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秋レースで100%実力発揮「テーパリング&最終調整」のコツ!

投稿日:2024年8月29日 更新日:


ルミナ編集部

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アミノバイタル 秋レースで100%実力発揮「テーパリング&最終調整」のコツ!

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トレーニングの成果を120%発揮するための最終調整の仕方

トレーニングで積み上げてきたチカラを100%発揮するための「テーパリング」と、失敗しない最終調整のコツを、アイアンマン台湾女子総合優勝(2019年)の経験をもつ、まごちゃん(孫崎虹奈コーチ)と、オリンピアン細田雄一選手が教えてくれました。

Mt.富士トライアスロンin河口湖に村上国際トライアスロン、千葉シティトライアスロン、九十九里トライアスロンなど秋のレース(主に51.5km)に向けて、実際に使える実践的&具体的なアドバイスが聞けるオンラインセミナーを8月22日に開催、その一部を紹介します。

テーパリングや最終調整は、それまでにトレーニングがどれくらい積めているかによって方法が変わってきます。初めての人はもちろん、ベテランアスリートもあらためてテーパリング、最終調整について学びましょう。

細田雄一 Yuichi Hosoda

51.5kmを主戦場に活躍してきたベテラン・エリートトライアスリート。2000年代からエリートレースを転戦し、2010年アジア競技大会(中国・広州)で金メダル、2012年ロンドン・オリンピック出場、日本選手権2勝など華々しい戦績を残してきた。現在は後進の指導にあたりつつ、自身はミドル~ロングに挑戦中。昨年は宮古島大会に初出場・完走を果たしている。1984年、徳島県出身。

孫崎虹奈 アミノバイタルセミナー

■孫崎虹奈 Nijina Magosaki

ジュニア時代からエリートレースで活躍し、大学時代には日本選手権にも出場。卒業後は3カ年でアイアンマン世界選手権(KONA)出場を目指す 「KONA チャレンジ」にサポートスタッフ兼任メンバーとして参加し、2019 年アイアンマン台湾で女子総合優勝。2023年10月にはKONAに初出場・完走を果たしている。現在はフリーのコーチ、大会MCとして多方面で活躍しており、昨年は宮古島大会に初出場、女子総合7位で完走している。

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テーパリング(テーパー)とは?<原理・原則>を学ぼう

孫崎虹奈さん(以下まご) まずは、テーパリングの原理・原則から学んできましょう。トレーニングにおける、テーパリングとは目標のレースに向けてトレーニングの負荷を徐々に減らして、パフォーマンスの最大化を狙うことを言います。

初めてやるという人もいると思いますが、雄一さんがやってきた例などを踏まえて教えていただけますか?

細田雄一さん(以下細田 複雑なんですよ、テーパリングって。私も若いころはたくさん失敗しました。失敗の数が増えていって、その中で成功しても何が良かったのか答えが見つかりにくくて、あるときから感覚とテーパーのスケジューリングができるようになってくるんですよね。

それくらい難しいものではあるので、今回はあくまでも一例といいますか、こういう風にしてやっていけばパフォーマンスが最大化していくという参考にして、合うものを取り入れていただきたいと思っています。

レースまでにどんなトレーニングをしてきたかで、テーパーの中身は変わっていきます。テーパーや調整の仕方は、ひとつじゃないよというのを前提としてお伝えしておきます。

まご なるほど。ではここで、トレーニング方法が真逆と言ってもいいトップアスリートを例に話を進めていきたいと思います。

まず「パターン①」として、パリ五輪のメダリスト、アレックス・イー選手(金メダル)、ヘイデン・ワイルド選手(銀メダル)、そして「パターン②」として東京五輪の金メダリストで、その後アイアンマンに出場したり、フルマラソンでも2時間半で走るという超人、ブルンメンフェルト選手。

トップ選手でもそれぞれのトレーニング方法によって、テーパーの仕方は変わってくるということですが、雄一さんそのあたり、いかがですか?

高強度のトレーニングと低強度のトレーニング
テーパリングの違い

細田 彼らを見れば一目瞭然ですが、まず体形が違いますよね。極端なことを言うと、アレックスとヘイデンは、高強度トレーニング、high intensity trainingを積んでいます。

ブルンメンフェルトは低強度です。もちろん、インターバルをしないわけではなくて、定期的にインターバルも入れていますが、頻度と練習時間のボリュームなどの割合が3人で変わってくるということです。

まご この3人は、体形も違いますが、高強度、低強度で練習の内容自体も違うということですよね。先ほど雄一さんもおっしゃっていましたが、トレーニングの内容・量が違うため、テーパーの仕方も変わってきます。

ここで「パターン①」を定義したいと思います。

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2024年パリ五輪で金メダルを獲得したアレックス・イー(写真・左)と銀メダルのヘイデン・ワイルド(写真・右)©World Triathlon

【パターン①】
《トレーニングできている・高強度》
アレックス・イー選手やヘイデン・ワイルド選手のようなタイプ

まご 自分でどんなトレーニングをしてきたかを知る目安としては、レベルを問わず、1週間のトレーニング量(時間)・強度を目安にするといいでしょうか?

細田 そうですね。彼らのシーズン中の1週間のトレーニング時間は20時間~25時間くらいです。「あれ? 短いな」と思われる方もいるかもしれませんが、その分強度の高いトレーニングをしています。

どちらかというと、3000mとかそういった陸上の大会でも活躍できるようなトレーニング内容、短いインターバルも入れるし、バイクもハイパワーでのトレーニングです。

ケガのリスクは高いですが、その分レースの内容や数も厳選しているという傾向があります。どういうことかというと、彼らは今年に関して言えば、5月のWTCS(世界トライアスロンシリーズ)横浜に来なかった。夏のオリンピックに合わせてレースを選択し、カットしていました。

その理由は、時差があって遠征となると出場することがリスクになるからです。だいたいレースの本番2カ月くらい前からこれをやりたいという練習が決まっていて、それに向けてフォーカスしていきます。

オリンピック前に出た最後のレースが、私の記憶だとフレンチグランプリだったんですけど、WTCSではないフランスのプロリーグの大会でしたね。そこで最後の仕上げをしてから、パリに突入して金と銀を獲得したということになります。

この仕組みは「パターン①」ですが、「パターン②」が勝つ場合ももちろんありますし、どちらが勝つかっていうのは、本当にふたを開けてみないと分からない。たくさんの時間・量と、高強度を両方やるのは、どうしてもバランスとして難しいので、どちからになる。

「パターン①」のタイプは、シーズン中はハイパワーでやっています。ただ、ジョグをしていないとかそういうことではなくて、頻度の問題です。

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まご だいたい1週間で25時間ということは、1日平均3.5時間程度のトレーニングだと思うんですけど、その時間内にジョグの時間もあれば、きっちり高強度で上げていく時間もある、内容を変えながら高強度を入れていくっていうイメージですかね。

細田 ジムワークなんかで高強度を入れている傾向があるので、特にイギリスやフランスの選手なんかはそうなんですけど、意外と回数は少ないので、ロングライドもトレーニングの中に入っているんですよ。

なので4時間くらいのライドを、1週間に1回は入れています。短い時間とは言えロングライドやジョグは入れています。高強度の練習が、週に1回とか10日に1回とはではなくて、確実に週に2回くらい入っているという感じです。

それくらい高強度をやると、回復が間に合わないので本当にバランスが大事ですよね。トレーニングの量、リカバー、ニュートリション、この辺のバランスが大事になってきます。

正直、練習量は真似できると思います。週2回休みにしても1日5時間の練習をすれば、1週間25時間は達成できるのでできなくはないですけれども、お仕事をしながら高強度の練習を週に2回も3回もやってしまうと故障のリスクが高まってしまいます。

これは私の中のひとつの答えですけれども、フルタイムでお仕事されている方は「パターン①」の高強度っていうのは、あまりマッチないかなと思いますね。

【パターン①のテーパリング・最終調整例>>3週間前から実施】

▼3週間前:距離を3割減・強度はキープ
▼2週間前・距離半分・強度はレースペース

※高強度を入れたければ10秒/30秒/1分と短い時間で実施する

まご たしかにケガのリスクもありそうですよね。「パターン①」はしっかりとトレーニングが積めている前提で、理想としては3週間前からテーパーリングしてく、ということですが、雄一さんのテーパーの仕方というのは実際にどのようにされていましたか?

細田 私も3週間前からですね。これをやるときっていうのはそれまでにものすごい練習が完璧にできたときで、すごく余裕が出るんですよね。3週間前から何をするかっていうと、まず3割くらいボリュームを減らします。量を減らして、強度はそのまま残っている感じでまず1週間を過ごす。

2週間前の1週間は量を半分くらいにして、強度もレースペースにします。それをやりながらも足の具合とかを見ながら微調整をしていきます。

で、一番難しいのがラストの1週間です。気持ちが高まってきちゃってて、ちょっと間違えちゃったらピーク来ちゃうよって感じで、できるだけやらないことを努力する期間です。

自信をもって完璧にやってきたからちゃんと休む。ハードをやりたいなら、10秒とか30秒など短時間で耐乳酸に入らないようなエネルギー源の使い方をして、疲労が残りやすいところまでいかないようにする。

でもどうしても感覚がイマイチだなってときは1本だけやったりするんですけども、レースは日曜日の場合が多いと思うので、水曜日くらいに1分くらいの短い高強度のメニューを4発くらい入れて、自分の主観的な感覚とタイムや心拍数を見て、動きを整えていくっていうのが最後の1週間になるかなと思います。そういうことができたときは、レースでも外さなかったですかね。

私も若いときはできなかったですかね、だいたいラスト1週間でケガしちゃってね、もったいないことしてしましたね。25歳くらいからは、うまくハマってあまり大外ししなくなりましたね。

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まご  私もだいたい3週間くらい前からテーパーを入れていきます。レースのちょうど1カ月くらい前までは、バンバンブリックとか長めの練習を入れて、自分がレースでイメージするタイムにどれだけ標準を合わせていくかっていうところを1カ月前くらいまでやって。

そこで本当に自信がつくかどうかで、変わると思っているので1カ月前にできることは、1か月後もできるというところまで追い込んだ上で、どう調整していくかっていうところをすごく大事にしています。

私はもともと腰があまり強くなくて、本当に頑張ったりテンションが上がると、いつか腰に来るっていうところがあったので、最後はケアをメインにしています。

心拍を見ながら、楽しいときとかテンションが上がるときってワクワクして勝手に身体がのってきちゃうので、そうならないように抑えるようなトレーニングをやっていますね。

ただ、神経系はスイッチを入れたかったので、ローラー後のブリックランなどの感覚はすごく丁寧に水曜日くらいにやって、金曜日にスピード系を入れて終わるっていうルーティンはありました。

テーパーの効果は2~3週間続く
連戦するのも手

細田 3週間前までしっかりトレーニングを積んで、3週間テーパーするとその後に連戦をいれておかないともったいないっていうのもあります。

3週間結構量を抜くので、テーパーを決めた大会から2~3週間はそのときのトレーニング効果がもつので連戦する選手は多いです。その後スカッと抜けてしまいます。

まご  抜けるタイミングでレースを入れちゃうと、合わない場合があるってことですかね?

細田 そうです。アレックス選手もパリ五輪後、8月18日のスーパーリーグ・ボストンに出場して優勝、2位はヘイデンで、パリ五輪と同じ、1位、2位でしたよね。

ピークはオリンピックでしたけど、ちょっと下がってもまだ最終調整でキープしたものが残っているんですよね。来週はシカゴのレースにも出るみたいです。

そして、また10月のグランドファイナルまでは練習をもう1回を積み始めると思いますよ。

まご  今日聞いている中で、11月に宮崎で開催されるエイジの日本選手権に出たいという方もいると思います。出場するには、まずランキング対象のレースに出てポイントを取らないといけない。だから連戦している方も多い。

私の生徒さんでも気づいたら3連戦、4連戦という人がいます。連戦後に、いつか力が抜けるタイミングがあるということですよね。自分のテーパーのタイミングを考えながらレースを入れていくことが大事なんですね。

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細田 そう思います。ケガをしたらリセットになりますよね。以前のセミナーでも言いましたが、1年くらいのスパンでスケジュールを作っていくことが大事。そうすると迷いにくいです。

怖いのは何度も大きい波を作れないので、それをちゃんと理解してやっていかないと物足りなくて余計にやってしまって、落ち込んだり、ケガをしたり、ドツボにハマってしまうことです。

「パターン①」に関しては、エイジグルーパーさん向けというよりも、アスリート向け。競技志向の方向けのテーパー方法ですね。

積み上げてきたものを尖らすっていう感じなので、鉛筆をイメージしてほしいんですけれど、太い鉛筆を削って削って尖らせていく感じですね。それでハイパフォーマンスが出せます。

まご テーパーリングはトレーニングでしっかり追い込んだ後に行うべきなのに、練習の強度がただただ低くなるだけというイメージで、試合前だから落とさなきゃいけないと思っている方もたくさんいると思うんですよね。

でも、練習を積んでからこそのテーパーだよ、とうことは今の雄一さんの話でよく分かりました。

細田 強度はレースに合わせていくんですよね。レースが近づいてくると、レースペースが楽に感じていきます。

まご そうですね、確かに。今まで出せなかった(強度やスピード)のが、トレーニングによって出せるようになっている。

細田 トレーニングの量が減ってきているわけだから、動きにも余裕があるし、イコール心拍も上がらないですよね。調子が上がっていっているのを見ながら削っていくので、しっかり自分の練習量などを理解しながらやっていく必要があります。

せっかくトレーニングしても調整がうまくいかず、本命レースを外すとショックですしね。たとえば、同じ実力の選手だと、テーパーをやっているほうが強いんですよ。これをやっているほうが絶対に勝ちます。

2年後このレースで絶対勝ちたいというレースがあるなら、2年くらい自分のためにコーチをつけて、その年だけはやってみるというのは面白いんじゃいかなと思います。

まご IM70.3の世界選手権は毎年開催地が変わりますよね。今年は南アフリカがだから出たい、スペインだから出たい、という人も結構いるので、開催地が魅力的でその年の70.3の世界選手権に出るというのを目標にする場合、どうやってテーパーしていくかをコーチをつけてしっかりやっていくと楽しいかもしれませんね。

そういうときは雄一さんに連絡すればいいですか?(笑)

細田 そうですね、そういうときはまごちゃんに(笑)。

でも、この仕組みを覚えちゃえばいつでも応用できると思うんですよね。そうしたら仲間や友人に教えることもできますよね。

そのうえで、コーチングにも興味があって、パフォーマンスも上げたいという人がいたら、プロフェッショナルなコーチについて長期レッスンをやってみるというのもいいですね。それくらい複雑なんです、最後の調整というのは。

まご ここまでは高強度でトレーニングしている人向けのお話をさせていただきました。次は、低強度でトレーニングしている方、ジョグやロングライドがメイン、インターバルやゼーハー追い込んでいることはあまりしていないという人に向けてお話ししていきます。これを「パターン②」とします。

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2020東京五輪で金メダル、パリにも出場したクリスティアン・ブルンメンフェルト ©World Triathlon

【パターン②】
トレーニングできている(低強度)
クリスティアン・ブルンメンフェルト選手のようなタイプ

まご  ブルンメンフェルト選手はどのようなトレーニングをしているのでしょうか?

細田 聞いてびっくりすると思うのですが、彼の練習時間は40時間/1週間なんです。多い週ではなくて、スタンダードでこの時間なんです!

アレックス・イー選手らと比べると低強度なんですけれど、エアロビックのところではやっています。低強度トレーニングは、5~6年前から流行っていますよね。

LT1(※)とかLT2という言葉がトレーニング本とかでも出てきていますが、乳酸値が4ミリモル以上というのは、ドカっと乳酸量が上がるんですけど、この乳酸量が上がる4ミリモルのところ、もしくはその下くらいでトレーニングしようよ、という感じです。

そこの部分を厳密に分かっていると、ものすごく効果が最大化できます。血液は指標として正確なので、乳酸の量を計りながらやっていきます。

「パターン②」のほうが、継続してできてケガのリスクも少なくて、エイジグルーパーの皆さんには、オススメですね。

特にお仕事しながらトレーニングして、レースに出る場合、1年のトレーニングをプランを立てるのって難しくないですか?

たとえば、8カ月後のお仕事内容って決まっていない人のほうが多いのではないかなと思います。であれば、「パターン②」で、継続的に40時間とは言わないので、エアロビック、有酸素トレーニングを積みます。ちょっとしゃべるのが苦しくなるくらいの強度です。

それがLT1です。それとLT2が一緒かって言うとちょっと違って、LT2のほうがちょっと高いんです。LT2は低強度というには、言葉のほうが優しい感じになっちゃうんですけど、中強度という感じでしょうか。

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まご LT2は乳酸が溜まるかたまらないか、微妙にしんどいけどやれちゃうくらいの強度ですもんね。

細田  「パターン②」では、LT2が一番高いボリュームのところで、本当にハードなVo2MAXのところっていうのは少ないです。10日に1回とか、2週間に1回とか、そういったくらいの頻度。でも時間的なボリュームが多いのでね、どんどん積み重ねることはできます。

ブルンメンフェルト選手は、パリオリンピックの2週間後に、アイアンマン・フランクフルトに出場しまたけれど、ランで2時間半というすごい走りをしていました。しかも最後は余裕をもっていましたね。

それでも乳酸が出ていないゾーンで走っていますからね、LT2の下の所でやっているので、年間通して高いパフォーマンスを維持できるということなんです。ただ、エネルギーをたくさん摂る必要がありますけどね、やっぱり。

【パターン②のテーパリング・最終調整例>>10日くらい前から実施】

▼LT1強度主体のトレーニングをしてきた人
ブリック、デュアスロン、短いレース(形式)で強度を最後に仕上げる(10日前~)
▼LT2強度主体のトレーニングをしてきた人
疲労を抜きつつ、いつものトレーニングと同じ流れでレースに向かってもOK
ラスト7日間だけ「パターン①」と同じでも◎

まご LT1、低強度主体でトレーニングをしてきた人は10日前にブリック、デュアスロン、短いレース(形式)で強度を最後に上げていく、ということですね。じんわりじんわりトレーニングを積んできて、10日前に刺激を入れるというそんな感覚ですか?

細田  そうですね、自分もこっち系のトレーニングをしてきたこともあったので、それでも結果はすごく良かったのもあって。2013年くらいかな。レース前の水曜日に1㎞3分とかをやったりもしていました。

まご それは51.5㎞のレースですか?

細田  そうです。

まご 4日前にレースペースですね。

細田  そうです、速いと言ってもレースペースです。そこが結構キモかなと思っていて、それより速くしてもあまり意味がない、と言ったら語弊があるかもしれないですけど、レースで使わないペースの刺激は必要じゃないと思っています。

「最後に仕上げる」というと、高強度と思ってしまうと怖いので念押しをしておくと、強度はレースペースまでです! 違和感があれば、すぐやめるとか。

トレーニングで積んできたものをレースの10日前~1週間前にレースペースで、やってみてレースでどうだったかなと。

10日~1週間前から練習を減らしていく。減らし過ぎるのもあれですけど、たとえばトレーニング時間が週5時間の方の場合、テーパー自体の必要がないかもしれません。

削る意味がないというかそもそも削る必要がないというか。なので、このテーパリング最終調整でぐっと調子を上げたいというのであれば、最後にレースペースでやってみる、というのはいいと思います。低強度で積み重ねているので、疲労も残らないはずです。

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パターン②は
長期的に取り組むことで結果がでる方法

まご この「パターン②」の場合、LT1の人は刺激入れをして、LT2強度主体でトレーニングをしてきた人は疲労を抜きつつ、同じ流れでレースへ向かってもOKでラスト7日間だけ「パターン①」と同じでもOKということですね。このLT1とLT2の使い分けは難しそうですね。

細田 先ほども少し触れましたが、LT2は厳密に言うと低強度ではないんですよ。中強度といってもいいかもしれない。パターン的にペース走が多いかもしれません。だから、楽な練習ではないので疲労は残っています。

ただ、慢性的な疲労にはなりにくいので、ジワジワした疲労なので抜きやすいです。だからラスト1週間は「パターン①」と同様でもいいんじゃないかなっていうのがありますね。

これもやはり一人ひとり違いますので、ラスト1週間じゃ心拍数全然落ちない、疲労が抜けないよ、という人は2週間疲労抜きをしたほうがいいかもしれませんね。テーパー期間の前までにどれだけトレーニングを積めているかで調整が必要です。

「パターン②」の場合、すぐに結果がでるのではなくて、結果を出すのに時間がかかる練習法なんですよ。多分2年くらい積んでいかないと目に見えて、数字として見えてこない。

選手でも7年目とか8年目とか、そういうスパンで考えている選手もいます。ブルンメンフェルト選手も、17歳から始めて25歳くらいで花開したので。それまでは世界選手リーズでもトップ10に入っていないですからね。はじめてすぐ結果が出るというよりは根本から強いカラダを作っていく。ケガも少なくリスクも低いトレーニングを積んでいくという練習法です。

それでどんどんボリュームができるようになるので、ブルンメンフェルト選手は、400mトラックを100周やってフルマラソンはイージーだと言っているので、積み重ねによって「42㎞ペース走」もできるようになる。

トライアスロンのトレーニングとしては、LT1でしっかり下地を作った状態で、その次のステップとしてLT2を入れていってもいいんじゃないかなと思いますね。ただ、一人ひとりLT1もLT2も違うので、人の真似をする必要はありません。

まご  今は時計などのデバイスでLT1とかLT2とか強度が分かると思うので、来年のレースに向けてLT値を意識してトレーニングしていって、レース前に今回お伝えしたテーパーの方法を試してみるのもいいでしょうね。

細田 今シーズンできることとしたら、しっかりトレーニングが積めているのであれば、しっかり疲労を抜くというところだけでもやってほしいなと思いますね。

抜く、休むっていうところが共通して大事なところで最後までやり過ぎない、休む。これ本当に大きな声でお伝えしたいですね。休んだほうが絶対に良いパフォーマンスが出る、身体がフレッシュなほうが間違いない。

まご ここで質問が来ています。
★LT1のテーパーで最後の高強度のトレーニングの後、レースまではどのようにトレーニングをすればよいでしょうか?
レース1週間前の月曜日から考えてみると、毎日トレーニングするわけではないですよね。

細田 私だったらですね、感覚が一番大事な水泳を毎日やりますね。そして高強度をやった次の日、休息します。

8日前に、軽くジョギングをして疲労の感じを見て、ブリックの筋肉の張りとかを確認して、ちょっと張っているようであれば長めにジョギングをして血液を流してあげる。私の場合1時間、キロ5分、ゾーン2、エアロビックより下くらいの強度です。あとはバイクローラー30分とかですね。

そして、7日前に3種目続けて30分くらいずつ刺激入れをします。高強度は10秒とか「パターン①」と一緒です。10秒とか30秒とかちょこっと気持ち良く入れたりとかしますかね。1時間半以上は動かない。30分ウォーキングだけでも。これくらいでいいの? というくらいでいいんですよね。

低強度で続けてきている人はレース前はそれくらいやらなくていいと思ってください。フレッシュなほうが絶対にいいです。

まご  今やっても速くならないですしね。それだったら休んだり、神経系なところをチェックしておいたほうがいいですよね。仕事をしっかり片づけていって仕事のストレスをなくす、とかのほうがいいかもしれせんね。

細田 そうですね。睡眠時間を1時間伸ばすほうがパフォーマンスは上がると思います。最後のほうは何をやるかじゃなくて、何をやらないか、だと思うんで。やらないことをどんどん増やしていったほうがいいですね。間違ってもインターバルとかはやならいほうがいいです!

【パターン③】
《トレーニングできていない・初めてのレース前》
テーパーではなく、どう過ごしたらいいか?

まご  最後は「パターン③」として、忙しくてトレーニングが積め切れていない、または初めてのレースで不安、という場合について触れていきたいと思います。この場合、最終調整は必要ですか?

【パターン③最終調整例】

▼トレーニングができてない、初めてのレースで不安という人
➡カラダのコンディショニングに専念する
(アミノ酸ローディング、睡眠の確保=疲労抜き)
➡ラスト1週間は休む
(効率的な休み方・ポイント練習を入れるのも◎)

細田 休むに越したことはないのですが、休むって意外と難しくて、やらないと不安になりますよね。練習量が減るから、時間はあるわけです。だからカラダのコンディショニングに専念する、まず睡眠の確保が一番大事です。

やはり興奮していますから、あれやんなきゃ、これやんなきゃって、頭がいっぱいになってしまうと思うのですが、ラスト1週間は休む。休むコツっていうのは、やることメモをしておいたり、持っていくもののリストをチェックしておいて、早めの準備に時間を費やすことです。

あとは昼間ちょっと動いたほうが夜寝れるので、全く何もしないよりはお昼休みいつもトレーニングに充てていたなら、散歩したり、今日は遠くのランチのお店に行ってみようかなとかお弁当持って1㎞先の公園まで早歩きしてみようかな、とか。

睡眠導入のコツとして、睡眠の質向上にオススメな「グリナ」などもサプリメントを活用するのもいいでしょう。

ただ、体操とかやりたくなると思うのですがやり過ぎはよくありません。私、失敗しましたから(笑)。伸ばし過ぎて逆に硬くなったりとか、体幹トレーニングしたり、脚とか疲れないだろうと思ってやりましたけど、結局身体のバランスを最後に崩すことになりかねません。

選手でもありますよ。ラスト1週間で風邪をひいてしまって全然練習できず、3日前から回復してきてベストタイムを出したりとか。あるあるの話なんですよね。

それだけ日常では疲労って抜けないので、トレーニングはあくまでストレスを与えて身体を壊す行為で、そこから回復するときに身体って強くなるので、日常的にトレーニングしている人は常に疲れている状態で、回復したとしても100%まで充電ってなかなかできないんです。

特にハードな練習をしているとゲージが10%くらいになって、3日くらい休んでも80%くらいまでしか戻らないんです。そういったイメージもしていただいて、100%まで戻したほうがレースでは絶対フルパワーでできますから。

まご レース前日の選手受付とかブリーフィングとかって意外に疲れるんですよね。レース前日までに回復していなくて、前日はゆっくりしようなんて思っていると、受付も疲れるしご飯屋さんも混んでいたりとか、友だちと会ってしゃべったりとか。

しっかり1週間前から調整していったら、疲労感もマシになるのかなと思います。

たとえば、レース以外のことで疲労の原因になることを1回洗い出して、やらなきゃいけないことと、やらなくていいことを選別できるように、調整していくのがいいのかなと思いました。これは、私も最近気が付きました!

休むこともトレーニングととらえること

まご ここで、質問がきています。★休みこともトレーニングととらえることが重要でしょうか?ときていますが……。

細田 おっしゃるとおりですね。間違いないですね。強くなるためには、トレーニングと休養(リカバー)、ニュートリション(栄養)が大事です。

休むときはコンディショニングも入っていますが、これがめちゃめちゃ大事。あとは食事ですね。栄養をしっかり摂れていないと、リカバーが追い付いていかない。

休養と栄養があるから、トレーニングを積み重ねられるんです。質問していただいたとおり、休むこともトレーニングです。

トレーニングはカラダを強くしているわけではなくてカラダを壊している行為なんだっていうことをあらためて覚えておいてもらいたいですね。で、ニュートリション、リカバーがあって、回復するときに強くなっていく。それを積み重ねることで、徐々にレベルが上がっていくとうことです。

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まご アミノ酸ローディングとありますが、レース前はどんな感じで栄養を摂っていましたか? ざっくりの1週間の摂り方ってありますか?

細田 私の場合、結構一定なんですよ。どういうことかというと、結局日本食がバランスが良くて。海外遠征のときほど気を付けていましたね。

サプリメントをたくさん使うときは遠征中とレース前です。遠征の移動時は外食になってしまいますが、最低限の食事量は確保しても、栄養って難しくてバランス良く摂ることでバシっと決まってカラダに入ってくるので、ひとつの栄養素だけ余分にとってもあまりよくない。そういうときに、サプリメントとかドリンクとか、そういうので気を付けようと意識していましたね。

食事を基本として、サプリメント等を活用してアミノ酸補給もしっかりしておくことが大事です。

あとは、意外と食べていないとうことがありますので注意が必要です。レース前の金曜日は移動の場合が多いと思いますが、仕事を最後まで詰めて行くと移動のときっておにぎりだけで済ますこともあると思うんです。でも、レースの1、2日前ってやっぱりいつもどおりの食事を摂っているほうがいい。

食べた物をメモしておいて、食べている物が足りているか夜チェックしてほしいのですが、トレーニングしている男性で体重70㎏くらいだと、だいたい基礎代謝って1800kcalくらいかなと思うんですよ。プラス移動しているのと、宿に着いてからも、ジョギングしてストレッチして温泉入ってなんてやっていると、2500kcalくらい使っちゃっている場合もあります。だけど、移動の日って食事で2500kcalも摂れないんですよね。

たとえば、2500kcalくらい使っていて、1200kcalくらいしか摂れていなかった場合、そのマイナスがレースに響いてくる、特にロングだと顕著です。最終調整というのはトレーニングだけではなくて、食事も気を付けたほうがいいと思います。

まご レース中の補給というのも大事ですが、エイドのものに頼らずに必要なものは自分で持っていくことを忘れないようにしておいたほうがいいですね。エイドステーションにあるのは、念のため、というくらいの気持ちがいいと思います。

今回はテーパリングの話だったのですが、貴重なオリンピアン雄一さんの話も聞けて大変参考になったと思います。

細田 テーパリング、最終調整っていうのは非常に難しいテーマではある、と思います。やはり、人によって変わるというか違うので。

人によっては糖質が入れられないという人もいる思うので、サプリメントではなくて、おにぎりを食べたほうがいいという人もいると思います。固形物とゼリーを交互に摂るというのもいいと思います。体質によっても変わりますからね。

レースに出場する目的や、トライアスロンをやっている意味というのは一人ひとり違うと思いますので、楽しくやりたい方でしたら、テーパーにこだわらず楽しいイベントがあったら参加してもいいと思います。まずは、トライアスロンを楽しんでほしい、というのが願いですね。

(※)
LT1 気持ちよく何時間でも継続できるペース練習。
LT2 レースペースより低い強度で10分を4~6回繰り返すような練習。
LT 全力でレースする強度


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