男子

(※)実際の距離はスイム1500m(2周回)/バイク:37.23km(10周回)/ラン10km(4周回)で実施。

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