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【アクアスロン出場であらたな自分を発見】関根明子コラム#021

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ルミナ編集部

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関根明子さんコラム

関根明子の徒然なるままに#021

前回のコラム>>【「自己コントロール」のための「セルフトーク」の重要性】

3種類の疲労とその対応方法

前回のコラムから少し間が空いてしまいました。

気が付けば今年もあと3カ月。シーズンも後半の後半に差し掛かりましたね。変わらず皆さんのトライアスロンライフは順調でしょうか。時間が空いてしまった理由なのですが、ただグータラと日々を過ごしていた訳ではありません(汗)。

今までは他のチームやイベントなどの練習会などに呼んでいただきコーチングをしてきましたが、ようやく私の準備と指導できる環境が整い、主催者となってコーチングして行くことになりました。皆さん機会があればどうぞよろしくい願いいたします。

>>SAI ATHLETE CLUB SAITAMA

関根明子コラム

埼玉スタジアムでのイベントは人気でリピート開催

最近は少しずつ日中の暑さも和らぎ、夜になれば秋の虫が鳴いています(我が家の周りではカエルも鳴いています・笑)ようやく少し長い距離でも走ってみようかと思い始める時期ですね。

反対にこの数カ月の酷暑と日々のトレーニングやレースの疲労が出てくる方もいるかも知れません。涼しくなりかけたこの時期に一番出やすいのが「内臓疲労」です。

私は現役時代、疲労には3種類あると感じそれぞれの対応を行ってきました。

ひとつ目は「肉体疲労」です。これは文字通り日々のトレーニングで負荷のかかった筋肉に対する筋疲労です。強くなるための基本は①栄養②休養③トレーニングのワンセットですから、以上のうちの①と②を行なえば、肉体疲労であれば回復します。激しいトレーニングを行った後は、良質のタンパク質をとり、マッサージや入浴で血行を促し、良く寝ます。

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©World Triathlon 写真はイメージ

次は「精神疲労」です。これはレースやプレッシャーのかかる質の高いトレーニングが続いたときや、スランプのときなどになりやすい疲労です。

心身は繋がっていますので、肉体疲労から由来する場合もあると思いますが、何となく目標がもてないとかトレーニングに対するモチベーションが上がらないとか、集中力が続かない等を感じるのなら思い切って練習を休んだり、練習量を落としたり、別のスポーツを行っていつもとは別の刺激で心身をリフレッシュしたりすると良いと思います。

または、普段とは全く違う環境(芸術にふれる等)に身を置くのも良いと思います。そうやってリフレッシュに成功したら、またモチベーションが戻ってきて精神的な爆発力も出てくると思います。

火事場の馬鹿力は極端な例えですが、精神が身体を動かすというのはやはりあると思います。

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©World Triathlon 写真はイメージ

最後に「内臓疲労」です。これはハードなトレーニングによって筋疲労と共に内臓機能も低下している状態です。何となく身体が重かったり、単純に食欲が落ちたり消化が悪かったりという症状です。仰向けに寝て自分の手で胃や腸のあたりを触ったり、指2・3本でお腹を押してみると分かります。

全体が硬かったり、しこりのような硬い場所があったりします。圧痛もあります。そのようなときはそのままお腹をマッサージしたり、温かく消化も良い物を食べたり、練習量を落としたりするとまた調子が上がってくると思います。

運動して疲れたら休んで、デスクワークで疲れたら動こう!

鍼灸マッサージ師でありアスレチックトレーナーの主人から言われたアドバイスで、とても有益だったのは「動の疲労は静で取り、静の疲労は動でとる」ということです。

要は、動いたことで生まれた疲労(トレーニングや肉体労働)は静で取り(静かにすることで取れやすい)静で生まれた疲労(デスクワークや長距離移動などでずっと同じ姿勢が続いた場合)は動でとる(軽い運動を行う)と疲労が回復しやすいということです。

海外遠征などで長距離を移動した後は、多少身体がだるくても現地に着いてホテルにチェックインしたら少し休憩してまず軽く運動する。ジョグが気軽で良いかも知れません。

現役時代、私の気持ち的にはホテルにチェックインしたら、そのまま真っすぐベッドに行って大の字で寝たいところでしたけど(苦笑)、ぜひ皆さん参考にしてみてください。

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母の威信をかけた戦い!? アクアスロンに出場

話は変わりますが、先日「チームケンズカップ・アクアスロン大会㏌山梨小瀬スポーツ公園」に出場しました。スイム425mラン3㎞でした。大会の1カ月くらい前にお声がけをしていただき、そのときは正直どうしよう! と思いましたが、断る理由が見つからない……。

決して前向きな決断ではありませんでしたが、申し込んだ後はすっきり、これをきっかけにもっともっと心も身体も活動的になれたら良いなという気持ちと、写真でしか見たことがない私の大会で走っている姿を子どもたちに見せたいという思いが出てきました。こんな気持ちになった自分に驚きました。

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チームケンズ代表の飯島健二郎さんと 写真=関根さん提供

久々のレースは家族旅行も兼ねて

さて本番当日、朝4時に起床して全員車に乗り込みいざ山梨県へ。受験生で反抗期真っただ中の長男も珍しく一緒でした。自宅を出発する前に次男が「ママ、今日は3位内に入らないとそのまま会場に置いて帰るからね」と言うので、「ママはもうそんなレベルじゃないから、それは難しいよ。でもママは最悪置いて帰られても、お金があるので自分で帰ります!怒」

そんな会話がありました。理由は何であれ、久しぶりの家族旅行にワクワクしました。

途中、高速道路のインターで朝食を買い、食べながらのバタバタの移動。車窓の外の景色を眺めながら「なんか最高に楽しい!」新たな自分の発見の連続でした。

家族5人の移動はなかなか足並みが揃わず、やっぱり大変で(選手だったら絶対にひとりで来る、と胸の中で誓う)到着が時間ギリギリでした。トランジションをセットして、ウオーミングアップもそこそこにスタート時間がきました。

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屋外プールがスイム会場、緊張の!? スイムスタート 写真=関根さん提供

スタートの合図で順調に泳ぎ出しました。人数が少なく泳力差もあったため、バトルも全くありませんでした。100mくらい泳いだころだったでしょうか。急激に腕を中心に身体全体が重く硬直して腕が思うように回せなくなりました。全力ダッシュをした後に一気に全身に乳酸が溜まったようなあの感覚です。

あれ、感覚(身体)がおかしいと思いながらも泳ぎ続けていると、呼吸したときにタイミング悪く水を飲んでしまい、咳き込んだ瞬間に「あ、溺れる」と思いました。

1回立とうかと思いましたが、瞬間子どもたちが見ているから立つのは格好悪いという感情と、もしものときは足がつくという安心感があり、平常心をとり戻した後はペースをかなり落として泳ぎ続けました。もしこれが広い大海原で周りに誰もいなくて足がつかなかったらと思うと、少し恐ろしい気がします。

スイムでの悲しい事故をなすくために知っておきたいこと

悲しいことに、どんなに安全に配慮しても万全の準備をしてもレース中のスイム事故は起きてしまうときがあります。普段の健康状態に異常がなかった人も、既往症のなかった人も、何度も完走した経験のあるベテランの人も可能性があります。

前日の飲酒や睡眠不足。ウエットトスーツのサイズが合っていなくて、または経年劣化でゴムが硬くなり、肩回りや胸部分が締め付けられて、呼吸に制限がかかりそれが事故につながる可能性があると指摘する方もいます。バトルが引き金となりパニックをおこして平常心を失う場合もあるでしょう。

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©Kenta Onoguchi 写真はイメージ

今回私が経験した一連の原因を振り返ると①睡眠不足 ②練習不足 ③ペース配分ミス(実力以上または普段しているペース以上で泳いだ)④現在の実力と自分の思い込みや感覚のズレ ⑤ウオーミングアップ不足 ⑤実戦練習不足(ヘッドアップによる体力の消耗等)などです。

落ち着いてよく考えれば、たとえば泳いでいて何かおかしいと感じたら、ライフガードに向かって手を振るとか、コースロープやブイが近くにあればつかまって休憩するとか、仰向けになって落ち着くまで待つとか、少しペースダウンするなどいろいろできることはあると思うのですが、本当に余裕がないときはそれを思いつかない、できないと知りました。

話は少し脱線しますが、一般家庭内で子どもが浴槽内で溺れてしまう事故時は、子どもたちは声を出したり、助けを求めることができず、音もなく静かに沈んで溺れてしまうというのを何かの記事で読んだことがあります。もしかしたら大人であっても予期せぬアクシデントのときは同じようなことが起こってしまうかもしれません。

プロではない一般の方々はたとえ経験者であっても油断せず、レースに出場する際はウオーミングアップを含めた入念な準備を余裕をもって行い、安全にレースしていただきたいと思います。

私はその後、落ち着きを取り戻し何事もなくランへ移りました。コースの途中で知り合いとすれ違ってあいさつを交わしたり、一緒に並走したりしながら無事にゴールしました。

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子どもたちとの約束を守って、見事3位でフィニッシュした関根さん。プレゼンターに自分の表彰にレース後も大忙し 写真=関根さん提供

「オリンピアンの母」の威厳を保って3位でフィニッシュ

表彰式のプレゼンターでもあったので、ゴール後はプレゼンター席で待機していたのですが、突然アナウンスで「次は第3位、関根明子さん!」と聞こえました。

まさか自分が表彰対象になっているとは夢にも思っていなかったので、てっきり自分のプレゼンターの順番が回ってきたのだと思い前へ出たら、なんと私が表彰対象でした!

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3位入賞のメダルをゲット 写真=関根さん提供

表彰台に上がりメダルをもらう姿に子どもたちは大興奮。何とか母の威厳を保ち、山梨県に置いて帰られずにすみました。お土産にいただいた大粒のシャインマスカットと銅メダルは、私だけでなく関根家の良い思い出に花を添えました。

さて、次回は現役引退を決意するまでの葛藤と道のりを書かせていただきたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

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応援に駆け付けたご家族 写真=関根さん提供

※1カ月に1回程度不定期更新

【コラムを最初から読む】
>>#001 オリンピアン関根明子さん、コラム始めます!~徒然なるままに~
>>#002【水泳から陸上へ――高校受験が転機に】
>>#003【トライアスロンとの運命的な出会いのきっかけとなった人】
>>#004【本格的にトライアスロンの道へ】
>>#005【シドニーオリンピックをどうやって決めたのか】
>>#006【先輩の背中を見て真っすぐ強くなった私】
>>#007【期間限定のはずが にしきのあきらさん の言葉に勢いで……!?】
>>#008【アテネに向けて再出発 カナダにトレーニング留学】
>>#009【理想の選手とコーチの関係性とは】
>>#010【アイアンマンに挑戦したのは、 自分の殻を打ち破るため】
>>#011【アテネオリンピック前に三宅義信さんから学んだ勝負哲学】
>>#012【あとを追いかけるばかりでは追いつけても追い越せない】
>>#013【アテネを経て改めて想う選手と指導者の距離感】
>>#014【年末にオススメ 思い出の棚卸】
>> #015【シーズン初戦に向けて プロでも気を付けるべき暑熱順化
>>#016【2006年アジア選手権で奇跡的な銅メダルの裏側】
>>#017【2006年世界選手権 諦めず最後まで走り切った結果…】
>>#018【アジア選手権に思うこと】
>>#019【スキルや想いを紡いでいくこと】
>>#020【「自己コントロール」のための「セルフトーク」の重要性】

関根明子 Akiko Sekine
九州国際大学附属高等学校女子部陸上競技部。ダイハツ工業株式会社 陸上部に所属。1998年トライアスロンへ転向し、10年間プロトライアスリートとして活動。2008年に引退後、現在は3人の子育てをしながら、トライアスロンやランニングのコーチとして活動中。1975年生まれ、福岡県北九州市出身。
関根さんがメインコーチを務める、埼玉県さいたま市にある埼玉スタジアム2002公園を拠点に活動するランニングとトライアスロンのクラブ
SAI ATHLETE CLUB SAITAMA

《主な成績》
1998年 ソウル国際女子駅伝 日本代表、横浜国際女子駅伝 近畿代表
2000年 シドニーオリンピック トライアスロン日本代表
2004年 アテネオリンピック トライアスロン 日本代表
2006年 アジア競技大会 (ドーハ)

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